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ブロードバンドモバイルインターネットに活路を見出すインテル−CEATECから

「2005年にはユーチューブもミクシも存在しなかった。わずか2年後の2007年にはユーチューブは10億ページビューに達した。モバイルインターネットはいまや15億人に利用されている。猛烈なスピードでインターネットのソフトウエア、すなわちコンテンツや写真、動画などの利用が進み、まさに正のスパイラルのように発展している」とインテル社上席副社長兼ウルトラモビリティ事業部長のアナンド・チャンドラシーカ氏はCEATEC Japan2008のゲストスピーチで熱弁を振るった。

インテルのLincroftプロセッサ(45nm)

インテルのアナンド・チャンドラシーカ副社長
手に持っているウェーハはAtomコアを集積するLincroftプロセッサ(45nm)

この正のスパイラル機会をインテルは見逃さない。インターネットの波を味方につけるため、インテルはMID(モバイルインターネットデバイス)、UMPC(ウルトラモバイルPC)、ノートパソコンなどをインターネットのプラットフォームとする戦略を進める。特にモバイルインターネットをブロードバンドで利用できる環境が出来てきていることから、インターネット・オンザゴー(いつでもどこでもインターネットという意味)を推進する。今年はWiMAXチップを生産し、すでに米通信キャリヤのSplintがボルチモア州において月30ドルでサービスを始めたことを紹介した。日本でもUQコミュニケーションが2009年2月から東京23区と川崎・横浜で実験サービスを始める。

なぜ、携帯電話よりも液晶画面の大きなモバイルインターネットデバイスに向かうのか。米市場調査会社のForrester Research によると、60%もの人が携帯電話のインターネットを望まず、PC並みの完全なインターネットを望んでいる人はそうではない人の2倍もいるという。インターネットをドライブするのはPCだとチャンドラシーカ副社長は見ている。

今年出荷を始めたCentrino Atomプロセッサは、45nmプロセスでCore 2 Duoの命令セットと完全な互換性があり、消費電力が3W以下と小さい。このプロセッサに求められる性能は、動画をHDレベルで再生するソフトウエアFlash 10を動かせることだという。WindowsとLinuxベースのFlash 10が同時にリリースされたことで、HD動画(1080p)がモバイルコンピュータで見られるようになる。

さらにインテルはAtomプロセッサをネットブックやMID、組み込みシステム、カーエレクトロニクスなどの分野で広く使ってもらうため開発環境のエコシステムを構築している。昨年立ち上げた、Linuxベースのソフトウエア開発プラットフォームであるMoblinは、Atomプロセッサを使ったMIDやネットブックなどの小型PCを作るための開発環境である。すでに数千社ものメンバーがおり、数100社のソフトウエアベンダーや数10社のシステムメーカーが開発に携わっている。


MoblinベースのMIDエコシステムの拡大


インターネットにつながる小型PCの中核となるマイクロプロセッサがCentrino Atomプロセッサコアである。その次にくるプロセッサはAtomプロセッサをコアとするMoorestownやLincroftなどである。Moorestownは2009年に、Lincroftは2009~2010年にリリースされる予定だ。

最後に、日本こそがモバイルインターネットのリーダーであり、WiMAXの準備も進んでおり、多大な期待を寄せていると結んだ。


(2008/10/01 セミコンポータル編集室)

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