セミコンポータル
半導体・FPD・液晶・製造装置・材料・設計のポータルサイト

パナソニック、三洋のエナジー事業にシナジーの中核を据える

|

先週、パナソニックと三洋電機は、パナソニックによる三洋の買収について最終合意に達したことを発表した。パナソニックは一株あたり131円で公開買い付けを実施し、今年度末までに三洋を子会社化する。

両社は互いの事業のシナジー効果を期待するが、その中核はエナジー事業であり、この事業を中心に1,000億円の投資を計画している。


会見は大阪、東京とはテレビ双方向中継

会見は大阪、東京とはテレビ双方向中継


なぜ今三洋を買収するのか――パナソニックの大坪文雄社長は「今年度下期に急速に進展した歴史的な不況により、電機業界も生き残りをかける大変な状況にある。またエレクトロニクス産業にとって、新興市場の存在感が高まってきたことにより、携帯パソコンなどの低価格化へのシフトという大きな波が不況と同時に押し寄せ、市場の構造変化への対応を迫っている。このような見通しが不透明な中でなぜ、今動くのか」とおそらく多くの関係者が抱いたであろう疑問を自ら代弁し、「大きな変化を迎えたときだからこそ、経営体質を強化する、成長へ向けた果敢なアクションが必要。不況回復期に一気に打ってでることのできる基盤を作ることが重要」と理由付けた。

一株131円は安すぎる、あるいは高すぎると見方の分かれるところであった。また、金融3社が3年前に三洋に3,000億円を出資したときは一株あたり約70 円であった。その間に三洋の価値が2倍近くにあがったのか。パナソニックの河井英明執行役員は、「デューデリジェンスを通じて、三洋単独での価値はそれほど高いものではなかったが、両社のシナジー効果は高いということを相当織り込んでおり、また、過去からのみでなく、将来からの”評価”も入っている。その点を理解して欲しい」と語った。

両社は「シナジー効果」を強調した。そのシナジーの中核はエナジー事業である。両社のシナジー効果が2012年には営業利益として800億円という形で現れることを見込む。その半分はエナジー事業から見込んでおり、残りの半分はそのほかの事業と経営体質強化から見込んでいるので、実際の事業からの貢献ではエナジー事業が圧倒的。大坪社長はさらに、太陽電池、ハイブリッドカー用電池などは長期的にさらに大きな効果が見込めると強調した。

両社のシナジーを生むための前向きの投資として1000億円を予定するが、中心はエナジー事業。三洋単独では十分にできない太陽電池、自動車向けリチウム電池への追加投資となる。

パナソニックは2009年までのGP3(3ヵ年)中期計画で4つの戦略事業−Appliance solution(生活快適実現事業)、Black-box Devices (半導体・デバイス事業), Car Electronics (カーエレクトロニクス事業)および Digital AV Networks (デジタルAV 事業)−−の強化を、ABCDカルテット推進という標語で表したが、今回の三洋の買収で、エナジー事業を加え、ABCDEクインテットとした。

エナジー事業では、創エネとして三洋の太陽電池とパナソニックの燃料電池を中核に据え、蓄エネでは両社の2次電池で民生、車載、据置き(家庭用のバックアップなど)を幅広くカバー、それにパナソニックが持つ省エネ技術を加え、家やビルを丸ごとエネルギー・マネージメントするトータルエナジーソリューションを提供する他に類のない企業グループを目指すという。

「電機メーカーにとって、今の足元は大変厳しい。だからこそ、グローバルに立ち向かう。家丸ごと、ビル丸ごとを提供できる唯一無二の企業として価値の最大化を目指す」と大坪社長。ただし、今回の買収交渉は世界的な景気後退とは直接関係なく、もっと前からスタートしていたが、「今の状況になると互いの強みのシナジーを活かせる選択だった」と大坪社長は自賛した。

とはいえ、かなり重複があることは事実。両社長とも、詳細な方針はコラボレーション委員会での検討を待つとし、重複の問題よりシナジー効果を強調した。「競合はあるが、地域、流通などを区分するなど、十分対応できる。むしろシナジーの方が大切」と三洋の佐野精一郎社長は言う。

ただし、シナジー効果があまり期待できない事業で、かつ厳しい業績にあえいでいる半導体、白物などについては、「三洋として構造改革をやりきって行きたい」(佐野社長)。雇用についても、「事業があっての雇用と認識する」として、パナソニックに救援を仰ぐことなく、独自で改革を完遂する意思を示した。

大坪社長は、「コラボ委員会の活動の中で、”重複して”シナジー効果のないものをはっきり見据えて、削除すべきは削除し、一方でシナジーに”変換”できるものを見極める」と語った。


(2008/12/24 セミコンポータル編集室)

月別アーカイブ