Semiconductor Portal

» セミコンポータルによる分析 » 市場分析

2010年の半導体出荷見込みは35.1%増の3103億ドルとアイサプライが上方修正

米市場調査会社アイサプライが2010年の半導体市場予測をさらに上方修正し、35.1%増の3103億ドルになるとの見込みを発表した。これは過去最高の金額になる。前回予測した時は5月6日であり、売り上げの伸び率は30.9%の3005億ドルだったが、これでもWSTSの2910億ドルよりは高めだった。

図1 アイサプライが発表した四半期ベースの半導体売上高

図1 アイサプライが発表した四半期ベースの半導体売上高


3000億ドルを突破するのはこれまでなかった。5月の控えめな数字でさえ、3005億ドルだったが、今回はさらに100億ドル(1兆円弱)も上積みしている。ちなみに2009年は対前年比で9%低下した2296億ドルだった。

いま、半導体市場をけん引するのは、民生製品であり、特にパソコン、携帯電話、スマートフォンや液晶テレビがこれまでの売り上げ増の要因となっているという。こういった電子機器の売り上げは2010年に前年比9.3%増の1兆5400億ドルが見込まれている。これまでの最高値は2008年の1兆5300億ドルだったため、電子機器の売り上げも過去最高となる。

半導体製品の単価は上昇傾向にあるため、これまでのような数量は増えるが売り上げは伸びない、といった傾向ではない。数量も売り上げも伸びる方向ではある。ただし、電子機器の売り上げ増よりも半導体の売り上げ増の方がずっと大きいが、これは半導体ユーザーである電子機器メーカーやEMSメーカーが二重、三重に半導体製品を発注しているケースが増えているためだ。二重発注せずしかも1社購買しかしなかったために起きた問題もある。日産自動車に供給するECU(電子制御ユニット)のコイルドライバICが入手できなくて日立製作所が供給を止めたというニュースは記憶に新しい。

半導体メーカー側は、2009年の急激な落ち込みによって控えざるを得なかった少ない設備投資のおかげで生産能力が減少したままになっている。このため需要に追い付けないという状況になっている。

アイサプライはこの状況をバブルではないと言い切る。2000年は持続成長が約束されないバブルだったのに対して、今回の状況は不況からの回復過程にすぎないからである。2009年の急激な落ち込みは、銀行が混乱してしまいお金を貸せない状況になったため製造業は部品を購入することを止め、在庫だけで最終製品を作ろうとしたために半導体をはじめとする部品メーカーには全くオーダーが入ってこない状況になった。しかし、在庫だけで最終製品を作るとすぐに在庫がなくなり、部品の購入を迫られる。このための回復基調が2009年3〜4月ごろから始まり、2009年末まで続いた。

最近は、企業向けパソコンの買い替え需要、ネットブックのような小型の低価格パソコン需要、新たなスマートフォン市場の立ち上がりなどの需要が盛り上がってきている。

こういった需要を支える半導体製品がメモリーである。フラッシュ、DRAMともに供給不足の状況が続いている。アイサプライは2014年までは大きなマイナスはなさそうだと考えている(図2)。


図2 2014年まではプラス成長が続く

図2 2014年まではプラス成長が続く


最近発表された英国の市場調査会社フューチャーホライゾンズ社も同様な背景の元で上方修正した。特に2010年第1四半期が例年だと前四半期よりも落ちるはずなのに、2.9%増加し、第2四半期はさらに前四半期よりも8.3%増えたことを上方修正の根拠としており、第3四半期の伸びは5〜10%、第4四半期は少し緩やかになり-2.0%〜3.0%として見積もると、2010年通年では32.5%〜37.6%という数字になる。フューチャーホライゾンズはこの中間の値をとり、通年で対前年比35.9%の伸び率と割り出している。これは2010年の市場が3075億ドルになる。

(2010/08/04)
ご意見・ご感想