DRAMのトップ3社による市場シェアは94%、寡占化続く
2021年のDRAM市場は、前年比42%増の961億ドルになったとIC Insightsが報告した。約11兆円である。この内、Samsung、SK Hynix、Micron Technologyの3社が占める市場シェアは94%で、寡占化が続いている。トップのSamsung、Hynix、Micronのそれぞれのシェアは、43.6%、27.7%、22.8%となっており、その他は5.9%しかない。
図1 DRAM市場は上位3社が94%のシェア 出典: IC Insights
2021年におけるSamsungのDRAM売上額は419億ドルで、プロセス的にも先頭を行く。2020年3月にはEUVリソグラフィ技術を導入、2021年10月から14nmのDDR5 DRAMを量産し始めた。しかも、14nmDRAMプロセスでは、EUVを使うプロセス工程を当初の2工程から5工程に増やしたという。11月には14nmの16Gビット(2Gバイト)低消費電力のLPDDR5X DRAMを5Gや機械学習、ビッグデータの最終応用機器などの高速用途に開発した。このDRAMは、既存のLPDDR5デバイスよりも1.3倍高い8.5Gbpsのデータ処理速度を持つとしている。また、Samsungは、新しいインターコネクト規格のCXL(Compute Express Link)をサポートするDRAMメモリモジュールをリリースしたのに続き、2GBのGDDR6や自動車用2GBのDDR4をリリースした。
シェア2位のSK Hynixの売上額は、前年比39%増の266億ドル。DRAMは同社の全半導体売上額の71%を占めている。用途の内訳は、サーバー用が40%、モバイル用35%、PC用15%、民生用とグラフィックス用がそれぞれ5%となっている。DRAMチップをTSV(Through Silicon Via)などで3DにスタックしたHBM(High Bandwidth Memory)3も同社は出荷している。また2021年にはHynixもEUVを導入して1αnmクラスのプロセスを使ってLPDDR4 DRAMの量産に入った。
Micronは、前年比41%増の219億ドルを売り上げた。これはMicronのIC売上額300憶ドルの73%に当たる。同社も1αnmのプロセスノードでDDR5 DRAMの生産を今年後半に開始する。同社は1αnmノードからではなく、1ɤnmノードでの生産にEUVを使う予定で2024年に生産を開始するとしている。
ロジックでは7nmノードから一部EUVを使い始め、5nmノードからはEUVを主体に使っている。ただ、TSMCが7nmプロセスと言ってもチップ上の配線には7nm幅の寸法はどこにもない。例えば、Intelの14nmプロセスはTSMCの7nmプロセスよりも若干大きい程度であり(参考資料1)、7nmは実際の寸法を表していない。また、単位面積当たりのトランジスタの数で表わしているWikiChipによると(参考資料2)、Intelの10nmプロセスでは1億76万トランジスタ/mm2であるのに対して、TSMCの7nmプロセスでは9120万トランジスタ/mm2しかない。
DRAMのようなメモリではプロセスノードが20nmを割ってからは、1x nm(19〜18nm)、1y nm(18〜17nm)、1z nm(16〜15nm)、と刻みながら微細化してきた後、1α nm(15〜14nm)からは1β nm(14〜13nm)、1ɤnm(13〜12nm)とさらに少しずつ微細化が進んできた。DRAMで、15nmくらいからEUVが使われるということは、TSMCの5nmプロセスの実質的な最小寸法は、15nm程度のようだ。
本当に実際の寸法が3nmや2nmとなると、原子の大きさに匹敵するようになり、ドナーやアクセプタの不純物濃度がSi原子数の百万分の一でMOSトランジスタがオンすることを考えると、MOSFETのドレインからソースの間に不純物が1個あるかないかのレベルにまでなってしまい、ゲートしきい電圧は大きくバラつきトランジスタ動作はしないはずだ。
参考資料
1. Ridley, J, "Intel 10nm isn't bigger than AMD 7nm, you're just measuring wrong", PC Gamer (2020/04/29)
2. "7 nm lithography process", WikiChip