中国エレクトロニクストップ企業100と世界のポジショニング
中国のエレクトロニクス、PC、携帯機器、家電、半導体それぞれの分野の上位企業を世界市場でのトップ企業と比較した調査がアレグロ・員フォーメーションから発表された。それぞれ、売上高、営業利益率、研究開発費、を比較した。
1)中国エレクトロニクストップ100 と世界トップ500 の比較:全体競争力の格差大
- 売上高
中国エレクトロニクス企業は海外勢より会社規模が小さい。
これが、中国エレクトロニクス産業全体の競争力が先進国に劣る原因である。2005 年の中国エレクトロニクストップ100 の売上合計は1,200 億米ドル強で、世界トップ500 の上位10 社総売上(7,196.億米ドル)の6 分の1 でしかない。2005 年の中国エレクトロニクストップ100 のうち上位4 社の総売上は、世界トップ500 の上位4 社の11%である。
- 営業利益率
中国勢は海外勢に比べて営業利益率が低い。中国エレクトロニクストップ10の営業利益率は、深セン華為以外の全ての企業が5%未満である。このうち、7社の利益率は2%以下である。一方、インテル、サムスン電子、デルの2005 年の営業利益率は、それぞれ22.3%、18.8%、6.4%である。ちなみに、中国で比較的業績の良いIT 企業である華為の2005 年の営業利益率は11.1%、中興は7.4%、聯想は1.9%である。 - 研究開発投資
2005 年の中国エレクトロニクストップ100 の研究開発費は、合計で44.8 億米ドルである。IBM 、サムスン電子、マイクロソフト、ノキアなど世界大手の開発投資は50 億米ドルを超えている。このように、中国勢はR&D への取り組みが不十分であることを示しており、研究開発力の弱さのために、エレクトロニクス技術、ソフトウェア技術、ネットワーク技術、デジタル技術などの開発が遅れ、専用の材料、専用の装置、基幹部品などは輸入に依存しなければならない状況である。
2)PC メーカー:営業利益率の格差は大きくない
- 売上高
2005 年に、HP とデルの売上高はそれぞれ799.1 億米ドルと492.1 億米ドルに達しており、中国最大手PC メーカーの聯想、方正と比べて大きな格差がある。
聯想は、2005 年にIBM のPC 事業部を買収したことで、売上高が2004 年の50.7億米ドルから2005 年の135.2 億米ドルに拡大してきた。しかし、この数字は、HP の6 分の1 、デルの4 分の1 にしか達していない。方正は、2005 年の売上高が32.4 億ドルで、HP の25 分の1 、デルの15 分の1 でしかない。
- 営業利益率
営業利益率で比較すると、中国勢と海外勢の格差は売上高ほど大きくない。デルの営業利益率は6.4%、HP は3%であるのに対して中国勢の方正は3.3%、聯想は1.9%である。 - 研究開発投資
HP の研究開発費は、売上高の5.5%である。聯想と方正はそれぞれ1.4%、4.9%である。中国勢と海外勢の研究開発費は、売上高に対する比率ではそれほど大きな差はないが、HP は売上高が高いため、研究開発費の絶対額は聯想の25 倍である。 - 一人当りの売上高
デル、HP 、聯想、方正の一人当たりの売上高は、それぞれ89.1 万米ドル、52.9万米ドル、26.7 万米ドル、13.4 万米ドルであり、海外勢と中国勢の差は大きいことが一目瞭然である。
3)携帯電話メーカー:研究開発の投入比率格差が縮小
- 売上高
世界の携帯電話の大手であるノキアとモトローラは、2005 年の売上高がそれぞれ465.2 億米ドルと368.4 億米ドルである。一方、中国携帯電話トップの華為と中興は、58.7 億米ドル(ノキアの8 分の1 、モトローラの6 分の1 )と27 億米ドル(ノキアの17 分の1 、モトローラの14 分の1 )である。
- 営業利益率
2005 年の華為の営業利益率は11%、中興は7.4%で、海外勢の営業利益率とほぼ同水準に近づいた。 - 研究開発投資
携帯電話メーカーの研究開発費は、売上高に占める割合が最も高く、平均約10%で、家電メーカーの3%及びPC メーカーの5%を上回っている。また、華為の研究開発費は、売上高に占める割合が10.1%に達しており、ノキアより僅かに2.6%低いが、モトローラより0.3%高い。これにより、中国携帯電話メーカーを代表する華為、中興は世界先端レベルの開発研究資金を投入しているのである。 - 一人当りの売上高
ノキアの一人当りの売上高は、71.4 万米ドル、モトローラは46 万米ドルである。華為と中興は、それぞれ12.7 万米ドル、10.8 万米ドルとなっている。
4)家電メーカー:研究開発への投資比率の格差が大きい
- 売上高
中国家電トップ3 の海爾、TCL 、上広電の2005 年の売上は、129.9 億米ドル、65.2 億米ドル、36.6 億米ドルである。 一方、松下は790 億米ドル、ソニーは663.3 億米ドルと中国勢とは大きな差がある。中国最大手の海爾は松下の販売金額の15.6%しかないことで、中国家電メーカーは事業規模が海外勢と肩を並べることができずグローバルな競争力の点ではまだ程遠い。
- 営業利益率
松下とソニーの2005 年の営業利益率は、それぞれ29.9%、23.5%である。しかし、海爾は僅か1.3%の営業利益率しかない。この数字は世界企業より遥かに小さい。 - 研究開発投資
海爾、TCL 、上広電の2004 年の研究開発費は、5.7 億米ドル、2.4 億米ドル、1.3 億米ドルとなっており、松下の52.7 億米ドルとソニーの46.8 億米ドルに比べて約10 倍の差である。 - 一人当りの売上高
ソニーの一人当り売上高は44 万米ドルに達している。松下と海爾は約24 万米ドルとほぼ同じ水準。これは、一部の中国勢は競争力が高まっていることを示している。TCL の一人当り売上高は9.6 万米ドルである。
5)IC メーカー:会社規模の格差が10 倍以上
- IC 製造
2005 年の中国IC 製造メーカー上位10 社の売上合計は26.8 億米ドルで、世界半導体最大手インテルの売上の14 分の1 しかない。中国地場の半導体メーカーのうち、中芯国際(SMIC )一社を除いて、その他の半導体メーカーの売上高が10 億米ドル以下である。それでもSMIC の2005 年の売上は、14.6 億米ドルとインテルの26 分の1 である。
- IC 設計(デザインハウス)
世界IC 設計(デザインハウス)上位10 社の中に中国勢はランキングされていない。中国のIC デザインハウス、トップ10 の総売上は6.45 億米ドルである。世界のIC デザインハウスの第10 位でも11 億米ドルの売上高に達している。中国最大手のIC デザインハウスである珠海炬力は、1.57 億米ドルの売上であるが、世界最大手のデザインハウス、クアルコムの売上の22 分の1 でしかない。
セミコンダクタポータルのコンテンツパートナー、アレグロ インフォメーション・インク(以下アレグロ)による、中国のエレクトロニクス・半導体・液晶分野のマーケット情報です。アレグロは、同社独自の調査及び、中国国家統計局、CCID、中国電子報、経済参考報、国際金融報などから得たフレッシュな情報をベースに、特に中国のIT、エレクトロニクス、半導体・液晶関連の情報収集・提供、分析、調査を行っています。今回、提供したのは、同社の月刊レポート「中国レポート:Electronics and Semiconductor China」の2006年11月号からの一部抜粋です。