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企業向けから民生用途へと広がり、MEMSの売上トップにSTマイクロが浮上

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MEMS技術の民生応用が活発になり、MEMSメーカーの売上ランキングが変わってきた。2012年のMEMS売上ランキングでは、STマイクロエレクトロニクスがトップになり、その売上額が初めて10億ドルの大台に乗った。民生用のスマホやタブレットに採用されている慣性センサ(加速度やジャイロ)が増えてきたことがその背景にある。

表1 2012年MEMS売上ランキング 出典:Yole Developpement

表1 2012年MEMS売上ランキング 出典:Yole Developpement


従来、MEMSのランキングでは、テキサス・インスツルメンツ(TI)やヒューレット-パッカード(HP)が上位を占めていた。TIのプロジェクタ用のデジタルミラーデバイスや、HPやエプソンのインクジェットプリンタ用途のMEMSデバイスが多かった。これらのデバイスは企業向けの用途だった。

ところが最近MEMSデバイスはスマートフォンやタブレットにも使われるようになり、その数量が爆発的に増加した。ランキングを発表したフランスの市場調査会社Yole Developpementによると、STマイクロのMEMS製品の売り上げは10%増にとどまったが、その出荷数量は58%も増えた。慣性センサの単価が20〜30%下落し、STは2012年には13億個のMEMSデバイスを出荷したとYoleは見ている。

2位にロバート・ボッシュが入ったのはクルマへの用途が伸びたからだ。X、Y、Z軸の衝撃や重力、力を検出する加速度センサや、回転も含めた3次元の動きを検出するジャイロセンサは、クルマとスマホが大きな市場となってきた。

MEMSの応用として、マイクロフォンも増えつつある。従来のエレクトレットコンデンサマイクでさえ小さいが、それでもスマホに2個以上実装するのには大きすぎる。このためMEMSが使われるようになってきた。スマホに2個のマイクを搭載するのはノイズキャンセラのためである。スマホの音声認識技術の認識率を高めるため、周囲の騒音を打ち消すノイズキャンセル技術が欠かせない。マイクを2個使い、位相を180度反転させて打ち消す技術や、騒音特性をシミュレーションしてノイズを除去するアルゴリズムの開発などが進んでいる。

例えば、第5位のノウルズ社はMEMSマイクの売り上げで前年比20%以上の伸びを見せた。中国のエレクトレットマイクメーカーのAACは、MEMSマイクも出荷し、その売り上げを前年比90%伸ばし、6500万ドルを達成した。iPhoneマイクのセカンドソースとしての地位を確立した。

日本の村田製作所は北欧のMEMSメーカーVTI Technologiesを買収することにより、MEMS売り上げを1億7900万ドルに増やし、第16位に上げた。

(2013/04/25)

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