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車載用半導体企業ランキング、23年もInfineonだが、STが猛追

車載向けの半導体市場の拡大が期待されている。2023年の自動車向け半導体売上額ランキングが発表された。これによると1位のInfineon Technologiesから5位ルネサスエレクトロニクスまでは前年と変わらないが、6位以下に多少の変動がある。車載市場は2023年の半導体不況にもかかわらず11.7%成長の670億ドル(約1兆円)に達している。

2023年の自動車向け半導体売上額ランキング / Semiconductor Intelligence

図1 車載用半導体企業の上位ランキング 出典:Semiconductor Intelligence


この車載半導体ランキングは、米調査会社のSemiconductor Intelligenceが各社の決算報告をもとに自社の推定を含み発表したもの。半導体各社の決算時期が微妙にずれていることが多く、2023年、2022年のカレンダー年の売上額に調整しなければならないが、月次の報告がないところが多いため、推定となる。

2023年では、1位のInfineonが24%増の92億ドル、2位のNXPは9%増の75億ドル、3位のSTMicroelectronicsは33%増の71億ドルとなった。2位のNXPを射程に捉えている。上位3社の内、InfineonとSTの年間成長率は二桁増で好調をキープしているが、直近ではスローダウンの兆候が見える。Infineonは前四半期比ではわずかなマイナス、NXPとSTはマイナスとなっており、特にSTは22年第1四半期から23年第4四半期までは前四半期比プラスでずっと伸び続けてきたが、この24年第1四半期に23%も落ちた。Infineonはゆっくりした落ち込みだが、23年第3四半期をピークに少しずつ落ちてきている。

自動車産業そのものもゆっくりとした動きで急速な変化はないが、2020年に新型コロナ感染による工場シャットダウンで、前年比15.4%減と大幅に落ち込んだ。しかし、21年3%増、22年6%増、23年10%増と少しずつ回復してきた。今年24年はこのペースが大幅に落ち、0.5%増程度になる見込みとS&Pは24年4月に予測している。S&Pは26年までは0〜2%成長と低成長を見込んでいる。

ただ、自動車全体の売り上げが低調であっても、自動車の中身が機械部品から電子制御(半導体)へと変化しているため、カーエレクトロニクスはこれまで通り5〜10%成長は固いだろう。特に、ECUを整理するという意味で、機能ごとにまとめるドメインアーキテクチャや、配線などの場所ごとにまとめるソーンアーキテクチャに加え、SD-V(ソフトウエア定義のクルマ)という新しいアーキテクチャのクルマには半導体が欠かせないからだ。

加えてEVもこれから伸びていく。一時的に中国市場では作りすぎによる市場が後退しているが長期的には伸びる。2022年と23年は、それぞれ54%増、35%増と急成長しすぎたため、その反動が来ている状況になっている。24年〜26年は17%〜22%成長をやや緩むが、バブル的な勢いではなく、地に足のついた着実な成長へと向かう。EVに使われる半導体の数は、内燃エンジン車のそれの2倍以上に増えるから成長は間違いない。

そして自動運転につながるADAS(先進ドライバー支援システム)が安全性という観点からクルマに組み込まれ、半導体が多用される。レベル5の完全自動運転が全てのクルマに採用される時期は、法整備も含めて30年代後半になるだろうが、それまでに運転手不足や地方におけるバス代替、トラックの縦列走行など需要の高い分野での採用が始まる。これら全てのテクノロジーがクルマに入ることから車載用半導体需要はますます高まっていく。

(2024/06/27)
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