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民生用電子機器で伸びている製品を分析する

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電子情報技術産業協会(JEITA)が11月までの電子産業の統計をまとめた。この統計数字は日本で生産している電子製品の実績データである。それによると、特に民生用電子機器は着実に伸びており、1月〜11月の中でも意外な製品が伸び続けていることがわかった(すべてのグラフの縦軸単位は百万円)。

携帯電話とパソコンの伸び


金額的に最も大きい製品分野は、携帯電話とパソコンである。2007年1月〜11月の累計では携帯電話が1兆4454億円、パソコンは9602億円分を生産している。パソコンの生産売り上げは減少傾向にあるが、携帯電話はほぼ横ばいか若干の増加傾向が見える。市場的にはパソコンも携帯電話も民生品と思われるが、JEITAの統計では産業用電子機器に分類されており、民生用電子機器とは区別されている。長期低落傾向の見えるこれらの製品に対して、これらを除く民生用電子機器は2001年から着実に成長している。

民生用電子機器の中で成長している、あるいは成長が見込まれる製品を拾い上げてみると、液晶テレビ、デジタルカメラ、カーナビゲーションシステムの三つである。特に液晶テレビの勢いは止まらない。市場を見ている感覚では、液晶テレビの値下がりは激しく、生産売り上げが伸びているとは思えないが、実際の統計では着実に伸びている。ただし、2007年の年率の伸び率は12.2%とやや緩くなっている。2006年の同時期における生産売上高の伸びは対前年比で35.8%もあった。とはいえ、液晶テレビは依然として2桁成長を示している点は見逃せない。


液晶テレビの伸び


市場の感覚からすると、デジタルカメラも飽和感があった。しかしJEITA統計では着実に生産額は伸びている。デジカメは2006年が対前年同期比13.2%だったのに対して、2007年は14.6%と伸びはむしろ加速している。この伸びは何か。コンパクトカメラが伸びず一眼レフが伸びているか。カメラ映像機器工業会(CIPA)の調査を見るともっと詳細にわかる(下の図)。


デジタルカメラの伸び


CIPAの統計では、一眼レフもコンパクトカメラもともに伸びている。国内市場はもう頭打ちだと言われ2004年2005年の国内向け製品売り上げは2年連続減少した。コンパクトカメラの売り上げが落ちたためである。これを一眼レフが成長を続け、その落ち込みをカバーした。その後、コンパクトカメラも画素数が数百万と一眼レフ並みのものが登場し、2006年には対前年同期比10.5%増、2007年には12.5%と2年連続2ケタ成長を続けている。


カメラ産業輸出の伸び


さらに、伸ばしている要因は、実は輸出である。上の図では国内市場の伸びはそこそこだが、輸出の伸びが目立つ。このことは、カメラ産業は、肝となるカメラモジュールを国内で作り、さらに画像信号処理技術を海外へ流出させず、囲い込んできたことを表している。カメラのイメージセンサーからの信号処理の仕方次第で美しい写真を得られるかどうかが決まる。ここにモノづくりの原点がある。

一方で、安いカメラを量産する中国には、肝となるカメラモジュールや画像処理技術がないため、単なる組み立て産業のまま現在に至っている。肝はブラックスボックスにしておくと、知的財産に価値を持つことができる。最終製品は中国で作っても肝となる知財相当技術を握っていれば価値をつけることができる。カメラ産業のこのあり方こそ、半導体産業が見習うべき戦略ではないだろうか。

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