今年上半期のM&A金額急増、IoT時代に備えた買収劇
半導体業界は企業買収(M&A)が活発になってきたが、その裏付けとなる金額データを米アリゾナ州スコッツデールにある市場調査会社IC Insights が調査、発表した。その結果、今年前半の買収金額は2010年から2014年までの年平均金額の6倍にも達するという。
図1 半導体産業の買収総額 出典:IC Insights
2010年から2014年までの買収金額を総合計すると、626億ドルだが、2015年の上半期だけで726億ドルに達した。今年は、3月にNXPがFreescaleの買収に118億ドルで合意したというニュースから始まった。5月後半には光デバイスに強いAvagoがBroadcomを370億ドルで買収提案し、IntelはAlteraを167億ドルで買収するという提案を行った。立て続けに買収提案が今年の上半期に行われた。
これらの動きをこれからのIoTビジネスと極めて強い相関を持つと見ることができる。例えば、IoTビジネスでは、センサ端末(IoT端末ともいう)、ゲートウェイ、データセンター、ストレージ、といったハードウエアだけにとどまらない。データセンターに集められたデータをビッグデータとして解析するソフトウエア、さらにはビッグデータ解析を利用してそれをサービスとして企業や店舗に販売するサービス業、など様々なビジネス業態がこれから発展していく。
半導体産業と深く関係するハードウエアだけでもIoT時代には、センサ端末とゲートウェイ以上より上のレイヤーとは仕様が全く異なる。IoT端末はセンサ、アナログフロントエンド、デジタル処理(マイコンなど)、トランシーバ(送受信機)、電源などからなる。これらでは微細化技術があまり必要のない半導体で構成される。一方、上のレイヤーはハイエンドな製品が求められ、微細化技術は欠かせない。
そこで、セキュリティに強いNXPは、プロセッサに強いFreescaleを買収することで、ローエンド端末からハイエンドまでカバーすることを狙った。トランシーバのハイエンドRF回路が得意なAvagoは、幅広いベースバンド技術が得意なBroadcomを手に入れることで、ハイエンドからローエンドまで全ての通信技術に対応する。ゲートウェイを含めそれより上のレイヤーをビジネスとするIntelは、ハードウエアアクセラレータとして使うFPGAを手に入れることで、ハイエンド市場を独り占めできるように準備した。
これまでの市場だけでは半導体ビジネスは、飽和気味になってきていることは確かだ。これを突破するための道具がIoTシステムである。米国企業の買収劇はIoT時代を生き残るための手法といえる。かつての買収は、ファンドがマネーゲーム的な企業売買を目的として行われたが、最近の買収劇は目的が全く違う。