世界半導体材料市場、2012年には4兆1,100億円に
−2012年の異方導電フィルム世界市場予測 1,400億円 2006年比47%増に−
富士経済は、先端材料を中心に成長を続ける世界の半導体産業のプロセス材料について調査を行った。その結果を調査報告書「2007年 半導体材料市場の全貌」にまとめた。この報告書は、最先端の世界半導体材料市場の前工程および後工程の主要材料58品目を取り上げて各種素材別、地域別などあらゆる角度から分析して開発製品のマーケティング戦略を立案するためのデータを提供する。
06年の世界全体の半導体材料市場規模は、前工程と後工程を合計すると3兆2,100億円となっている。今後半導体市場の成長に伴い、12年には、4兆1,100億円に達すると予測される。06年実績を分野別に見ると、最大の材料市場は「半導体ウエハ」であり1兆1,800億円(全体の37%)である。次いで「実装関連」の7,430億円(同23%)、「フォトリソ関連」の3,860億円(同12%)と続いている。
◆調査結果の概要
今日、世界の半導体産業は、アジア地域を中心としたエレクトロニクス製品の需要拡大を背景に好調な成長を続けている。世界半導体市場統計(WSTS)によると、07年には世界半導体市場の規模は前年比8.6%増の2,679億米ドルに達する見通しである。こうした発展は、携帯電話、FPD、デジタル家電といった応用製品の多様化および高機能化、中国を始めアジア市場の急成長が背景となっている。
今後はカーエレクトロニクスもこの市場を牽引すると期待が高まっており、半導体メーカーは大口径ラインの増設体制を強化するなど、活発な投資を進めている。一方で多結晶シリコンの供給が逼迫して、既に供給不足と単価の上昇を招いている。また環境規制が厳格化して半導体関連メーカーに対しても地球温暖化係数の低い材料の使用や効率的なリサイクル・プロセスシステムの構築を求めている。
半導体産業を支えるプロセス材料がこうした状況下で注目を集めている。特に微細化技術(45nmの稼動から32nmの実用化)や銅配線化の進展などは、今後デバイスの性能向上に欠かせない。そのため、Low-k、High-k、高誘電率キャパシタ絶縁膜など先端プロセス材料の最新動向は、次世代高機能デバイス開発上で決定的な重要性を持つ。
◆半導体材料の世界市場展望
2006年 3兆2,100億円 前年比16.9%増
2012年 4兆1,100億円 2006年比28.0%増
06年の世界全体市場規模は、前工程と後工程を合計すると3兆2,100億円となっている。今後半導体市場の成長に伴い、12年には、4兆1,100億円に達すると予測される。06年実績を分野別に見ると、最大の材料市場は「半導体ウエハ」であり1兆1,800億円(全体の37%)である。次いで「実装関連」の7,430億円(同23%)、「フォトリソ関連」の3,860億円(同12%)と続いている。
(1)前工程材料市場(44品目)
2006年 2兆750億円 前年比17.5%増
2012年 2兆6,440億円 2006年比27.4%増
前工程材料は半導体材料全体の6割強を占める。その中でも最大のシリコンウエハ市場が1兆1,000億円、年平均3%伸びて12年には1兆3,300億円(06年比21%増)になると予測する。300mmの大口径化や半導体市場の成長に伴い増加している。但し、懸念材料は太陽電池への需要から多結晶シリコンの供給が逼迫していることである。
2番目に大きいフォトマスク市場は、09年に本格化する32nmプロセス用露光方式の動向がターニングポイントとなる見込み。最先端材料として注目されているLow-k(誘電率k<3.0の層間絶縁膜)市場は12年に倍増、高誘電率キヤパシタ絶縁膜は12年に3倍規模に達する見通しであり、将来性が期待される。High-kゲート絶縁膜用材料市場は09年頃に本格的な立ち上がりが見込まれる。
CMP(化学的機械研磨)関連ではスラリー(研磨剤)とパッド(研磨布)共に銅配線向けが増加しており、参入メーカーが相次いでいる。高純度薬液は安定した市場推移を見せており、洗浄・エッチング用ガスでは三フッ化窒素、アンモニアガスの成長が目覚しい。また近年は亜酸化窒素の急増が注目されている。
(2)後工程材料市場(14品目)
2006年 1兆1,346億円 前年比15.8%増
2012年 1兆4,692億円 2006年比29.5%増
後工程材料では最大規模の実装関連分野においてリードフレーム市場が2,350億円、今後年平均3%伸びて12年には2、870億円になると予測する。これに鉛フリーはんだが2,270億円で続いており、同じく年平均3%伸びて12年には2,650億円になると予測される。素原料の値上げもあるが需要は拡大している。
