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三洋、薄型太陽電池で新日本石油と協業、HITのパートナーはパナソニック

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三洋電機と新日本石油は薄型太陽電池の生産、販売の合弁会社を設立したと発表した。合弁会社は東京に本社を置く三洋ENEOSソーラー。資本金2億円で、出資比率は均等に50%。三洋が社長を新日石が副社長を派遣する。

薄膜太陽電池で合弁会社を設立した新日本石油の西尾進路社長(左)と三洋電機の佐野精一郎社長
薄膜太陽電池で合弁会社を設立した新日本石油の西尾進路社長(左)と三洋電機の佐野精一郎社長

三洋はこれまで独自開発の結晶シリコンとアモルファスシリコンのハイブリッド構造を持つHIT太陽電池を展開してきた。発電所向けなど大規模な太陽光発電に適した薄膜太陽電池のパートナーとしては新日本石油と組み、主に民生用途に適するHITについては今年度内に三洋と合併するパナソニックと協力することになる。

今回の合弁会社は2010年度内に200億円を投じて発電効率10%の80MW規模のマザープラントを三洋の薄膜開発センターがある岐阜県内に建設、さらに2015年度までにマザープラントをベースに1GW規模、2020年度には2GWの生産拠点を建設する予定という。1GW以降の量産プラントについては「国内外、どこでもよい。一極集中するか、需要のある例えば中近東など、需要のあるところに作るか、いつ展開すべきか、市場動向を見て新会社で詰めてゆく」と三洋の佐野精一郎社長は語る。

三洋のHIT太陽電池は実験室レベルで22.3%、量産品で19.7%の変換効率を達成しているという。三洋の太陽電池技術開発は1975年のアモルファス太陽電池から始まり、途中で事業としてはハイブリッドのHIT太陽電池に分岐したが、薄膜シリコン太陽電池についても研究開発を継続、モジュールとして実験室レベルでは10%を達成しているという。また薄膜太陽電池と同じプロセスを用いるHIT太陽電池を年産300MW以上生産しており、本格的な薄膜太陽電池への取組みにあたって「効率、生産技術、実績、すべてにおいて他社を圧倒している」と三洋の佐野社長はその強みを強調した。

薄膜太陽電池は石油精製・販売から総合エネルギープロバイダーを目指す新日本石油にとっても、石油事業で培ったハンドリング技術は直接、薄膜電池の材料であるシラン・ガスの供給に活用でき、また、中東など産油国とのパイプをインフラ向けの薄膜太陽電池の販売に活用できる。この不況下で新規事業を立ち上げるにあたっても、「今の景気がどうだというよりも、この事業は2020年、2050年に続く事業と考えている。景気はその間に回復してくるはずで、特段懸念してはいない」と新日本石油社長の西尾進路氏は述べる。

薄膜太陽電池については、多くの新規参入メーカーが生産計画を発表しているが、「ターンキーで設備を入れてスタートしても、難しい」と三洋の研究開発本部長の津田信哉氏は指摘する。「固まった技術であればよいが、この分野は変化し、成長してゆく分野。我々は30年培った技術の蓄積があり、その技術力が効いてくる」と自信をみせた。


(2009/01/27 セミコンポータル編集室)

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