世界の半導体・電子部品実装関連市場
2010年の実装検査装置市場、1,176億円 2006年から25%増見込む
ボーダレスの動きが進む、半導体・電子部品実装工程。株式会社富士経済では、半導体・電子部品実装関連装置37品目と関連部材5品目の市場調査を実施した。さらに、装置市場に関してワールドワイドでの調査を実施した。その結果を「2007 World Wide 実装関連市場実態総調査」にまとめた。
市場は、全般的には拡大傾向である。個々の装置に関しては、一部でシェアの変動やシリコンサイクル、クリスタルサイクルの影響が大きいものもあり、見通しが良好といえない分野も存在する。
半導体及び、電子部品実装工程ではボーダレスの動きが進んでいる。電子部品、ベアチップ実装からボンディングまで1台で対応する混載マウンタが、06年になって急速に販売数を伸ばしており、半導体後工程と電子部品実装工程間の壁も崩れつつある。多品種少量、短納期、コストダウンといった市場ニーズに対応する為であり、製品への軽薄短小ニーズと製品ライフサイクルの短縮というトレンドが今後も継続することを考えると、工程のボーダレス化は更に加速すると予測される。装置メーカーは新たなソリューション提案を要求される為、事業戦略の変換が必要となる。また、単なる量産競争や小型化競争では対応出来ず、環境対応(RoHS対応)、トレーサビリティ対応、プロセスコントロールなどが共通テーマとして加わりつつある。
◆注目される品目:混載マウンタ
ワールドワイド 2006年見込78億円(前年比19.2%増)
2010年予測147億円(06年比88.5%増)
携帯電話・PC・車載機器などを中心に、電子機器が急激に進化しており、搭載される電子部品も小型化・高性能化している。高性能化に伴って、電子部品実装とベアチップ実装が混在する工程が多くなっている。その場合、工程が長くなり、ベアチップ実装工程ではクリーンルーム対応が必要であり、高価な装置を必要とするなどの問題があった。この解決方法として、電子部品の実装とベアチップ実装を一台の装置で行えるマウンタの開発が行われてきた。「混載マウンタ」である。
07年以降は、成長鈍化が予想されるマウンタが多いのに対し、この装置は今後の成長が期待されるため、台数は少ないながらもコンスタントに20%程度の成長が続くと見られる。混載マウンタの認知度や他のマウンタユーザーの混載マウンタへの移行の潜在需要は高いと見られる。09年には05年実績の倍、435台に到達し、2010年には500台を超えると予測される。
◆調査結果の概要
マウンタ市場は05年から06年にかけて大幅に伸びたが、設備投資がひと段落したと見られ、07以降は年率1%未満の伸びに落ち着いていくと見込まれる。マウンタ周辺装置は、マウンタ同様05年から06年にかけて拡大した。07年以降は微増で推移すると予測される。半導体実装関連装置は、シリコンサイクル、クリスタルサイクルの影響を最も受けるため、05年の急伸の反動で装置によっては伸び悩んでいる。プリント基板製造装置では、今回調査に取り上げた露光装置やインクジェットシンボルプリンタなどが、爆発的な需要の可能性を秘めており、今後の市場動向が注目される。実装検査装置は、高密度実装工程の必需品という意識がユーザーに浸透しており、トレーサビリティ管理意識の高まりにも影響され、06年から年平均6%と今回調査装置分野の中でも高い成長が見込まれ、10年予測は1,176億円となる。
(1)電子部品実装装置
■マウンタ分野
ワールドワイド 2006年見込3,287億円(前年比17.5%増)
2010年予測3,388億円(06年比3.0%増)
マウンタは電子部品実装機器の中心機器で、06年にはその他の実装関連機器を上まわる拡大を達成した、と見られる。超高速チップマウンタは、一部BRICsでの飽和感が伝えられるが今後もPC・携帯電話など大量生産品の生産が一定量見込め、また電子機器の高性能化に伴う電子部品の増加も考えられることから、今後も微増で推移すると見込まれる。中速チップマウンタは低価格であることと他のマウンタを補完しやすいことから今後も安定した実績を残す。中機能(価格)多機能マウンタは、低価格であることや、他のマウンタと連結して使用するという面で、ユーザーにとっても使い勝手のよい装置となっており、最も販売数量が多くなっている。今後も低価格を武器にユーザーからの支持を集めると考えられる。
従来からのトレンドである高速化・高精度化だけでなく、省スペース化・面積生産性も重視するようになっている。また電子機器の高性能化や、装置の性能が高まっていることへの期待から、ベアチップと電子部品の混載実装のニーズが高まっている。混載マウンタは、CPUや自動車センサなど有望アプリケーションの伸びが見込まれ、また装置自体の性能も上がってきており、今後の伸びが予測される。
■マウンタ周辺装置分野
ワールドワイド 2006年見込1,625億円(前年比2.2%増)
2010年予測1,652億円(06年比1.7%増)
