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半導体メジャー3社のトップ年頭訓示、次の成長軌道に乗るための秘策を語る

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国内半導体メーカー、トップスリーである東芝、ルネサス テクノロジ、NECエレクトロニクスの各社それぞれのトップから年頭の訓示が発表された。今年の年頭のあいさつはいずれも2009年のビジネス状況について大変厳しい事業環境の中にあると捉えている。それを乗り切る妙手はあるか。各社とも苦渋をにじませながらも次の成長軌道に乗るための準備に余念がない。

半導体メジャー3社のトップ年頭訓示

まず、現状認識は殊のほか厳しいことには変わりはない。ルネサスの伊藤達会長&CEOは、「これまで経験してきた浮き沈みの中でも、今回の状況は最も危機的であり、文字通り会社の存亡をかけた闘いになると考えられます」と述べ、NECエレの中島俊雄代表取締役社長は「今回の不況はITバブル崩壊時に匹敵、またはそれ以上の広さと深さの様相を呈している」と述べている。

NECは今は、「ユーザーも競争相手も、取引先も苦しいのは同じだ」(中島社長)という認識だからこそ、何としても生き残りたいという強い思いを持っている。NECは、「これまで築いてきたものを失うことを恐れずに、これから起こり得る様々な変化を受け入れるだけでなく、むしろ変化を積極的に呼び込んで、これをチャンスとしたい。変わることで生き残ること、これが今年の目標である」と中島社長は述べている。中島社長は変化という言葉を多用し、「ドシャ降りの事業環境である今こそ、変化を受け入れて生き延び、次の飛躍へのチャンスを呼び込んでいこう」と結んでいる。

東芝の西田社長は、今年を「逆境に打ち勝つ強い意志を持って業績回復に集中する年」と捉えている。電子デバイス事業には、「事業構造改革を加速し収益改善に邁進して欲しい」と要求している。さらに、半導体だけではなくどの事業に対しても緊急課題として、財務体質の強化を上げ、「固定観念にとらわれない聖域なき経費削減の実行のほか、棚卸資産の圧縮や滞留債権の着実な回収など、スピードを上げて取り組んでもらいたい」としている。東芝は、垂直統合企業ならではの各部門の知識の共有にも言及し、「当社は経営方針の一つに「イノベーションの乗数効果の発揮」を掲げていますが、これを業績に結び付けるため、イノベーション事例の体系化を行い、知識の活用と実践に繋げていきます」として、各部門を横串につなげる情報共有の仕組みを作ることを宣言している。最後に、「再び成長軌道に乗せる土台を構築できるよう判断、決断したことを「胆力」を持って実行してもらいたい」と結んだ。

ルネサスの伊藤会長は、「2010年度以降の回復期に向けて身構えることが必要です」とし、社員全員が一丸となって荒波を乗り切る上で、「実行と集中」が重要だと考えている。「やると決めたことはきちんと実行し、また限られた時間の枠の中でいかに集中するか」が最も重要なキーワードだとしている。特に、昨年の北京オリンピックで日本全体に感動を与えたルネサス所属のソフトボールチームの掲げたキャッチフレーズ「あきらめない、夢のために」を引用し、「今後の回復期を見据えて、このキャッチフレーズをルネサス全員で共有し、現在の苦境を闘い抜きましょう」と結んでいる。

各社とも次の成長期に乗るために今の苦境を乗り切る方策について述べている点は評価するが、肝心の従業員が各社トップの思いを共有して実行するかどうかが2010年の姿となって表れるだろう。年頭訓示だけでは従業員は動かない。その従業員を動かすためにトップ自らが実行すべき秘策は何か。ここに各社各様の経営ノウハウがあるはずだ。その成果は2010年になれば見えてくる。


(2009/01/05 セミコンポータル編集室)

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