2022年1Qのパソコン出荷台数は3%低下するも売上金額は15%成長
世界のパソコン出荷台数はノートPCとデスクトップを併せ、2022年第1四半期に前年同期比2.8%減の8007万台に落ちたが、全体の売上額は15%以上成長した。これを発表したのは、市場調査会社のCanalys社。通常、季節要因として第1四半期の売上額は前第4四半期よりも落ちるはずだが、金額は逆に増加した。
図1 2022年第1四半期のパソコンの出荷台数の推移 出典:Canalys
こういった季節要因は、半導体市場についても当てはまるため、今年のパソコン市況はそう悪くないといえそうだ。毎年11月から12月にかけてのクリスマス商戦でパソコンやタブレットは伸び、翌年の第1四半期は落ちるのが常だった。世界のパソコン売上額は700億ドルを超え、供給不足にもかかわらずこれだけの伸びを示したのは、単価が上がっても需要が旺盛なのであろうとCanalysは見る(参考資料1)。
台数ベースでは、ノートPCが前年同期比6%減の6320万台と落ちたものの、デスクトップPCは同13%増の1690万台と上昇した。生産台数そのもの半導体をはじめとする部品不足で下がっていたが、半導体単価の上昇に合わせて、パソコン単価も上昇したために、台数が少し低下しても売上額はそれを打ち消す以上に増加したといえる。パソコン所有企業や個人の強い基本的必要性により長期的に成長の機会が現れたといえそうだ。
2019年から2021年の間にパソコン需要は大いに高まり、約1.5億台が追加されたことになる。消費者がパソコン単価の値上がりで短期的に買い控えをしても、実際に使っているパソコンの50%以上が4年以上使っていることになるとCanalysは見積もっている。一方、消費者向けや教育向けのパソコン市場がたとえ軟化してもビジネスユーザーの需要は根強いとCanalysは見ている。
表1 上位5社の出荷台数(単位は千台)と市場シェア 出典:Canalys
2022年第1四半期においてメーカー別では、トップのLenovoは9.9%減の1826万台、2位のHewlett Packardは、同17.8%減の1582万台と上位2社が台数を減らした。しかし3位〜5位のメーカーは全て台数を伸ばした。3位のDellは同6.2%増の1374万台、4位のAppleは同8%増の742万台だった。Asusは同24%増の554万台と大きく伸ばして5位に復帰した。2017年の第3四半期以来だとしている。
ただし、次の第2四半期の見通しは芳しくない。大きな世界的な出来事が相次ぎ、需要と供給共に悪い影響を受けるだろうと見ている。一つはロシアのウクライナ侵攻による戦争だ。経済封鎖によりロシア経済は、貨幣の価値が大きく下がったことでインフレが来ており物価が大きく値上がりしている。もう一つは新型コロナ感染拡大防止のための中国におけるロックダウンの影響である。特に深センと上海は製造と流通の拠点となっており、これらの地域がボトルネックになるだろう、と見ている。
図2 欧州・中東・アフリカ地域のパソコン出荷台数の市場シェア 出典:Canalys
ちなみに欧州における2021年パソコンの市場シェア(図2)をCanalysyが発表している(参考資料2)。これによるとロシアのシェアは欧州全体の7%、ウクライナは1%となっている。英国は人口(6850万人)の割に台数シェアが15%と最も大きく、約1.46億人のロシアが7%しかない。
参考資料
1. "Worldwide PC Revenue up by More Than 15% Even as Shipment Fall 3% in Q1 2022", Canalys (2022/04/11)
2. "EMEA PC market experiences headwinds from Russia", Canalys (2022/04/05)