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2019年の半導体市場、リーマンショック並みの低下率

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英市場調査会社のIHS Markitが、2019年の半導体市場予測を発表した。リーマンショック以来の落ち込みで、2018年の4820億ドルから7.4%減の4462億ドルになると見込んでいる。2018年12月での予測は2.9%増であったから、その幅は10%を超えると強調している。

Annual Semiconductor Revenue Forecast (in Billion of US Dollars)

表1 世界半導体市場の推移 単位は10億ドル 出典:IHS Markit


IHSによると、2018年は15%成長したために2019年を予想した12月ごろはやや楽観的に見ていた、という。しかし、半導体メーカーは現在の景気後退は予想以上に深いという認識に変わった。この10年で最悪だとしている。これはまさにリーマンショックの影響を受けた2009年の状況に匹敵する。

2019年の第1四半期に前年同期比で2桁の落ち込みを示した製品は、DRAM、NANDフラッシュ、MPU、32ビットMCU(マイコン)、アナログASICであった。全てコンピュータ製品や組み込みシステム製品である。パソコンやサーバーだけではなく、スマートフォンや組み込みシステムの落ち込みが大きいようだ。

2017年・2018年のDRAMメモリバブルの反動が大きく、ユーザーからのしっぺ返しがコンピュータ向け半導体全体に行き渡った感がある。特に2017年はDRAM生産量を増やしてくれという顧客の要求に対してわずか2%しか増やさなかったために単価がボトム時の2.5倍以上も跳ね上がった。このため、メモリ容量を増やせないパソコンが多かった上にコンピュータやスマホの価格も上げ、消費者からそっぽを向かれ、売上が停滞した。

メモリユーザー、すなわちコンピュータやスマホのメーカーは、二重・三重に発注しメモリ量を確保しようとしてきたため現在は在庫が溜まってDRAM購入量を抑えており、価格が下がってきた。DRAMメーカーは2019年の第1四半期に価格を前四半期比で20%下げることで、これ以上の減少を食い止めるように交渉したようだが、実際には価格の下落はこれに留まらず、第2四半期もさらに10〜15%下落するようだ。第3四半期には下げ止まると見られているが、コンピュータやスマホが売れ始めるまではそうはいかないだろう。

またNANDフラッシュは、DRAMとは違い用途がストレージなので、値下がりのストーリーはDRAMとは異なる。NANDフラッシュは2017年に64層の3D構造へプロセスを変更したが、新しいプロセスであったため歩留まりが悪く、顧客からの増産要求に応えられるように努力してきたが、生産量を確保できず価格は値上がりした。2018年に入ると歩留まりが上がるようになって生産数量も上がり、2018年に入ると価格は値下がりしてきた。

元々メモリは量産の習熟曲線通りに歩留まりが上がると共に単価は下がってきた製品である。NANDフラッシュは習熟曲線通りに単価は下がってきたが、DRAMが意図的に生産量を増やさなかったのとは全く事情は違う。DRAMは大手3社で95%以上のシェアを握っているために、カルテルを結ばなくても価格を操作できる立場にある。むしろ、もっと多くのDRAMメーカーが出てきて健全な競争を行うようになる方が市場経済としては望ましい。

NANDフラッシュは、さらに3D構造だけではなく、多ビット/セル技術も発展させ、4ビット/セル技術が製品化できるようになったため、ビット需要よりもビット供給能力の方が上回ってしまった。この結果、単価の値下がりは習熟曲線以上に激しくなった。

DRAMもNANDフラッシュも値下がりしてもコンピュータ需要がまだ立ち上がらない状況では、MPUやマイコンも立ち上がらない。DRAMやNANDフラッシュの値下がりがコンピュータ需要を喚起する時期まで待つ必要があろう。パブリッククラウド需要は確実にあり、そのためのデータセンターでのメモリやストレージの増強は欠かせない。スマホも5Gの商用化が始まり、5Gモデムを搭載する機種が出始めるため、少なくとも今年の第4四半期には需要は立ち上がってくるであろう。

(2019/05/13)

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