TAB/COF(Tape Automated Bonding/Chip On Film)市場は、TABからCOFへ代替が進んでおり、08年にはCOFの850億円がTABを追い越す見込みである。ボンディング材料では、ボンディングワイヤが2,500億円に達した。またダイボンディング材料は08年にフィルムタイプの130億円がペーストタイプの125億円を上回ると見られる。封止材料では、パッケージの小型・微細化を背景にフリップチップ向けやCOF向けの液状封止材料が成長している。
◆注目される市場
(1)高誘電率キャパシタ絶縁膜用材料
2006年 65億円 前年比30.0%増
2012年 190億円 2006年比192.3%増
従来からキャパシタ絶縁膜で採用されていたSiO2系やSi3N4系と比べて、高誘電体を採用したキャパシタ絶縁膜を指す。06年の世界市場規模は、数量ベースで4.3トン、金額ベースでは65億円となっている。
既にR&D主体から量産化へ本格展開が始まっており、販売量も年々増加している。06年はウィンドウズ・ビスタ搭載PCや高性能ゲーム機(「Wii」のDRAM混載LSIなど)向けにDRAMの生産を促し、Samsungの生産ラインの立ち上がりやNEC山形などの投資が需要を押し上げたと見られる。07年は引き続きDRAMやフラッシュメモリの増産が見込まれ、08年以降もエルピーダメモリと力晶半導体(台湾)の合弁メーカーによる大型投資計画が更に需要を押し上げると期待される。今後もデバイスの大容量化や薄膜化に伴い、需要は拡大し続ける見込みである。
世界のトップメーカーADEKA(日本) が全体の7割弱と圧倒的なポジションを確保し継続的にシェアを維持する可能性が高い。続く高純度化学研究所は技術力と高度な品質レベルに定評がある。
(2)三フッ化窒素(NF3)
2006年 500億円 前年比16.3%増
2012年 840億円 2006年比68%増
三フッ化窒素は、環境対応に優れたプラズマCVD(化学蒸着)チャンバークリーニング用ガスとして急成長している。京都議定書により半導体工場が排出するPFCガス規制が厳しくなり、地球温暖化係数が高く、大気存在年数の長いガスを削減する動きが追い風となっている。エアープロダクツ(アメリカ)や国内メーカー中心の市場に近年は韓国・台湾・中国メーカーが参入して各社とも増産計画が目立つ。今後とも新設工場では、6フッ化硫黄の代替として塩素の出ない三フッ化窒素が使われる見込みである。
06年の世界市場規模は、前年比20%増の3,850トン、金額ベースで前年比16%増加の500億円であった。地域別では日本を含むアジアが圧倒的なシェアとなっている。国内市場の規模は数量ベースで650トン、金額ベースで86億円程度である。現在、半導体やLCD需要の拡大により年率10%以上の成長であり、世界市場は10年頃には7,000トンを超えると見られる。韓国や台湾などが世界の半導体・液晶生産基地として巨大な需要量となっている。半導体では300mmラインの増加や液晶では第8世代以降の大型パネル生産が牽引してゆくことは確実であろう。今後は中国やシンガポール需要の台頭、液晶向けでは韓国・台湾メーカーの新規増設が牽引役となる。
世界全体のメーカーシェアは、エアープロダクツが39%と圧倒的に高い比率を占めている。国内メーカーは世界シェア20%台で関東電化工業と三井化学が競っている。
(3)異方導電フィルム
2006年 950億円 前年比13.1%増
2012年 1,400億円 2006年比47.4%増
異方導電フィルムは厚み方向(縦方向)に導電し面方向(横方向)では絶縁するフィルムで、FPD、特にLCDのICドライバ実装用の需要が殆どである。需要量は大型液晶パネルの生産拡大に伴い大幅に拡大している。06年の世界市場規模は、前年比29%増の49万キロメートル、金額ベースで前年比13%増の950億円であった。需要は大型液晶パネルの生産拡大とともに拡大して12年には110万キロメートル、金額ベースで06前年比47%増の1,400億円規模になると予測する。先行メーカーである日立化成工業(製品名「ANISOLM」)がトップシェアである。 高い技術力が必要とされるため日系企業のシェアが高く、日立化成工業とソニーケミカル&インフォメーションデバイスの合計販売数量が45万キロメートルで全体の約92%を占めていると推定される。
ソニーケミカル&インフォメーションデバイスは携帯電話機やノートPC向けで価格の高いCOG(ガラス基板に直接半導体チップを実装した部品)用の販売数量が多く、販売金額では40%程度のシェアを占めていると推定される。サムスン電子の系列である第一毛織やLG電子の系列であるLS Cableが参入しているが、技術力から大きなシェアを占めるまでには至っていない。