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シリコンウェーハの稼働率、実投入数から見えてくる、未来の半導体支配者

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世界半導体生産キャパシティ統計(SICAS)が発表した、2010年第1四半期における半導体ウェーハの稼働率は93.6%にも達していることがわかった。これは、世界同時不況がやってくる前の2007年〜2008年ごろの90%弱をキープしていた頃と比べても稼働率が4%も高く、工場は目いっぱい稼働している様子がわかる。

半導体ウェーハの稼働率は94% 出典:SICAS

半導体ウェーハの稼働率は94% 出典:SICAS


今回の数字をよく見てみると、稼働率は俗にいう「パンパン」の状態で、目いっぱい生産しているという状況だが、実は生産能力は不況前よりも落ちているのである。すなわち不況の影響を最も強く受けた2009年第1四半期には実際のウェーハ投入数が急速に落ち、ピーク期であった2008年の第2四半期と比べ43%も低い12万1350枚/週にまで落ちていたが、生産能力は急には対応できず9.1%減の21万8320枚/週にとどまっていた。

その後、徐々に生産能力を落とし、2010年第1四半期には20万5380枚/週まで落とした。しかし、実生産数は急速に回復し稼働率だけでみると2009年第4四半期にはピーク時と同じ稼働率の89%まで回復した。にもかかわらず、2010年第1四半期の生産能力はいまだに減り続け、対前期比で2.6%減と落ちていた。


μm別のMOS半導体の生産能力と実投入数 出典:SICAS

μm別のMOS半導体の生産能力と実投入数 出典:SICAS


μm別のMOS半導体の生産能力を見てみると、0.08μmすなわち80nm以下の半導体の生産能力は不況前よりも上がっているのにもかかわらず、80nm以上のラフパターン半導体の生産能力を必要以上に締め付けすぎている、ということになる。ラフパターンの半導体の最新の生産能力はピーク時(2008年第2四半期)よりも69%も低い10万3980枚/週なのに対して、実投入数はピーク時よりも73%低い9万393枚/週にとどまっている。これに対して、80nm以下の微細パターンの半導体の実投入数はピーク時よりも15%増の9万8270枚/週としてきたが生産能力は13%増の10万1400枚/週にとどまっている。

ただし、現状(2010年第1四半期)の稼働率を見ると、微細パターンの半導体が96.9%と極めて高い状況に対して、ラフパターンは90.3%となっている。これまでラフパターンの稼働率は平均稼働率を常に下回っており、微細パターンの方が稼働率は高かったが、90%まで上回ったことはあまりなかった。


ウェーハ径別のMOS半導体の生産能力と実投入数 出典:SICAS

ウェーハ径別のMOS半導体の生産能力と実投入数 出典:SICAS


以上の考察に加えて、今回の統計から300mmウェーハの実数がとられるようになった。これまで、300mmウェーハ生産量は常に200mmウェーハに換算して表現してきた。300mmウェーハが伸びてきて、今後さらに増えていくことがはっきりしてきたからである。下のグラフを見ると、不況の底にあった2009年第1四半期には200mmウェーハの投入を絞りすぎた。しかし、200mmウェーハは急速に回復し始め、300mmウェーハに取って替わられるどころか、まだ延命し続ける気配がある。


300mm(12インチ)と200mm(8インチ)ウェーハの実投入数 出典:SICAS

300mm(12インチ)と200mm(8インチ)ウェーハの実投入数 出典:SICAS


生産能力をいま以上に落としすぎると、需要に全く間に合わない、いわゆる機会損失になってしまう。急速に生産能力を上げなければ、成長できなくなってしまうことがはっきりした。

こういった状況で将来大きく成長できる企業はどこか。半年以上も前から生産能力を上げるための投資をガンガン行っているところだろう。すなわち、TSMCだ。TSMCの巨大な恐ろしさはこれから間違いなくやってくる。価格、生産能力など製造サービスの全てをTSMCが支配する危険性がある。半導体製造はTSMCワールドになってしまう。日本の半導体は、TSMC対策をどう打つかを考え、議論していくべきではないだろうか。

(2010/05/21)

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