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世界のIC生産能力は地震の多い地域に集中しているというリスクを見積もる

東日本大震災によって半導体製品をはじめとする部品のサプライチェーンが大きなダメージを受けたことについて、他の地域へのリスク評価が始まった。米市場調査会社のICインサイツ(IC Insights)は、世界の半導体チップの製造が地震の多い台湾のファウンドリと日本に集中していることに注目、その生産能力のリスク見積もりをこのほど発表した。

表1 世界のIC生産能力は地震の多い国に集中している
生産能力は1年間の8インチウェーハ枚数で換算している 出典:IC Insights

表1 世界のIC生産能力は地震の多い国に集中している


半導体ICの2010年における生産能力では、日本が8インチウェーハ換算で年間3252万枚と世界のトップにランクアップされている。第2位が台湾の3192万枚、第3位韓国の2256万枚となっている(表1)。韓国では地震の危険性は低いが、台湾では日本と同様、どの地方でも地震の起こる危険性がある。

世界のファウンドリ専門メーカーの2010年における生産能力は、8インチウェーハ換算で3280万枚だが、そのうちの90%が地震の危険性のある地域だという。特に、台湾に拠点のあるTSMCとUMCという2大ファウンドリの生産能力が大きい。

TSMCのメガファブと呼ばれる工場は新竹地区に集中している。もし、新竹のICファブが災害などによって全て停止すると仮定するなら、1ヵ月のエレクトロニクス産業の損害は100億ドル(8300億円)にも達すると見積もっている。地域的に台湾には地震に加え、台風という災害の危険性もある。

TSMCはリスク分散を考慮に入れ最近、台南にも工場を持ち、さらに米国、上海、シンガポールにも工場を持つようになっている。ただし、新竹サイエンスパークにおけるメガファブ程の規模ではないようだ。依然として、台湾新竹におけるメガファブが持つリスクは大きい。

一方、同じく米市場調査会社のIHSアイサプライは、ICインサイツの発表の2週間ほど前に、日本以外の地域におけるメガファブの集中による危険性を指摘していた。韓国では、地震の危険性は低いものの、地震以外の災害、例えば戦争や台風などのリスクがある。韓国では世界でのDRAM生産の59%、NANDフラッシュの49%、大型LCDパネルの51%が集中しており、それもソウル郊外に集中していることがリスクとしてある、とアイサプライは指摘している。

(2011/04/19)
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