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半導体景気を予測するセンサとして注目されるTSMCの業績発表

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「Micronの発表と台湾の半導体業界は、炭鉱のカナリアの役割をするのだろうか?」と題したニュースをIC Insightsが発表した(参考資料1)。最近のMicronが会計年度の次の四半期(6-8月期)見通しの落ち込みと台湾の半導体業界の6月の落ち込みで、半導体景気を予測できるのだろうか、という意味である。炭鉱のカナリアは有毒ガスのセンサとしてかつて使われていた。

Top-10 Taiwanese Semiconductor Suppliers' June/May 2022 Sales Change / IC Insights

表1 台湾半導体の上位10社の6月は小さく落ち込んだ 出典: IC Insights


Micronは6月20日に、同社会計年度の第3四半期(3-5月期:3Q)の業績を発表した。前年同期比19%増の好調さを示したが、次の四半期4Q見通しは、3Qの86億ドルから72±4億ドルという売上額に下げた。このことから半導体業界が急落するというニュースに変わり、さらにApple、AMD、NvidiaがTSMCへの注文の量を減らしたという噂が輪をかけ、半導体業界が急ブレーキという見方が強まり、半導体各社の株が軒並み下落した。現在(7月12日)は少し緩和されてきたが、要注意であることは確かであろう。

IC Insightsはさらに、6月における台湾半導体企業上位10社の売上額をまとめた結果、5月での売上額よりも5%減になりそうだという結果を得た。表1では、TSMCの業績は同5%減で上位10社の中の58.6%と過半数の売上規模を示している。

この中で最も急激な落ち込みを示したのはNovatekで、26%も下落した。ただ、Novatekの2021年の売上額は前年比78%と急激に上昇しているので、Novatekの業績は炭鉱のカナリアかもしれない。また台湾のDRAMメーカーであるNanyaは16%減ということでMicronの見通しを裏付けている可能性もある。

表1を見る限り、6月の業績が5%減とそれほど急激ではないため、心配する必要はないとも言えそうだが、別の意味で心配もある。半導体産業の特長の一つとして、最終月はその四半期での最高額を示す傾向があったからだ。つまり、3月、6月、9月、12月は、各四半期の中で経験的に最高額を示してきた。にもかかわらず、今回は最高額ではなかった。

メモリ以外の製品ではファウンドリトップのTSMCの売上動向は、短期的な予測を示す指標として使われている。例えば、TSMCの6月の前月比は2016年から2021年まで平均14%増で推移してきた。例外はメモリバブルの2018年の13%減だった。

7月14日に発表されるTSMCの第2四半期(4-6月期)の売上額と3Q見通しに注目する必要があるだろう。四半期ベースでは、TSMCの3Q/2Q比は2016〜2021年では平均16%増で推移しており、リーマンショックの影響を受けた2012年の落ち込み以外では成長してきたからだ。

参考資料
1. Are Micron and the Taiwanese Semi Suppliers the Canaries in the Coal Mine?", IC Insights (2022/07/11)

(2022/07/12)

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