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携帯電話を安く作るモジュール手法をインフィニオンが公開

携帯電話を安く作る方法についてドイツのインフィニオンテクノロジーズ社がマザーボード基板の上に搭載するPCBのモジュール手法を進めていることをエレクトロニカ2008と並行に開催されたWireless Congress 2008で明らかにした。講演したシニアマネージャーのThomas Tan氏によると、ローエンド携帯電話で最もコストがかかる部分はBOMだということで、BOMコストをいかに下げるかに腐心していることを述べた。

結論は、この手法を使うことで最終的な携帯電話の価格を6万円ほども下げることができるというもの。巨大な市場が控えている中国、インドをはじめとする発展途上国市場を狙うのには打ってつけという訳だ。これまでも低価格商品として、アナログとデジタルのデュアルバンドの電話を設計してきたが、RFとアナログベースバンド、デジタルベースバンド、パワーマネージメンントの4チップをシングルチップ化したXMM1010をベースにする。2007年に発売されたXMM1010を使ったプリント基板のプラットフォームは大きさが4cm2しかない。このプラットフォーム(モジュール)に使うシングルチップのベースバンドICがX-GOLD101である。このチップはこれまで7000万個を世界60カ国、20社の通信業者に使われている。

この4層配線のプリント基板モジュールが4cm2しかないのは従来の6層で5cm2よりはましになったが、これでも十分ではない。XMM1010のさらなる低コスト化には、モデム系のモジュールと電話機としての回路基板とを分けた。チップモジュールは複雑なため6層配線を使うものの、モジュール面積は1.9×2.7cm2しかなく、コストが0.27ドルで済んだ。電話のマザーボードは面積が9.6×4.1cm2と大きいが配線は2層ですませたため、コストは0.48ドルしかかからない。従来の4層/4cm2プリント基板は1.6ドルしたため、今回のモジュール手法を使うと0.75ドルと0.85ドルも安くなった。モデム関係回路の部品点数は50個以下ですみ、BOMコストが低減する。


XMM1010 Chip Module + Phone Motherboard


この手法のメリットは低コストだけではない。モジュールを取り換えるとちょっとした仕様変更ができるため、製造期間が5~10日早くなり、開発期間もぐっと減るというメリットもある。従来の電話機メーカーは、モジュール方式ではなかったため、低価格携帯の生産ラインでさえも6層配線のプリント基板を扱う実装機を生産ラインに投資しなくてはならなかった。今回のモジュール分離方式だと電話機ラインのところは裏表両面の2層配線しかいらないためハイテク投資は必要ない。

さらに、ベースバンドモジュールの段階でキャリブレーションするため、電話機の段階でのベースバンド調整は要らなくなる。これも電話機メーカーの負担を軽減する。これは、これまで30種類のリファレンスデザインを校正し、そのデータを蓄積しているためである。

このモジュールを電話機のプリント基板に搭載したものが下の写真である。モジュールの裏面の端子が多数みられるが、大きなパッドは接地のパッドで周辺の小さなパッドが信号ラインのパッドである。モジュールを使って、価格13ドルの携帯電話機の例を見せた。電池込みで59.4gと軽い。


XMM1010 Chip Module搭載
XMM1010 Chip Module搭載


このモジュール手法は拡張性もあり、基本構成に積和演算などを分担するコプロセッサを追加すればマルチメディア機能をつけることもできる。ローエンド版向けにフラッシュメモリーを搭載する場合でもピン数を減らすため、シリアルデータの入出力でやり取りする。このシリアルフラッシュを搭載するモジュールも来年には出荷するとしている。

ただし、GSM方式だけのモデムであるため、このままでは3Gへは対応できない。発展途上国でも3Gが要求されるようになれば設計し直す考えだ。ただし、ボード面積と配線層数が増えるため、根本から見直すことになるだろうとTan氏は語る。


(2008/11/14 セミコンポータル編集室)

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