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医療機器向け半導体、2018年までに12.3%成長

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医療機器向けの半導体は2013年から2018年にかけて年平均成長率CAGRで12.3%という高い割合で成長すると米調査会社IC Insightsが発表した。2018年には82億ドル(約1兆円になり、この内ICチップは10.7%増の66億ドル、ディスクリート(O-S-D)は20.3%増の16億ドルになると見込む。その理由は2つの大きなトレンドによる。

図1 医療機器向け半導体は高成長 出典:IC Insights

図1 医療機器向け半導体は高成長 出典:IC Insights


ディスクリートの方が伸び率は高いのには訳がある。ディスクリートにはセンサ(S)と、パワートランジスタや小信号トランジスタのような個別半導体(D)、オプトエレクトロニクス半導体(O)の三つに分かれるが、医療システムでは特にセンサの数が多い。オプトに分類されるCMOSイメージセンサの数も1台1個に留まらない。もちろん、IC化できなかった部分は小信号トランジスタで回路を組んだり、不足部分を補ったりする。IC特にSoCとなると1台に使われる数は少ない。

IC Insightsが見る2大トレンドとは、低コスト化・ヘルスケア機器の普及と、高性能・高機能化である。低コスト化・ヘルスケア機器の普及に関しては、これまで高価な医療機器をもっと小型にしてコストを下げようという動きは確かにある。IC化を進めることで、1台1億円もするようなMRIやCTスキャナなどの高級な機器の価格を1/4〜1/10に安くできる。大学や大病院にしか備え付けられなかった機器を町医者(ホームドクター)が持てるようになる可能性がある。

かつてIBMを取材した時のこと。彼らは米国のメイヨークリニックで医者からMRIやCTスキャナをもっと小型にしてほしいと言われた。患者が狭い空間に閉じ込められる恐怖感を感じるからだという。IBMは、患者が座った状態で検査できるほど小型のMRIを、FPGAなどのICで作製、納入した。また、Analog Devices社は24/36チャンネルのA-Dコンバータや周波数変換器などを製品化している。MRIやCTスキャナでは、患者の体の周囲360度に渡ってX線画像を撮影する。周囲からの撮像データをできるだけ細かく得られれば隠れた癌細胞などを見つけられる。36チャンネルのA-Dコンバータなら、1チップで10度ごとに画像が得られることになる。

もう一つのトレンドである高性能化・高機能化に関しては、集積回路を最大限駆使して、出来るだけ高精細な画像・映像を得ることで、医師はより的確な診断ができるようになる。さらに将来に向けて、コンピュータを駆使した手術システムや、手術用ロボット、手術室のオートメーション化、遠隔操縦システムなどの開発が盛んになるとする。このようなシステムは、高集積なICでなければ実現できない。

2013年から2018年までに、医療機器本体やシステムのCAGRは8.2%で伸び、最終年には701億ドル(約8兆4000億円)になると見ている。

(2015/03/20)

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