直近のファブレスランキング、Broadcomがトップに
ファブレス半導体のトップメーカーは、Qualcommを抜いてBroadcomがトップに立った。これは、台湾ベースの市場調査会社TrendForceが調べた2017年第1四半期(1Q)の順位である。米国企業が6社、台湾が3社、ドイツが1社という構成になった。
表1 世界のファブレス半導体トップテンランキング 出典:TrendForce
Broadcomがトップになったのは、AvagoがBroadcom Corp.を買収して、Broadcom Ltd.となったことによる。この1Qでファブレス半導体産業をけん引した応用分野は、ネットワーク機器やデータセンター、サーバー、クルマである。ネットワークに強いBroadcomが、モバイル通信に強いQualcommを抜き去ったといえる。
モバイルでは、Qualcommは中国勢のHiSilicon(華為の子会社)やSpreadtrum(紫光集団の傘下)などと、まともにぶつかる競争を避けてきたが、スマホ市場が飽和気味になってきたことから成長率は高く見込めなかった。しかし、Qualcommもネットワークインフラ機器向けのチップを設計しているため、成長率として前年同期比10.2%の二桁を確保した。この表では、Qualcommの売り上げにはライセンス事業の分は含まれていないため、純粋のファブレス半導体の売り上げを示している。
最も伸びた企業はNvidiaで、その成長率は前年同期比60.3%と最も大きい。これまでNvidiaはゲーム機用のGPUが圧倒的に強く、ある程度の売り上げを確保していたが、直近ではデータセンター向けのGPUが伸びている。スーパーコンピュータをはじめとするHPC(High Performance Computing)では、並列演算処理する場合にGPUを使うケースが増えており、分岐命令の多い用途にはCPUを多用するなど、GPUとCPUのうまい使い分けが進んでいる。さらに最近はディープラーニングのようなニューラルネットワークで演算するパターン認識には、学習させる積和演算にGPUを使うケースも増えている。Nvidiaはパターン認識を自動運転車に使うことを訴求している。
台湾トップのファブレス、MediaTekはこのNvidiaに抜かれ、4位に落ちた。MediaTekもスマホの飽和傾向という同様の問題を抱えており、成長率はわずか0.3%にとどまった。実際、満を持してTSMCの10nmプロセスと2.5GHzのARMのデュアルコアCortex-A73を使った最先端のハイエンドスマホ向けのアプリケーションプロセッサHelio X30がまだ受け入れられていないことも響いた。
むしろQualcommの10nmプロセスを使ったSnapdragon 835は、各種スマホに搭載が予定されており、ハイエンドスマホでMediaTekに差を広げるだろうと、TrendForceは見ている。