デバイス試作・プロセス開発のファウンドリが合併で規模拡大へ
米国の半導体コンソシアムSEMATECHの関連会社の一つで試作ファウンドリのATDF社と、Cypress Semiconductor 社から2007年3月にスピンオフして独立した試作ファウンドリになったSVTC Technologies社が合弁し、一つの大きな試作専門ファウンドリ企業を形成することになった。
共に似たような試作開発向けのファウンドリ企業だけに設備を共有できるというメリットを享受できるようになる。なお、合併手続きは2007年末になる予定だ。
大手の半導体メーカーだと、新しいデバイスやプロセスを社内で試作、開発することができるが、中小の半導体メーカーではそれができない。シリコンバレーのファブレスやIPベンダーは実際にシリコンに回路を焼き付けて動作確認する必要がある。そのための開発向けファウンドリである。加えて、プロセス開発企業も潜在顧客である。「新デバイスの開発や新材料のキャラクタライゼーション、ユニットプロセスの開発などに向いている」と、ATDF社社長兼ゼネラルマネジャーのDave Anderson氏はそのメリットを語る。
例えば、MOSトランジスタのシリコン表面に超格子を作り、水平方向には電子が動きやすく、垂直方向には動きにくい、という量子力学の性質を利用した新しいシリコンMOSトランジスタを提案したMears Technology社CEOのRobert Mears氏は、ATDFの設備を使って新しいMOSトランジスタを試作したという。
試作工場の規模は、ATDFが60,000平方フィート、SVTCは30,000平方フィートである。設備は200mmウェーハラインを基本とするが、300mmの能力も備える予定だ。もともとATDFはSEMATECHの子会社であるから、Low-k絶縁膜/Cu配線などの研究開発を基本としてきたが、SVTCは量産を念頭に置いたAl配線をベースにした開発を中心としてきた。試作開発という点で多少のダブり感はあるものの、ともに出発点が違うためお互いに補うことができる、とAnderson氏は言う。エンジニアはそれぞれ40名程度ずつであり合計で80名程度だとしている。
狙う顧客は大手のIDM(総合デバイスメーカー)と中小の半導体ベンチャーをほどよくバランスさせているという。ATDFは大手のプロジェクトベースでサービスを行い、技術力のあるベンチャーはアイデアを実証できるというメリットがある。High-k材料やメタルゲートなどの新しい材料の評価やASICの開発を85nmプロセスを基本にしてやってきたが、今は45nmプロセスにも対応する予定だとしている。
テストウェーハを製造して装置メーカーへ売ることもある。材料をウェーハ全面に一様に成膜したものや、さまざまなライン&スペースのパターンを描いたウェーハに成膜したものなど、特性評価するためのウェーハを試作する。
顧客となるIDMの方針次第だが、試作と量産で異なるプロセスになってしまわないように調整する。IDMを通して量産時に利用するTSMCなどのファウンドリともプロセスマッチングを考えながら作業するとしている。その際、標準プロダクションツールを使う。
顧客には米国のTexas Instruments社やSEMATECH社、などの米国企業だけではなく、台湾や韓国、欧州にもいる。日本のメーカーではエルピーダと共同でプロセス開発を行っている。他にも企業名は言えないが合計6社の日本企業と共同でプロセス開発を行っているという。