半導体市場をけん引するのはやはり携帯電話
米市場調査会社のIC Insightsは、スマートフォンを含む携帯電話向けのIC市場が2019年までに年平均成長率CAGR 6.7%で成長していくという予測を発表した。携帯電話そのものの伸びは鈍化する傾向にあるが、ICは成長していく。電話の台数や売り上げ以上に部品の伸びは大きい。ある程度在庫を置かなければならないからだ。
図1 携帯電話用半導体IC市場の予測 出典:IC Insights
2015年の世界の半導体市場は、わずかのマイナスだったが、携帯電話用ICは2%の伸びを示した(図1)。2016年も半導体市場は-2.4%とWSTSは予測しており、IC Insightsも-1%と予測しているが、携帯電話用ICは4%のプラス成長とみている。世界の半導体市場をけん引するのはやはり携帯電話のようだ。
IC Insightsは、2015年の携帯電話用のICは727億ドル、2016年は4%増の754億ドル、そして2019年には943億ドルに成長するとみている。IC Insightsの見る世界の半導体市場のCAGRは2016年まで3.7%で成長するので、携帯電話用のIC市場の成長率は平均よりも高い。
電話1台当たりに使われるICの総額は2015年に38.78ドルだった。その内最も大きな金額のICは、MPUプロセッサのカテゴリで9.92ドル、その次がアプリケーション特化のロジックで8.55ドルだったという。アナログICは6.64ドルだった。
携帯電話用メモリ市場210億ドルの内、DRAMが59%の123億ドル、残りがフラッシュである。これは携帯電話のメモリ容量を増やす動きによるもので、携帯電話用のDRAMは2015年に6%成長したという。
携帯電話用アナログICも着実に伸びており、2015年は8%増の125億ドルに成長したが、アナログIC全体の市場は2%しか伸びなかった。携帯電話用アナログICの中で大きく伸びている製品は、アプリケーション特化のアナログICやミクストシグナル製品で、アナログIC全体の83%を占める。
2019年に向けて携帯電話市場は価格の安いローエンド市場が広がっていくと見ており、アプリケーションプロセッサを含むMPU市場は、2015年の26%から23%に相対的に低下するという。携帯電話用DRAMは2015年の123億ドルから199億ドルに達すると予測する。一方、大きく下がる製品はDSP市場で、2012年の13億ドルからわずか1億ドルに低下する。これは、恐らく二つの理由だろう。一つはDSPを使っていたモデムがアプリケーションプロセッサに内蔵されるようになってきたこと、もう一つはモデムの方式が明確に固まってきた以上、プログラム可能なDSP(積和演算専門のマイクロプロセッサ)ではなくASICで専用チップを起こすようになったためであろう。モデムの変復調機能がバタフライ演算など決まってきたためプログラムが必要なくなったとみてよい。専用モデムチップの方が高速で消費電力も小さい。