2023年の半導体設備投資額は前年比14%減の1560億ドルに
2023年の半導体設備投資額は、どうやら前年比14%減の1560億ドルに落ち着きそうだ。このような見通しをSemiconductor Intelligence が発表した。2021年は前年比35%増、2022年は同15%増と増強してきたが、さすがに半導体市況が悪い中での投資額は減少しそうだ。ただ、これまで少なかった欧州勢は少し増やしている。
表1 主な半導体製造企業の設備投資額 出典:Semiconductor Intelligence
設備投資額を最も減額するのはメモリ業界で、3社平均前年比19%減の見通しである。次にファウンドリの同11%減、そしてメモリ以外のIDMが同7%減とSemiconductor Intelligenceは、見積もっている。ただし、メモリ産業はもっと減額の可能性もありそうだ。というのは、今年が不況から脱出できないままなのにもかかわらず、Samsungが前年と変わらないという予想をそのまま維持しているからだ。
設備投資の減額は、半導体市況、さらには半導体を使うIT機器の23年の見込みにも大きく影響される。IDCによれば、メモリをけん引するPCとタブレットの2023年出荷台数は、15.2%減の3億8480万台と予想され、メモリ需要はまだ立ち上がらない(参考資料1)。ただし、24年には4億台に戻るとしている。また、スマートフォンも3.2%減と見ており、需要はまだ回復しそうにない。
スマホの需要の落ち込みに強く影響されるのがメモリとTSMCである。特に2大顧客であるAppleとQualcommのアプリケーションプロセッサを製造しているため、現在はTSMCの稼働率が減り、設備投資額の減額につながっている。アプリケーションプロセッサの数は文字通りスマホの台数と直結するほどの量であるが、今、生成AI向けのNvidiaのGPU生産需要がかなり高まっているものの、数量はスマホと比べると桁違いに小さいため、TSMCの投資意欲を満たすほどではない。
今のところ、数量が圧倒的に大きいPCやスマホ向けの半導体を製造しているビッグ3社はIntel、Samsung、TSMCであり、彼らがCAPEX(設備投資額)の約60%を占めている。
数量としては、まだPCやスマホ需要ほど多くないため、CAPEXの金額も上述の3社ほどではないが、アナログやパワー半導体に力を入れているTexas InstrumentsとSTMicroelectronics、Infineon Technologiesの3社はむしろCAPEXを大きく増やしている。これは、アナログ回路ではデジタルのMOSトランジスタと違って、そのままスケールダウンできないことと深く関係している。特にゲート寄生抵抗がトランジスタの高周波特性に強い影響を及ぼすため、シュリンクしても最適な抵抗値に設計しなおす必要があり、単純シュリンクでは使えないからだ。しかし、アナログ向けのMOSトランジスタでも最適化を含めてシュリンクすると性能が上がるため、それに応じた設備が必要となる。ただし、アナログLSIの数量はメモリやプロセッサほどではないため、同じ設備を大量にそろえる必要がなく、投資額の絶対値はデジタルほど大きくはない。
参考資料
1. "PC and Tablet Market Face Further Decline Before a Rebound in 2024, According to IDC", IDC (2023/06/13)