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iPhone 3G Sの楽しさ満載機能に見る、システムSoC開発の考え方

先週のニュースで最も大きな話題をさらったのは、サンフランシスコで開催された開発者会議でのApple社の新型3G iPhoneの発表だろう。国内半導体メーカーは相変わらず、リストラクチャに力を入れたり、4〜6月期もまだ赤字が続くなどといった後向きの話があったが、後向きの話からは未来は何も見えてこない。未来を開くヒントになる話を中心にしたい。iPhone 3G Sの話、LTE免許交付の話を拾った。

iPhone 3G S


新型のiPhone 3G Sでは、これまでにない機能を採り入れている。これぞAppleだとうならせる機能が多い。例えば音声認識機能を付けた。この電話モードでは名前あるいは電話番号を声で言うと自動的に電話をかけてくれる。あるいはiPhone 3G Sの中あるいはiTunesを通して音楽を聴きたい場合には、曲名と歌手名を言うと聞きたい音楽を流してくれる。

iPhone 3G Sではもはやパソコンのランゲージキットと同様に、カット・コピー・ペーストができる。メールの返事を書く場合に相手の質問をコピーして貼り付けたり、カットしたりすることもでき、携帯電話の域を一歩出た感じだ。しかも携帯という特長を生かし、コピペや書いたメールを全部消したい場合などは、電話を2回シャカシャカと振れば消えてしまうという「おしゃれ」な機能も付いた。アプリケーションの立ち上がりや、その他の操作の応答速度も2倍速くなった。しかも前回のモデルよりも消費電力を抑えたため電池が長持ちするという。

デジタルコンパスという機能は単なる地図情報と自分の居場所を映すGPSだけではなく、文字通りコンパスも表示される。北は右へ30度回転とか実際の方位を表示する。もちろんGPS地図表示では自分の進みたい方向になるように傾ければ自動的にその向きにしてくれる。オートフォーカスのカメラでは、焦点な合わせたい対象物をスクリーン上で指させば自動焦点にしてくれる。もちろんビデオも内蔵し録画も可能で、YouTubeに即アップすることができる。

iPhoneは従来ある機能に何かを追加したり、それが日本でまだ使われていないがとても楽しいという機能をつけることに熱心になっている。いわば他の製品との差別化を強く意識し、しかもその機能はとても楽しい、というコンセプトを打ち出している。スティーブン・ジョブスと一緒にApple社を立ち上げ、まだディスプレイのないコンピュータの時代(40年前)に今のノートパソコンの形態を提案、「ダイナブック」と名付けたアラン・ケイ氏にかつてインタビューしたことがある。彼は自分を音楽大好き人間(ミュージシャン)と言い、コンピュータに音楽を入れなきゃ楽しくない、として最初のアップルのコンピュータ、マッキントッシュには音楽を最初から入れていた。ヤマハのサウンドチップはこれにより大成功を遂げた。この音楽好きの伝統がAppleにはある。iPhone 3G Sは米国では19日から、日本でも26日に売り出す予定だ。iPhone 3G SとSoCビジネスの共通点を探すという作業にSoCのキラーアプリが生まれるヒントが隠されているのではないだろうか。

総務省は、国内の通信キャリヤ4社に対して、次世代通信方式であるLTE(long term evolution)の免許を与えた。LTEをサービスするのは、NTTドコモとKDDI、ソフトバンク、イー・モバイルの4社である。LTEは最大100Mbpsのデータ通信ができる。ただし、通信技術には3GでのW-CDMAやCDMA2000 1xといったCDMA方式ではなく4Gに移行しやすいOFDM方式を使う。CDMAは、Qualcommが基本特許を持ち、盤石のビジネスを展開しているが、OFDMとなるとプレイヤーが混とんとしてくるため、また新たなビジネス勢力図が変わることになる。

ただし、Qualcommは地上波デジタル放送に備えて、MediaFLOと呼ぶ映像送信サービスに力を入れる。米国では日本よりも一足早く6月12日から全面的に地デジに切り替わった。デジタル化で浮いた周波数帯を競売によって携帯電話事業者などに売り、そこで得た資金で地デジ変換機を購入できるクーポン券を5300万所帯に配布し、地デジ全面切り替えに備えていると、12日の日本経済新聞が伝えている。突然、テレビが見えなくなる混乱についての米国メディアの報道はまだない。

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