セミコンポータル
半導体・FPD・液晶・製造装置・材料・設計のポータルサイト

打つ手なし、DRAM値上がり待つのみのエルピーダ

|

エルピーダメモリの2007年10-12月期(2007年度第3四半期)の決算が発表された。それによると、この期の売上高は940億円と前期比-15.7%の減収となり、前年同期比でみると、-34.1%の減収となった。DRAMビジネスの本流部分である営業損益は、89億円の赤字に転落した。前期が61億円の黒字、前年同期が273億円の黒字であった。

エルピーダ決算


2005年第1四半期以来の赤字に逆戻りしたわけだが、DRAMの単価が極端に下がってしまったことが赤字転落の大きな原因だとしている。データレート667MbpsのDDR2方式512Mビットチップは、昨年1月に6ドル強の単価であったが、これが7月には2.3ドル程度に下落、11-12月には1ドルを切る状態であった。今年になり1月28日現在で1.09ドルまで回復したが、これでも安い。一方の同じデータレートの1Gビット製品は同日現在、2.22ドルとこれもかなり安いままに張り付いている。

DRAMの価格は256Mビット相当品で1991年から2000年までは年率30%の割合で下がっていた。その下げ幅が2001年以降はもっと大きくなっており、例を見ないほどに下がってきている。これに対して、同社代表取締役社長の坂本幸雄氏は、「1G品で2ドルを割ったら赤字。今の2.2ドルでも赤字。昨年の11〜12月は大赤字で苦しかった」と胸のうちを明かす。

しかし4~5月になると市況は良くなると見ている。「一般論として、1Gビット品なら単価が3.5〜4.5ドルでないと利益は出ないだろう。DRAM他社も苦しいはずだ」(坂本氏)としているが、「2月の前半に価格を上げられれば今年の見通しは楽観的になるが、これが実現できなければ今年も難しい」という。DRAM単価の回復を待つ状態になっている。

もちろん、300mmへの完全移行、70nmプロセス、さらには65nmプロセスへのシフトなど、可能な手は尽くす。しかし、市況頼みがもっとも大きな要素となっている。

DRAMビジネスは、いまや我慢比べの状態にあるが、NANDフラッシュのようなストレージとは違い、32ビットコンピュータシステムで考える限り、DRAMの未来はそれほど明るくない。新しい市場がまだ見えてこないからだ。32ビットシステムでは、データ幅が32ビットだとしても消費電力の点で、クロックは上げられない、コード効率を重視する、といった方向にシフトしている。命令セットはARMのThumbアーキテクチャで見られるような32ビット命令から16ビット命令へのシフトだとか、4Gビットの仮想メモリー空間を利用するのにほぼ十分な容量に来ている。これ以上の大容量化を推進するメリットはほとんど見えない。

では、DRAMの大容量化、あるいは高速化を進める分野はどこか。もちろん64ビットシステムになれば様相はがらりと変わり大容量化は必須となるが、パソコンや民生組み込み、カーエレクトロニクスなどに消費電力の大きな64ビットシステムが使われるとは到底考えにくい。せいぜい、システムの高速化のためのバッファメモリー、画像誤り訂正や「追っかけ再生」などに使うビデオメモリー程度のような一時ストレージ的な用途だが、市場が大きいとは思えない。全く新しい応用が出てくれば大容量化、微細化、といった従来路線でのDRAMビジネスが成り立つであろうが、長期的にDRAMの市場が大きくなるとは少なくとも今の段階ではありえない。

DRAMはこれまでの歴史から見て価格の下落は進む一方でやってきた。価格が値上がりしたまま安定状態に推移することは期待薄と見られる。DRAMビジネスそのものの見直しが再編も含めて迫られることになる。

月別アーカイブ