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EUの欧州委員会、インテルのCPU販売方法に対して€10億を超える制裁金を命ず

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5月11日の週では、日本メーカーからのニュースよりも米インテルに対する制裁金のニュースが注目された。EU(欧州連合)の欧州委員会(EC)がインテルに対して、マイクロプロセッサの販売において違反があったとして10億6000万ユーロの制裁金を命じたというニュースである。2008年にECが米マイクロソフトに命じた8億9900万ユーロを超す過去最高金額になる。日本ではNECと日立がスーパーコン計画から手を引くというニュースがあった。

ECの言い分は、「数年に渡りインテルは、市場からライバルを意図的に追い出そうとして数百万人もの欧州の消費者に被害をもたらした。EUの反トラスト法はそのような暴挙をもはや断じて許さない」というもの。インテルが支払い条件を隠そうとしてきた証拠がある、と委員会は述べている。ECは具体的に、「コンピュータメーカーに対して、インテルはx86系CPUを全部あるいはほとんど全部購入するという条件でリベートを全てあるいは一部渡した」、「インテルは2002年10月から2007年12月までに小売大手のメディアサターン社に対して、メディア社が活動する全ての国においてインテルCPUの入ったパソコンを独占的に販売するという条件でお金を支払った」などと指摘した。

これに対して、インテルCEOのポール・オッテリーニ氏は裁判で争う構えを示した、と5月14日の日本経済新聞では報道している。

これまで性能と消費電力の点で、マルチコアCPUを最初に採用したのはAMDであり、AMDはコンピュータ用CPUにおいて技術的に優位に立っていた。マルチコアでようやく消費電力の低減に目覚めたインテルは、その後Atomという小型PC向けCPUを出しローエンドCPUを目指しただけではなく、ハイエンドCPUのXeonも開発、手を広げてきた。一方、性能・消費電力で先を行っていたAMDのクワッドコアOpteronはスーパーコンピュータに早くから採用されていた。AMDにとってはインテルの影が脅威だった。

次世代スーパーコンピュータを開発する国家プロジェクトからNECと日立製作所が離脱することを表明した。このプロジェクトで残っているメーカーは富士通1社となる。スーパーコンピュータはメッシュを細かく切ったシミュレーションが必要な用途、例えば気象観測や航空機・自動車などの流体力学的なシミュレーションに使われているが、マーケットとしてはそれほど大きくはない。国家が運営する研究所や大学など高度なシミュレーションを必要とする限られたユーザーしかいない。今やパソコンでかなりのシミュレーションができるようになったからだ。国家プロジェクトの見直しが迫られるだろう。

技術を追求する富士通は、富士通フォーラムにおいて次世代コンピュータ向けの8CPUコア搭載のSPARC64 VIIIチップを展示した。次世代のUNIXサーバーだけではなく、スーパーコンピュータにも使えると見る。性能は128GFLOPS(giga floating point operations per second)と高い。三重の45nmプロセスの最先端工場で試作したとしている。

富士通はハイエンドサーバーを持ち、それ向けの45nmプロセスを使ったプロセッサチップを持つ。通信のNECや重電の日立とは違い、コンピュータを特長とする富士通は今後もコンピュータを追求する。


(2009/05/18 セミコンポータル編集室)

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