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「医療ヘルスケア機器を携帯サイズに」―アナデバのヘルスケア戦略

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「医療ヘルスケア機器を携帯サイズに」。アナログ・デバイセズ社はこれからの医療・健康診断(ヘルスケア)機器を携帯サイズにするためのチップ開発に注力することを明らかにした。5年前に、いろいろな組織から集めながら本業の片手間としてスタートしたヘルスケアICの開発チームを、本年になり専業のチームに昇格させた。製品ポートフォリオを拡げるため7月に入り、医療機器向けのA-Dコンバータを2品種発売した。

2007年度における、医用IC全体の潜在市場は約26億ドルといわれており、この内、同社がターゲットとするアナログIC市場は9億4,000万ドルになると見積もられている。

ヘルスケア市場において、実際アナログ・デバイセズ社の医療用ICの売上高年率平均は15%という高い伸び率を見せている。

ADIの医用ICの売上高の伸び


では、今なぜヘルスケアに同社が力を入れるのか?なぜ携帯サイズを狙うのか?
現在、海外市場だけではなく日本国内においても、後期高齢者医療問題、医師・看護師不足、病院収容人員不足、が大きな社会問題となっている。血圧や体温、血糖値などを自宅で誰でも常に連続的に測定管理、さらには監視できる携帯型のヘルスケア機器ができれば、上に述べたような問題は一挙に解決できる。患者は医師の判断が必要なときだけ病院へ行けばよい。そのためには小型、低コスト、低消費電力、使いやすさといったヘルスケア機器が必要になる。それを実現するカギとなるIC市場にアナログ・デバイスは目をつけた。

同社の具体的なブレークスルー技術として、2006年に発表したPulSAR(R) 16ビットA-Dコンバータ(ADC)の「AD7980」がある。小型パッケージ・サイズ(3mm角)と低消費電力化(1Mサンプル/秒で7mW、10kサンプル/秒で0.07mW)を実現した。

消費電力の低減を実現できたことにより、携帯サイズの医療用ヘルスケア機器などへの応用が広がった。例えば、超音波診断装置向けに8チャンネルのA-Dコンバータをシングルチップに集積したICの開発により、2007年11月に初の携帯型超音波診断装置として、医師のポケットに入るサイズとなった。(下記写真右)

携帯型超音波診断装置


このような医療機器の携帯サイズ化は医療現場、患者側の双方に大きなメリットとなる。患者側としては、装着が楽になり、今までと違い大きな機器を持って移動する必要がなくなる。また在宅での常時チェックが可能になり、血圧などこれまでは単発でしか図れなかった健康管理数値を常時取りつづけることが可能になり、より正確に測ることができ、それが異常の早期発見につながる。また、在宅からインターネットを介して医者にデータを送信し、状態を診断してもらうなど、通院の手間を省くことができる。病院は在宅での常時監視・計測により、送られてきたデータを元に、重病な人だけを見極めて診察を優先することができる。このシステムが普及・浸透することにより医者不足の解消、病院不足の解消、また健康管理もスムーズにできるようになり、高齢者の方の不安を取り除き、これからの高齢化社会へ大きく貢献することを期待する。

今回は在宅健康管理向けではなく病院側での医療機器にも向けた製品、16ビットで10Mサンプル/秒のPulSAR A-Dコンバータ「AD7626」と、低ノイズで24ビットのデルタシグマ型A-Dコンバータ「AD7190」を発売した。

「AD7626」は、10Mサンプル/秒と高速にしたことで、MRI(磁気共鳴画像装置)やCTスキャナーなどX線被爆量を減らせるようになる。外形5mm角の小型32ピンQFNパッケージに収容し、10Mサンプル/秒での消費電力は130mWとこれまでのものよりも小さい。X線を利用する撮像装置では16ビットという分解能と高速化が鮮明な画像作りに欠かせない。1000個購入時の単価は34ドル。

「AD7190」は、入力電圧40mV〜5Vに渡り、ノイズが7nVと低いA-Dコンバータで、分解能が24ビットと高い。きわめて微弱な信号を検出、処理するのに向いたICで、DCから4.8kHzまでの低ノイズ、低ドリフトを実現するためのプログラマブルゲインアンプを内蔵するほか、発振器、温度センサー、差動入力チャンネルなどを備えている。現在はサンプル出荷中で、量産開始は2008年11月の予定。

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