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エンプラ需要、年率9%の伸びにより2010年には06年比39%増に拡大へ

 エレクトロニクス製品の世界的な需要拡大に支えられ、主要樹脂全体の市場は06年以降年率4%で拡大し、2010年には692万トン(06年比18%増)に達すると予測される。樹脂材料全体の需要量の83%を占めるのが、ポリプロピレン(PP)やポリスチレン(PS)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)などの汎用樹脂。コネクタやギア、光学部品など機能部品に使用されるエンプラは汎用樹脂に比べて需要量は少ない。しかしエレクトロニクス製品の軽薄短小化や環境規制対応のためエンプラの採用が増えている。エンプラは04年から06年にかけて年平均11%伸び、今後も10年に向けて年率9%程度伸びると予測される。

 この調査は、富士経済が行ったもので、同社は、TV、パソコン、映像・音響、家電、車載機器、ホビーなど8分野、30製品の市場動向を徹底解明し、汎用樹脂とエンジニアリングプラスチック(以下エンプラ)の主要樹脂13品目ほかの需要をエレクトロニクス製品と関連させる観点で分析した。そのうえで日本、中国、台湾、韓国、アセアン、北米、欧州、その他地域別に需要動向を分析した。

エレクトロニクス製品向け汎用樹脂とエンプラ市場の伸び予測

1.エレクトロニクス30製品向け主要樹脂の市場動向

2006年 588万トン(前年比5%増)
2010年予測 692万トン(06年比18%増)

 主要樹脂全体の市場は、エレクトロニクス製品の世界的な需要拡大に支えられ06年以降年率4%で拡大し、2010年には692万トン(06年比18%増)に達すると予測される。しかしエレクトロニクス製品の軽薄短小化で樹脂の使用量が減り、製品の需要拡大がそのまま樹脂の需要拡大には繋がらない。

 樹脂全体の需要量の構成は、製品1台当たりの使用量が多い筐体や外装部品に使用されるポリプロピレン(PP)やポリスチレン(PS)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)などの汎用樹脂が樹脂材料全体の需要量の83%を占める。コネクタやギア、光学部品など機能部品に使用されるエンプラは1台当たりの使用量が少なく、汎用樹脂に比べて需要量は少ない。しかしエレクトロニクス製品の軽薄短小化や環境規制(表面実装、鉛フリー、ハロゲンフリー難燃剤)に対応するため耐熱性や精密成形性に優れた部品へのニーズが高まりエンプラの採用が増えている。エンプラは04年から06年にかけて年平均11%伸び、今後も10年に向けて年率9%程度伸びると予測される。

(1)主要汎用樹脂の市場(数量ベース)

2006年 488万トン(前年比4%増)
2010年予測 553万トン(06年比13%増)

 冷蔵庫や洗濯機などの白物家電に採用されることが多いPPの需要量が177万トン(06年)と最も多く、全体の36%を占める。PPの採用はコスト削減に重点が置かれるため、生産拠点が集中する中国ではコスト競争力のある地元メーカーが樹脂を供給する。筐体用の材料として広く採用されているPSやABSの需要量がPPに次いで多い。白物家電のコスト削減のためにABSからPS、PPへの代替がある一方で、高級化のためにABSの採用が増える傾向もある。またハロゲンフリー難燃剤への対応など環境規制から情報機器などではエンプラのPC/ABSアロイの採用が一般的になっている。コスト削減のため、より安価な樹脂への代替と、高級化や環境規制に対応した付加価値の高い樹脂への代替という対極的な動きが混在する。

 ポリ塩化ビニール(PVC)は環境規制対応のため他の材料への代替が進んだが、絶縁被服材料として優れた性質を備えており経済性にも優れており根強い需要がある。また処理施設の整備が進んでいることや海外向け製品で採用されていることなどから、今後も年率3%と堅調に伸びると予測する。

 ポリメチルメタクリレートアクリル(PMMA)は透明筐体の他にディスプレイ関連のバックライトユニット(導光板やプリズムシート)、前面板などに多く採用される。液晶TVを始め成長率の高い製品に採用されているためPMMAの需要も今後年率11%と比較的高い伸びが予測される。

(2)主要エンプラ7品目ほかの市場(数量ベース)

2006年 100万トン(前年比10%増)
2010年予測 139万トン(06年比39%増)

