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トヨタが半導体ICチップのトレーサビリティID付与のメリットを強調

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トヨタ自動車は、半導体ICチップがいつどこで生産されたウェーハのどの部分から切り出したチップなのかを知るためにトレーサビリティIDを付与する活動に積極的に参加していることを、12月18日東京で開催されたSPIフォーラム「車載半導体、品質とトレーサビリティのインパクト」で明らかにした。自動車産業は半導体チップを売りっぱなしで済むという産業では決してない。万が一の事故に備え、いつどこで作られたチップなのかトレースしなければならない。

自動車は万が一、リコールが起こるような事態があれば即その事実を公開し、影響が他のクルマに及ばないように即刻手を打たなければならない産業である。トレーサビリティIDを付与しておけば、リコールの原因が半導体チップの故障なら、製造チップを特定し、同じロットの他のチップのチェックに極めて有効な手段といえる。素早く対応し、被害を最小に食い止めなければならない。トレーサビリティIDは車載用チップには欠かせない。

SPIフォーラムで講演した、トヨタ自動車第3電子開発部プロセス先行開発室グループ長の戸田敬二氏は、米調査会社Strategy Analytics社の需要予測を引用し、2004年から2012年までの8年間で車載半導体の需要は2倍になるとしている。ちなみに車両そのものの需要は8年間で3割しか増えないため、車両が機械から半導体に置き換わっていくといえる。トヨタでは、半導体を大量に使うハイブリッド仕様車を次々に出している。プリウスから始まったハイブリッド仕様車は、ハリアーやカムリ、アルファード、クラウン、レクサスと拡大している。


レクサスLS600hハイブリッドカー(トヨタのホームページより)

レクサスLS600hハイブリッドカー(トヨタのホームページより)


最高級車であるレクサスのLS600hハイブリッドカーには6インチウェーハに換算して1台当たり2.6枚分の半導体が使われているという。プリウスが0.96枚だから、いかに多いかがわかる。そのうち、モーターをドライブするためのハイブリッド車パワーモジュールに集積するIGBTとダイオードには6インチウェーハ分のシリコンをまるまる使う。逆にいえば、それ以外のマイコンやASIC、メモリーなどでさえ、1.6枚分のシリコンを使っていることになる。これだけ大量のシリコンを使っているからこそ、トヨタはトレーサビリティIDの付与に熱心で、万が一の事故に備えようという危機管理能力が高いことを示している。

トヨタはまず内製のICにトレーサビリティ仕様を定めている。パッケージには、マイクロQRコード17セル×17セルを使い、18英数字の情報を記載する。その内容は、品種名を5~6文字、ロット番号を4文字、ウェーハ番号を2文字、チップの座標位置をx,yそれぞれ2文字ずつ、予備2文字と、合計18文字からなる。この情報を2次元バーコードにして2mm角程度の大きさで刻印する。

また、Siチップにも付与する方法についても述べた。レーザーでマーキングしたり、インクジェット法によってつける場合がある。レーザーマーキングはチップ上のあいたスペースにレーザーで刻印する。インクジェット法では、ポリイミドパッシベーション膜上に金属粒子を含むインクで2次元バーコードを形成する。2次元バーコード内のセルサイズは1辺が50μm、バーコードサイズは750μm角程度だ。チップをプラスチックモールド樹脂で覆っても2次元バーコードが金属粒子でできているためX線で観測できる。

トヨタは製品特性分布とチップの場所との関係から良品率の向上や検査の適正化を図ることで品質の向上が図れるというメリットもあるとしている。トレーサビリティIDを付与することでコストアップになることに対して、半導体チップを使う自動車メーカーとしてトヨタは、価格をゼロにして付与することを要求しているわけでは必ずしもない、工程管理を厳しくできることから生産性の向上といったメリットが明らかになってきたため、コストアップ分を吸収できる、という。さらに万が一のリコールを未然に防ぐという役割もあるため、そのメリットを見込んだ価格上昇を理解できるとしている。


(2008/12/18 セミコンポータル編集室)

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