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科学技術の振興および成果の社会への還元にむけて制度改革提案

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総合科学技術会議に提案

 2006年12月25日に開催された、総合科学技術会議において、科学技術の振興および成果の社会への還元にむけた制度改革案が提出された。

 科学技術の振興に当たっては、人材の活発な交流、研究活動の円滑な実施、研究成果の社会への還元などを支える制度的な環境を整備することが、科学技術に対する人的・物的投資の効果を高める重要な鍵との認識において、総合科学技術会議は、「円滑な科学技術活動と成果還元に向けた制度・運用上の隘路の解消」について取り組むと共に、「イノベーション創出総合戦略」においてイノベーションの創出に向け制度改革を推進することをミッションとしている。


科学技術の振興のための制度改革


 今回、議論された制度改革案では、次の7つの課題に焦点を絞った。
1)優秀な外国人研究者を日本に惹きつける制度の実現
2)研究者の流動性を高めるための環境整備
3)研究費の公正で効率的な使用の技術
4)研究支援の強化
5)女性研究者の活躍を拡大するための環境整備
6)治験を含む臨床研究の総合的推進
7)国民の科学技術に対する理解の増進

1)優秀な外国人研究者を日本に惹きつける制度の実現
<問題と背景>
 わが国の総研究者数に占める外国人研究者の割合はわずか1.3%であり、総人口に占める外国人割合(1.5%)よりも低い。また、国立大学の外国人教員数の割合は、平成13年度の2.7%から、平成17年度では2.5%と漸減傾向にある。日本が世界でもっとも魅力的な制度を作ることを目指す時期に来ており、外国人研究者を日本に惹きつけるためには、入国管理制度や査証制度、住居、医療保険、子弟教育等、様々な問題を解決する必要がある。

<制度改革>


  • 研究者の在留期間の上限5年の対象となる期間の範囲の拡大

  • 研究者の在留資格にかかわる手続きの簡素化(対面申請/受領→郵送、電子申請へ)

  • 外国人留学生の大学および大学院における「専攻」と就職後の「業種」「職種」の一致要件の緩和

  • 学位取得者の就職活動のための滞在期間の一層の延長(現行の180日から諸外国並の1年に)

  • 研究者の永住許可要件の緩和(優秀なケースでは在留実績3年でも永住認可へ)

  • 研究者の親への在留資格付与

  • 研究者への数次有効短期滞在査証の発給

  • 二国間租税条約締結の拡大(現行の主要国56カ国との締結から拡大へ)

  • 在留資格「企業内転勤」における活動範囲等の見直し

  • 留学生の資格外活動の緩和

  • 外国人研究者に対する社会保障制度の改善

2)研究者の流動性を高めるための環境整備
<問題と背景>
 大学教授職の生涯移動平均回数を内外で比較すると、諸外国では1.5〜3.5回であるのに対し、日本は0.78回と半分以下(1993年調査)。最近国内で行われた同様の調査でも、高等教育機関における研究者の生涯移動回数は0.99回で依然として流動性が低い。移動の際に経済的に問題となる主要な制度は、年金と退職金である。

<制度改革>


  • 移動者に不利益を生じさせない新たな年金制度の構築(官民移動時の通算措置の確保)

  • 外国人研究者に対する社会保障制度の改善

  • 退職金前払い制度の広範囲な導入

  • 年俸制の拡充

  • インターンシップの拡充

  • 大学・独法研究者の兼業、出向、研究休暇制度の整備・活用

3)研究費の公正で効率的な使用の技術
<問題と背景>
 新たな知を探求する研究活動においては、研究計画時において予想しない事態が種々生じうるため、予算使用の制度が硬直的すぎると効果的な研究推進が妨げられる可能性がある。研究開発現場において、よりよい資金利用環境を形成し、限りある国の予算を有効活用することにより、さらに優れた研究成果を導き出すことが、科学技術を推進していく上で、非常に重要である。

<制度改革>


  • 繰越明許費制度の活用促進および周知徹底(科研費の繰越認可の周知)

  • 研究費の交付時期の早期化

  • 公正で透明な資金管理体制の確立

4)研究支援の強化
<問題と背景>
 日本の研究者一人当たりの研究支援者数は0.26人であり、欧州の3分の1程度という国際的に見てもきわめて低い水準になっている。しかも大学等に限ればその比率がさらに半分程度しかない。そのため、特に大学等の研究者を中心に研究以外の雑務に追われ、研究に専念できないという不満の声が多く挙がっている。

<制度改革>


  • 研究支援体制の強化(研究者と研究支援者との職務上の役割期待の明確化)

  • 競争的資金の間接経費の充当目標の早期達成(競争的資金の間接経費の30%早期達成)

  • 複数の機関の協力および民間活力の活用

5)女性研究者の活躍を拡大するための環境整備
<問題と背景>
 諸外国に比べ、夫は外で働き、妻は家を守るという役割分担意識が根強く、女性が政治および経済活動に参加し、意思決定に参加できるかどうかを示す指標である(GEM)が75カ国中42位と非常に低い。日本の研究者に占める女性研究者の比率は11.9%として依然として国際的に見ると低い。(米32.5%、仏27.5%、英26.0%)

<制度改革>


  • 有期雇用者の育児休業取得条件の緩和

  • 育児期間中の勤務時間の短縮等の措置の拡充

  • 採用や競争的資金の募集等における出産・育児期間への配慮(年齢制限の緩和など)

  • 出産・育児を考慮した業績評価および任用期間の延長

  • 次世代育成支援対策推進法による行動計画の公表

6)治験を含む臨床研究の総合的推進
<問題と背景>
 日本は世界の中でも自前で医薬品開発のできる数少ない国の一つでありながら、臨床研究を行っている大学病院および病院は非常に研究が進みにくい状況にある。国家研究開発費の配分が臨床研究より基礎研究に傾斜しており、ヘルスケア関連の国家研究開発予算の国際比較では、日本976百万ドルに対して米24,440百万ドル、英1,635百万ドル、仏1,011百万ドル、独728百万ドルとなっている。

<制度改革>


  • 臨床研究を推進するための制度的枠組みの整備

  • 独法医薬品医療機器総合機構の承認審査の迅速化・効率化

  • 国際共同治験の推進

  • 治験の情報提供活動の規制緩和

  • 被験者に対するインセンティブの付与

7)国民の科学技術に対する理解の増進
<問題と背景>
 成人の科学技術に関する基礎的概念の理解度について、日本は欧米諸国等25カ国の中で、22位と下位に属している。科学技術離れが大きな問題となっている。

<制度改革>


  • 理解増進活動全体の体系化・組織化

  • 大学や研究機関における理解増進活動の恒常化

  • 競争的資金制度における理解増進活動の充実

  • 研究者コミュニティにおける理解増進活動の位置づけの向上


参照資料:科学技術の振興および成果の社会への還元に向けた制度改革について(案)

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