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シャープのHDD無しのブルーレイ内蔵テレビ、吉と出るか、凶と出るか

シャープは、ブルーレイ録画機内蔵の液晶テレビAQUOS DXシリーズ6サイズ16機種を発表した。このシリーズは、あえてハードディスクドライブ(HDD)を内蔵せず、ブルーレイ録画機能のみを搭載することで差別化を図った。同社代表取締役社長兼COOの片山幹雄氏は、「AQUOSのメインのシリーズとする。AQUOSにはブルーレイがついているという形で頑張りたい」と語り、ともすれば価格競争に陥るテレビ市場の中で、“世界初“を謳うブルーレイ搭載で差別化を図る考えである。

AQUOS DXシリーズ


これまでのブルーレイ録再機だと、ディスク一枚あたり標準モードで録画時間が4時間20分でHDD内蔵なしでは実用上使いにくかった。これに対して、シャープは標準モードの5倍の録画時間を可能とするMPEG-4 AVC/H.264トランスコーダー方式を採用、HDDを内蔵しなくてもディスク当たりの録画時間をハイビジョンで21時間と長くすることでHDDを取り去った。すなわち放送用のMPEG-2からこのH.264方式にコーディング変換をすることで圧縮率を高めた。この処理にはカナダのViXS Systems社のXcode3000 MPEG4 AVC (MPEG4 Part 10/H.264) トランスコーダー/エンコーダー/デコーダー・システムLSIを採用している。

「将来的にブルーレイ・テレビにHDD搭載は考えていない。ブルーレイ・ディスクの価格が下がって来て、(ディスクを使うことで)容量が無限になる。しかもトランスコーダー方式でディスク1枚に20時間以上記録できる。かなり市場に食い込める」と杉野道幸AV副事業部長は主張する。


シャープはダビング10を活用して、リビングのブルーレイ録画機でダビングしたディスクをブリッジ・メディアとして各部屋のテレビで使うような使い方を提案している。

ブルーレイ内蔵テレビは、国内11月、米国は年内、欧州アジアは来年に入ってからと全世界に展開する。北米については「プレーヤー需要にあわせて使い勝手のよさで差別化する」(杉野道幸AV副事業部長)方針だ。

シャープはレーザーから液晶、ブルーレイ液晶テレビの完成品まで垂直統合のビジネス・モデルの強みを強調する。今年3月にブルーレイの2層ディスクに6倍速記録を可能とする250mWの出力の青紫レーザーの開発を発表し、4月から量産にかかっている。6倍速でも50GBのブルーレイ・ディスクにフルに書き込むためには約一時間かかることから、さらに同社では、高出力化を進める方針で、今年中には2層8倍速記録を可能とする300mW出力、2009年中には多層のディスクに対応した350mWの高出力レーザーを開発するというロードマップを描いている。このようなブルーレイ関連のデバイスでもグローバルな展開をねらっている。


(2008/10/16 セミコンポータル編集室)

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