この分野の中心機器であるスクリーンプリンタとリフロー炉は中小規模メーカーも含め多数が参入する激戦市場である。技術的な成熟により価格競争など消耗戦を強いられる市場でもあるため、今後淘汰されるメーカーが出てくる。スクリーンプリンタとリフロー炉は、鉛フリーはんだの実装において、品質を大きく左右する重要装置であり、現在は各メーカーとも技術的な要求レベルを満たしている。リフロー炉の鉛フリー対応には装置の大型化が必要であるが、今後、省スペース化ニーズによって小型化が求められる。
スクリーンプリンタは今後、ウェハレベルCSP(Chip Size Package)対応に各社が注目している。この装置は、技術的に成熟しており、マウンタと比べて頻繁なリプレースが期待できない市場ではあるが、マウンタと同一ラインで使用されるため、安定した実績は残し続けるものと考えられる。
リフロー炉は、Air機からN2機への置き換えが進んでおり、N2機の販売実績が50%を超えるメーカーが増加している。コスト面でAir機を使い続けるユーザーもあるが、年々N2機の比率が増加すると考えられる。
(2)半導体実装機器
ワールドワイド 2006年見込2,841億円(前年比5.0%減)
2010年予測2,897億円(06年比2.0%増)
ワイヤボンダは、市場規模が最も大きく、更なる高密度実装や新たな実装方式を必要としないユーザーの需要が大きい。単独市場としてもリプレース需要を中心に、数年後も一定の数字を確保すると思われ、各種ボンディング方式の中で主流を占め続け、数量ベースで年産1万台程度は維持し続けるものと思わる。
フリップチップボンダは、競合する実装面積の低減方法(CSP技術の向上)や、チップサイズそのものの微小化技術も開発され、多機能マウンタによる高精度実装も実用化されているため、数年前の市場より、大幅に縮小している。今後新開発のパッケージング手法が実用化されれば、この実装方式が不要になる可能性もある。
TAB(Tape Automated Bonding)アウターリードボンダは、04年に爆発的に需要が増加したことから、ひとまず横ばい傾向が続くものと考えられる。今後は大幅な実装方式のシフトが無い限り、リプレース需要を中心とした伸びが09〜10年頃にあると考えられる。
(3)プリント基板製造装置
ワールドワイド 2006年見込1,012億円(前年比3.9%増)
2010年予測1,133億円(06年比12.0%増)
露光装置は、現状では1ユニット1億円以上であるが、基板実装メーカーは、1ユニットあたり数千万円程度まで下がれば、現状のスペックを導入する。装置の価格次第では、爆発的に市場が伸びることも考えられ、画像処理技術や光源技術を持つメーカーから新規参入の動きも出てくるものと思われる。
穴あけ装置は、当該分野で最も大きな市場規模を持つが、現在稼働している機器のリプレース分が従来と同じ台数を必要としないため、将来的に市場拡大の可能性は減っている。また上位2社による寡占化がより進むものと思われる。
レーザーマーキング装置は主に自動車関連ユーザーからの強い要望でプリント基板加工の各工程でトレーサビリティ対応が求められ、05年あたりから需要が大きく拡大している。今後も、プリント基板向けだけでなく半導体実装の各段階でもこの装置が求められており、予測を上回る市場になる可能性もある。
(4)実装検査装置
ワールドワイド 2006年見込938億円(前年比13.4%増)
2010年予測1,176億円(06年比25.0%増)
実装検査装置は、製品の高品質化を求めて新設ラインだけでなく既存の実装ラインにも後付けで導入される傾向が強い。単純にシリコンサイクルやクリスタルサイクルの影響を受け難く、一部の装置を除いて今後も順調な拡大が見込まれる。
クリームはんだ印刷外観検査装置は、今後車載電装品向けが大きな市場となる。車載電装品の中でも高い信頼性が要求されるエンジン周りの基板であれば、印刷後、マウント後、リフロー後の検査装置3点セットのニーズが高く、これらユーザーでは歩留まり管理ニーズも高いと思われる。
X線検査装置は、高密度実装技術が進化するに連れて、X線以外では検査出来ないため需要が高まっている。特に超小型LSI部品のBGA(Ball Grid Array)、CSPという実装後は見えない部品の搭載や、各種ボンダの導入が増加していること、さらに品質要求が高い車載用途に採用される電子部品が増加していることがニーズを高めている。
参入企業は国内メーカーが多く、画像処理ノウハウを向上させて、新たな検査装置分野を開拓しようと考えている。一方ユーザーも歩留まり向上の必需品との認識が浸透しており、これまで目視判定や抽出検査に頼っていたメーカーでも、全数検査を行ったり、検査装置の判定に委ね始めている。技術的には、画像処理に必要なカメラの解像力競争は収束しており、今後はいかに高速で検査・判定を行うかが焦点となる。また、最大手であるオムロンなどが提唱しているように、トータルで実装品質を向上させるソリューションビジネスが今後大きくなるものと思われる。
◆調査対象
フルレポートはhttps://www.fuji-keizai.co.jp/report/index.html?keyword=140607815にて購入可能。