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SICAS統計から見える微細化に頼らないビジネスのあり方

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SICAS統計(世界半導体生産キャパシティ統計)が、9月期までの半導体ウェーハの世界での生産能力、実投入枚数などが発表された。それによると、9月のICの生産能力は210万2100枚/週と前年同期比で3.6%増加したが、1〜9月の累積で見ると、579万.8100枚/週と対前年同期比16.3%伸びた。

また、直近の数字として、対前期(2007年2Q)比で5.8%増加していることから、ウェーハ枚数は順調に推移していると見てよい。


MOS計

図1 MOSICは順調の伸びている。8インチ換算で表現している。


リソグラフィ寸法別にこの推移を見ると、微細な0.12μm以下のウェーハが伸びている(図2)。ウェーハを大量に消費するメモリーが微細化を牽引している事実は従来とは変わらない。特に、32Gビットという大容量NANDフラッシュや512Mあるいは1GビットのDRAMが微細化のドライバである。もう一つのドライバはIntelやAMDのパソコン向けマイクロプロセッサである。これもパソコン1台に必ず1個使うICであるから、成熟した先進国では買い替え需要、BRICsなどの発展途上地域では新規パソコンの需要は旺盛だ。最新のIntelのチップには8億トランジスタも集積されており、微細化しなくては経済的に作れない、という構造は今も変わらない。


μm別のMOS生産能力

図2 寸法別のMOSウェーハの生産能力。2004年の4Qはデータの取り方が異なるため比較はできない。図3も同様。

μm別のMOS実投入数

図3 寸法別の実投入数。2004年の4Qはデータの取り方が異なるため比較はできない。


大きく変わるところは、微細化していないウェーハも決して減衰していないということである。そのまま維持している。PC用マイクロプロセッサとメモリー以外の製品は微細化がそれほど必要とされていないのである。微細化する代わりに、新しい回路やソフトウエアを埋め込んで機能で差別化を図っている。もはやトランジスタ数で競っているわけはない。すなわち、ムーアの法則(1個のシリコンチップに集積するトランジスタ数が18〜24ヶ月に2倍に増加)を強く推進しているデバイスは、この120nm以下のシリコンチップが多い。

ウェーハの直径も同様な傾向を示す。新聞やメディアでは300mm(12インチ)ウェーハの記事が圧倒的に多いが、実は200mm以下のウェーハも成熟ながらも決して衰退はしていない。


ウェーハサイズ別の生産能力(a)と実投入数(b)

図4 ウェーハサイズ別の生産能力(a)と実投入数(b)


ウェーハ全体の伸びを牽引するのは言うまでもなく300mmウェーハである。ウェーハの生産能力も実投入数もいずれも同じように300mmが伸びている。だからといって、ウェーハサイズの世代交代が起きているわけではない。8インチ(200mm)ウェーハも、8インチ未満の6インチや5インチのウェーハも健在である。すなわち、共存している構造が見える。


MOS計に占める12インチウエーハ

図5 300mm(12インチ)ウェーハの伸び


逆に言えば、微細化という掛け声に左右されることなく、競争力を維持し、成長している企業も多い。ただし古く、枯れた設備で、まもなく製品寿命が尽きる製品を作り続けているのではない。寿命が尽きる製品なら必ず衰退の傾向が見えてくる。このグラフでは大きな成長はしないが維持していることを示している。

では何を作っているのだろうか。例えば、米Linear Technology社は、0.7〜0.8μmのプロセスでユニークな製品を作り、大きな利益を得ている。2006年の実績では営業利益率は40%を超えた。すなわちプロセスはそこそこでも差別化できる製品を作っていることが、成長の鍵となっている。日本企業でも、130nmプロセスや180nmプロセスで大きな利益を上げている製品もあろう。ここに半導体産業がまだまだ伸びるヒントが隠されている。

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