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汎用品+アルファで日本市場へ乗り出す台湾MediaTek社

台湾のMediaTek社は、10月1日、日本法人を設立、日本市場への本格参入を表明した。
CD-ROMドライブやDVDドライブ/プレイヤーで実績のあるこのファブレス企業は、1997年設立以来、ずっと右肩上がりの成長を続けてきた。2006年は対前年比14%増の16億900万米ドルだが、2007年は6月までに10億ドルを売り上げており、通常年の後半に伸びることを考慮すると20億ドルを越えることは間違いないと同社董事長(会長)の蔡明介氏(写真)は見ている。
日本市場で狙う分野は、Blu-Rayなどの新しいストレージ、デジタルカメラ、HDTV、GPSの四つである。

MediaTek社 蔡明介董事長(会長)


日本法人を設立できた最大の要因は、デジタルカメラの画像処理チップに強いニューコアテクノロジー社を買収できたことだという。ニューコアテクノロジー社の製品は、小さなファイルサイズでHD画質を提供するという特徴を持つ。日本法人のメディアテックジャパンのジェネラルマネージャーの伊藤治氏、取締役会副会長の渡辺誠一郎氏は共にニューコアテクノロジーからの人材だ。

米国ファブレス半導体協会の調べによるとMediaTek社は、世界ファブレス半導体メーカーの第8位に位置し、XilinxとAlteraの間にいるという。創業からしばらくは光ストレージで稼いできた。MediaTekのチップセットと、三洋電機の光ピックアップさえ手に入れれば誰でもCD-ROMドライブを作れる、と言われた。CD-ROMドライブが労賃の安い国でも生産できるようになった要因の一つがこのMediaTekのチップだと、東京大学21世紀COEものづくり経営研究センターの小川紘一氏は分析する。

CD-ROMやDVD装置の市場が飽和してくると、MediaTek社は、ワイヤレスとデジタル家電の領域に進出する。いまや全社売り上げの半分程度が、携帯電話のベースバンドチップをはじめとするワイヤレス分野だと、蔡明介氏は言う。ワイヤレス分野を伸ばすためにさまざまな企業を買収してきたが、この9月にも米Analog Devices社の携帯電話向けのRFとベースバンドチップ部門を買収することを決めた(http://phx.corporate-ir.net/phoenix.zhtml?c=95455&p=irol-newsArticle&ID=1049499&highlight=)。

「デジタル家電分野でやはり市場を支配している日本」(蔡氏)への進出によりさらに売り上げを伸ばしていく。Blu-RayやHDTVでは力を入れていける市場だと見ている。

これまで光ストレージなど、誰でも使える「超標準品」チップという同社の戦略は日本市場でも基本的には変わらない。同社の基本汎用品をプラットフォームとして、日本の電子機器メーカーが付加価値をそれに足していく、という戦略である。日本の電子機器メーカーは、自分の得意な機能やノウハウの開発に集中でき、それをチップに付加価値として加え、独自性を出す。MediaTekは基本的には付加価値部分を顧客に委ねるが、要求があれば自分らも開発すると言う。日本には新横浜に本社を置くが、研究開発部門を秋葉原に置く。両方のオフィスを合わせてすでに15名を採用している。

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