2024年TSMCの売上額は半導体企業史上最高の900億ドル、Nvidiaはさらに上
TSMCの2024年度(1月〜12月期)の決算が発表され、2024年の売上額は前年度比30%増の900.8億ドルとなった。これまで全ての半導体企業の年間売上額の中で史上最高である。営業利益率は45.7%と極めて高い。けん引したのはデータセンターなどのHPC(高性能コンピューティング)で、プロセス的には16nm以下の先端技術が81%も占めている(図1)。とはいえ、この金額の記録もひと月後には破られることになる。なぜか。

図1 TSMCのプロセスノード別の売上額 出典:TSMC
16nm以下の先端技術は、2023年は68%に留まっていた(図1)。なかでも3nmプロセスノードの売り上げが23年の6%に対して24年は18%にも増えている。ファウンドリのプロセスノードが16nmから7nm、5nm、3nmへと近づくにつれ、処理した後のウェーハ価格は極めて高くなる。ある業界情報によると、従来の日本企業の最先端だった40nmプロセスを1とすると、16nmは1.8倍程度だが、7nmは4.1倍、5nmは7.4倍となり、3nmはおそらく10倍を超えるだろう。ましてやラピダスの2nmは15〜20倍になると予想される。
3nmと5nmの合計で52%にも上るため、これらのプロセスノードがTSMCの売り上げを支えているのだろう。3nmプロセスによるチップは、かなり高集積のチップであり、それがHPC分野で使われる。HPC分野の代表格であるNvidiaの最新GPU「Blackwell」は4nmプロセスで作られる、とNvidiaは24年3月に述べているが(参考資料1)、それが3nmに分類されるのか5nmに分類されるのかは明確ではない。配線幅・間隔の実寸法はほぼ同じだからである。
また、NvidiaのJensen Huang CEOが、Blackwellは最大レチクルのダイを2個集積したものと述べていることから、おそらく最小のプロセスを利用して2080億トランジスタのBlackwell 製品を作ったと思われる。
そのNvidiaは、高価なTSMCのプロセスのウェーハで作られたダイを利用してGPUなどの製品を提供しているため、1個数百万円という極めて高い製品になっている。しかしそれを我先に買い求めてコンピュータを作るAIクラウド業者が存在している。このためNvidiaの売り上げは大きく増えることになる。しかもTSMCの売り上げをさらに超えることは確実なのだ。
Nvidiaの決算月は2月から翌年1月までとなっており、同社の決算が発表されるのは2月の終わりだろう。ちなみに昨年度の決算が発表されたのは2024年2月21日だった。特別なことがない限り今年もその前後に発表されると見ている。Nvidiaの2024年度(23年2月〜24年1月)売上額は609億ドルであった。これに対してTSMCの売上額は693億ドルであり、その上を行っていた。
図2 2024年第3四半期におけるNvidiaの売上額 出典:Nvidia
ところが今年のNvidiaの業績は絶好調。実は25年度の第3四半期までの累計(24年2月から10月まで)はすでに911.66億ドルに達しており、TSMCの年間売上額900億ドルを抜いているのだ(図2)。Nvidiaが25年度の決算を発表する時点では、驚異的な史上最高の年間売上額になるだろう。
参考資料
1. "NVIDIA Blackwell Platform Arrives to Power a New Era of Computing", Nvidia Press release, (2024/03/18)