米国産業界から米大学への研究開発支援、30年来の拡大傾向にブレーキ
全米科学財団(National Science Foundation = NSF)は、1972年から2001年まで約30年来拡大傾向にあった産業界から米国学究への研究開発費支援関係はブレーキがかかったとの見方を発表した。『資金はどこへ行ったのか?減少する産業界の大学研究開発支援(Where Has the Money Gone? Declining Industrial Support of Academic R&D)』という報告書に、下降傾向にある産業界の学究機関に対する支援の分析やその主要な考察結果が記載されている。
NSF報告書は、全米科学アカデミーが2006年4月に開催した会合で指摘された産学連携の現状についての意見を分析し、産業界の大学R&D支援が縮小している原因として下記を挙げている:
- 研究の契約交渉、特に、知的財産権の扱いに関する意見の相違
- 外国の大学が提供する魅力的な知的財産権
- 産学協同研究に対して、外国政府が供与するインセンティブ
1972 年から 2001年にかけて、産業界の大学研究開発(R&D)支援は、その他の支援ソースのペースを遙かに上回るペースで毎年拡大した。産業界の学究機関に対する支援は、2001年に22億ドルでピークに達した後、毎年後退し、2004年にはピーク時比5.1%減の21億ドルまで減少した。(2004年はデータのある直近の年)
大学R&D支援に占める産業界のシェアは、1999年に7.4%でピークに達したが、2004年には 4.9%まで落ち込んだ。この産業界支援の減少分は連邦政府のシェア増大で相殺されている。
産業界の大学R&D支援額を、産業界の内部R&D支出総額に占める割合で見ると、1994年の1.5%が2004年には1.1% へと低下し、1980年中盤以来の最低レベルとなっている。産業界の大学R&D支援は、少数の大学に集中する傾向にある。R&Dを実施する米国トップ100大学に対する産業界の支援は、1993年には大学R&D総予算の74%であったが、2004年にはこれが76%に上昇した。
また、大学からの論文で産業界との共同論文形式で出されたものの数については、1993年から2001年までは着実に増加していたのが、2002年、2003年と減少していることが指摘されている。また、産業特許における米国の科学工学論文の引用数は、1995年から1998年にかけて急増。若干減少した後、数年間は横ばい状態にあったが、2003年および2004年には再び減少した。
しかしながら、報告書では、米国の産業界と学究と共同研究開発関係が終焉したとまでは結論づけていない。産業界からの学究機関への支援には、直接的な資金援助や論文共著以外の方法もある。例えば、学究関係者のコンサルタントや学界研究者への研究スペースや装置提供、学究研究固有の施設活用、学生のインターン活用などである。過去数年間の衰退の原因が何なのか、大学のコマーシャル活動と産学連携活動の相互関係についてはまだ調査の余地があるという。
(Manufacturing Technology News, October 25, 2006; NSF Info Brief, September 2006)
参照資料:
WHERE HAS THE MONEY GONE? DECLINING INDUSTRIAL SUPPORT OF ACADEMIC R&D (INFOBRIEF、NSF)
NEDOワシントン事務所 デイリーレポート