 エンプラの中ではポリカーボネート(PC)の需要量が54万トン(06年)と最も多く、エンプラ需要全体のうち54%を占める。透明部品や光学部品の他に筐体や機構部品などにも幅広く採用されているためである。生産拡大が続く製品(LCD、デジタルカメラ、ノート型パソコン、携帯電話)での採用が多いことや環境規制(ハロゲンフリー難燃剤への対応など)によりPSやABSからの代替需要があるため、PCの需要は04年来06年まで14%の伸びを示した。今後も年率10%の伸びを予測する。

 変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE)は難燃性や成形性、強度などの要求をバランスよく満たし軽量化も図れることから、金属や他のエンプラからの代替需要や、採用製品の生産拡大に支えられ、今後10年に向けて年率9%の伸びを予測する。

 ポリブチレンテレフタレート(PBT)、 ポリフェニレンサルファイド(PPS)、 液晶ポリマー(LCP)の主な用途はコネクタである。従来はPBTが広く採用されていたが、鉛フリー、表面実装への対応などから耐熱性への要求が高まってPPSやLCPの採用が増えている。特にLCPはエレクトロニクス製品の軽薄短小化が進む中で、高耐熱性や精密成形性が評価され年率12%の高い伸びで需要が拡大すると予測する。

2.エレクトロニクス製品別の主要樹脂需要(世界市場)

 最も樹脂需要量が多いのは、電気冷蔵庫の167万トンで、07年の対前年伸び率は3%と見込まれる。以下、洗濯機87万トン(同4%)、エアコン68万トン(同2%)、インクジェットプリンタ、レーザープリンタ、デスクトップパソコンと続く。07年の対前年伸び率の見込みは、製品の増産が続く液晶TVがトップで、56%(06年需要10万トン)、続いてプラズマTVが47%(06年需要3万トン)、デジタルビデオレコーダ25%、ノート型パソコン20%の順になると見込む。

■液晶テレビ
2006年 9.7万トン(前年比88%増)
2010年予測 34.6万トン(06年比257%増)

 液晶テレビの世界生産は、2006年には4,500万台となり、前年比88%の増加であった。2010年には世界で1億6,000万台になると予測される。その成長要因は欧米、中国を始めアジアの需要が拡大することが挙げられる。 樹脂材料の需要量は、一台当りに使用される量は減少しているものの、海外での旺盛な製品需要に伴い増加が続くと予測される。

 多く採用される汎用樹脂は、筐体向けのPS(構成比56%)とABS(同24%)である。中国やアジア、米国向けには、エンプラであるPC/ABSアロイやm-PPEに比較して安価なPSやABSの採用が多い。両市場で液晶テレビ需要が拡大しているため、PSとABSの需要も拡大傾向にある。

 エンプラの需要はPC(構成比73%)が最も多く、筐体、液晶フレーム、導光板、拡散板に採用されている。液晶テレビの需要が拡大している欧州でPC/ABSアロイの需要が拡大し、液晶テレビフレームではPCに変わる材料がないため、PCの構成割合はさらに増加する見通しである。

■プラズマテレビ
2006年 3.0万トン(前年比64%増)
2010年予測 9.5万トン(06年比217%増)

 プラズマテレビは50インチ製品を中心に、米国および欧州で需要が拡大し、2010年には世界で3、000万台になると見られる。プラズマテレビ向け樹脂材料は、筐体に使用されるPC/ABS、m-PPEが多い。樹脂は材料全体の14%程度を占めている。採用される樹脂はPS、PVC、ABSであるが、量的にはどれも少ない。筐体に採用されるPC/ABSアロイ(構成比55%)やm-PPE(構成比44%)の割合が高い。

 プラズマテレビは欧米での需要拡大を背景に、アセアンや東欧、米国などにおいて生産台数の増加が見込まれる。それに伴い、量的には少ないが汎用樹脂の需要も堅調に推移することが予想される。筐体に使用されるABSは、PC/ABSやm-PPEが採用されることが多くなったため各地域での需要が減少することも考えられる。

■インクジェットプリンタ
2005年 43.6万トン(前年比5%増)
2010年予測 53.0万トン(06年比22%増)

