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「半導体産業は果てしない」で一致したDAC2008前夜講演会

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LSI設計最大のイベントである第45回DAC(design automation conference)が始まった。ここロサンゼルス郊外にありディズニーランドの街として知られているアナハイムには、世界中からLSI設計者やツールベンダーだけではなく、ファブレス半導体メーカー、IPベンダーなどが集まった。6月9日から始まる展示会およびコンファレンスに先駆けて、6月8日夜のDAC General Chair's Receptionではアナリスト、ファブレス経営者がEDA世界の将来展望を講演した。1時間前に終わった講演会をレポートする。

DAC General Chair's Reception


すべての講演者に共通する認識は、半導体産業は果てしないということである。米市場調査会社のGartner社のASIC/SOC/FPGA関係のチーフアナリスト兼リサーチVPであるBryan Lewis氏は、半導体産業の大変革に来ている旨を述べ、LSI LogicのAgere買収、MarvellがAvagoのプリンタ用ASIC部門を買収、IBMのコモンプラットフォームの形成、Nokia とNSNがASIC設計を外注へ、STマイクロと東芝もIBM連合に参加、マイクロソフトがX-box360チップセットの開発にASICベンダーからTSMC直接へと乗り換えた、こういった一連の動きは変革期をよく表しているという。

半導体の設計はもはやシステムベンダーの手に負えなくなるほど規模が増大しているため、「餅は餅屋」で半導体メーカーに任せるという方向になり、ASICメーカーは設計をさらに強化する必要があると述べた。半導体プロセスの開発も手を抜くと客に逃げられる例として、32nm以降の開発を断念したTIがノキアとサンマイクロシステムズを失ったことを挙げた。

一方で、大部分のASICは45nmや65nmといった超最先端のプロセスではなく、2011年になっても60%が90nm以上のラフな寸法を使っているため、ASIC市場は細かく広がっていくとの見方も示している。


Fewer Companies Pushing Leading Edge Design


EDA分野の専門アナリストでGary Smith EDA社のGary Smith氏は、半導体悲観論に対してことごとく反論するプレゼンを行った。業界再編が進みファブとして生き残るのは数社しかなくなるという見方に対して、生き残るファブはインテルやメモリーメーカーのようなメガファブ企業だけでなく、ミニファブ企業も多数戻ってくると反論する。業界は再編されて半導体メーカーの数は減るという見方に対して、現実には広がっている。「古いメーカーはすでになくなっているが、アジアのメーカーに置き換わっているにすぎない。特にインドでは難しいベリフィケーションのチームが米国からインドへ戻っていき、設計やASICなどは米国で活発になる」としている。インドは要注目だということである。

EDA産業はもはや成熟産業だという見方に対しては、新しいEDAベンダーが62社も生まれたと反論する。その中身は、RTLレベルの設計は成熟しているがESL(electronic system level)は2006年時点で50%成長した。

現実にはEDAだけではなく半導体産業全体が大きな変革期に来ていると述べた。32nmの半導体チップは10億ゲートというとてつもない規模になると予測する。結局、ITRSの微細化曲線に沿って動いているとしている。

32nmのASIC設計は、ASICベンダーがコラボレーションで設計せざるを得なくなるとみており、設計が複雑になることによる変化も起こるとみている。当然、IPや回路の再利用は増えていく。IPはASSPの派生回路としてできるという考えから、垂直市場にフォーカスしたメーカーが将来勝ち組となるだろうとガートナーのLewis氏はいう。同氏は、IBMのコモンプラットフォーム計画をQualcommを追撃するためだと見ており、これからの携帯電話におけるクワルコム社の巨大企業への成長を警戒している表れである。

EDAツールとしては、システムに近い部分ではESLがトレンドであるのに対して、プロセスに近いところではリソグラフィ修正のDFMが大きなトレンドになっている。しかし、現実にはESLへの動きよりもアナログやミクストシグナルの設計ツールの能力不足を、Gary Smith EDA社のMary Olsson氏は重要な動きだとみている。インターフェースやフロントエンドなどはアナログ回路が欠かせない。同氏が半導体メーカーにアンケートをとったところ、これからはアナログのツールが最も重要だという答えが最も多かったという。

この5月、TSMCがIPL Allianceに加わり、新しいアナログ設計手法を取り入れることを表明していることもその大きな表れだとしている。90nm未満のプロセスや設計はもはや大手企業でしか取り扱えないが、アナログは広く行き渡っているため優れた設計ツールが強く望まれている。

Gary Smith氏は、今後の方向として、マルチスレッド、マルチコアは今注目されているものの、コンピューティングパワーとして使う場合には超並列化は無謀だとみており、せいぜいコア4個が最適な設計だという。マルチスレッド・マルチコアは短期的なトレンドだとしている。

一方、128スレッドコアを持つ超並列のGPU(グラフィックプロセッサユニット)についてNvidia社の共同設立者でありシニアVPのChris Malachowsky氏は最初に講演し、超並列プロセッサが画像処理だけではなく、科学技術計算や金融、医療画像などに威力を発揮することを主張した。これに対して、Gary Smith氏はコンピュータシステムとしてのCPUマルチコア化にはコアを増やすことは難しいとしたが、画像処理のようにCPUから独立した仕事を計算するシステムに限定されると考えているという。

最後に、今後の設計ツールとして、モデルベースのハード/ソフト協調設計がベストなソリューションであること、さらに長期的な展望としてはC言語に代わる新しい言語の開発が必要になるとSmith氏は見ている。フォートランをベースにしているC言語ではなく、またJavaのようなオブジェクト指向言語でもない、コンパイルのしやすさまで含めた新しい言語が必要だとしながらも、まだイメージは掴めないという。

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