 2006年のインクジェットプリンタの生産台数は1億600万台であり、今後年率5%で拡大すると予測される。製品の樹脂量比率は58%と高い。汎用樹脂では、筐体に最も多く採用されているPSの割合が高い(構成比87%)。欧州市場などでノンハロが求められる傾向にあり、今後の環境規制によってはPC/ABSアロイへの代替が進むと見られる。エンプラは、筐体に使用されるPC/ABSアロイやm-PPE、ギアに使用されるポリアセタール(POM)が殆どを占める。エプソン、キヤノンなど大手メーカーが中国やベトナムなどアジアに生産拠点を集約し、筐体を組立工場近郊で成形することが多いため、PSやABSの需要も中国やアセアンが多い。筐体に使用されるPC/ABSアロイやm-PPE、ギアに使用されるPOMは、汎用樹脂同様に中国やアセアンで需要が多い。

■エアコン
2005年 67.8万トン(前年比2%増)
2010年予測 74.8万トン(06年比10%増)

 日本、米国はエアコンの普及率が高く成熟市場となっている。気候変動に応じて需要の変動はあるものの、今後大きな需要拡大は見込めない。欧州は日本や米国と比べてエアコンの普及率が低く、今後も需要拡大が予測される。また、中国も建設ラッシュを背景にエアコンの需要が拡大する。 熱交換器の大型化や機能追加による部品点数の増加により製品が大型化して、各種材料の使用量も増加している。汎用樹脂材料では筐体などに用いられるPSやABSの使用量が増加している。中国などの海外市場では製品価格が下落しつつあり、筐体や構造部品などに、より安価な汎用樹脂が多く用いられる。

 m-PPE(構成比54%)は比較的大型の構造部品などに用いられて、エンプラの中では使用量が多い。今後もエアコンの生産台数はわずかながら増加していくと見られ、中国やアセアンなど各生産地域における汎用樹脂の需要量も微増と予測される。また、エンプラの需要量は生産拠点が集中している中国を中心に拡大すると予測される。

■電気冷蔵庫
2006年 166.6万トン(前年比3%増)
2010年予測 184.2万トン(06年比11%増)

 日本、北米、西欧の先進諸国では、市場は成熟し買換え需要が主体となり大幅な拡大は見られないが、中国、アジア、東欧、中南米での普及率が上昇し需要は安定している。今後も海外市場の安定した需要が期待される。汎用樹脂では、製品の大型化やドア枚数の増加により、庫内部品(卵入れ、野菜入れ、棚など)が増え、使用されるPS 、PP、ABSなどの使用量が増加している。エンプラでは、冷蔵庫の引き出し部に使用されるPOMやコンプレッサーに使用されるPBTの採用比率も比較的高い。

 中国は、日系、中国系、欧米系の各国メーカーが生産拠点を移管・集約しており、最も多く使用されるPS、PP、ABSなどの需要量も増加傾向にある。今後、アセアンでも同様の動きが予想される。中国で普及型電気冷蔵庫の需要が増加しているうえに、中国の富裕層向けハイエンド製品の生産も行われており、エンプラの需要も増加している。PBTは今後コンプレッサーの生産がアセアンで増産されるのに伴い、アセアンでの需要増加が予想される。

■洗濯機
2006年 86.8万トン(前年比4%増)
2010年予測 101.2万トン(06年比17%増)

 日本、北米、西欧の各市場は成熟しており、買換え需要が中心となっている。地域別の生産数量は、中国、アジア、欧州、北米、日本の順に多い。中国、アジアでの生産が増加しているものの、日本での生産数量は減少傾向にある。しかし06年は日本も新製品導入により増加した。インドなどアジア地域やロシアなど東欧でも高い成長となった。製品の大容量化に伴い樹脂材料の需要は増加しており、PP、ガラス繊維強化樹脂が多用される。汎用樹脂のPP(構成比85%)は外蓋や脱水槽、外装などに使用されている。また環境対応のため、再生PPが使用されるケースが増えている。ABSは内蓋などに使用され、汎用樹脂の中では約10%の構成比率である。一方、PBTは耐薬品性に優れるため排水弁などに採用され、エンプラの中では77%と構成比率が高い。今後、中国やアジア、東欧などの地域での生産が活発化すると予想され、樹脂材料もこの地域の需要に依存し増加する。


詳細の調査内容は、https://www.fuji-keizai.co.jp/report/index.html?keyword=110702847を参照下さい。

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