Semiconductor Portal

» セミコンポータルによる分析 » 産業分析

グローバルに考え、ローカルに行動するMouser

「次の5年に向け、半導体や電子・機構部品の倉庫に投資する」(Mouser Electronics Marketing 担当Senior VPのKevin Hess氏)との思いから、Mouser Electronicsは、部品を保存しておく倉庫のフロア面積を既存施設57,000m2から約2倍の93,903mm2に拡張中である。米テキサス州を拠点にするMouserは24年の第2四半期に底を打ちこれから上向いていくと見ている。

図1 Mouser Electronicsのアジアチームと本社のKevin Hess氏(中央)

図1 Mouser Electronicsのアジアチームと本社のKevin Hess氏(中央)


Mouserは、電子システムを開発するエンジニアを対象にして、試作品を開発するための半導体ICや電子部品・機構部品などをワンストップショッピングで提供する、ディストリビュータである。開発エンジニアにターゲットを絞っているため、電子システムに搭載する半導体や電子部品などを幅広く揃えているのが特徴だ。大量生産品は扱わない。

世界中から半導体や受動部品、ケーブル、コネクタなどをテキサス州のマンスフィールドに集め、ここから世界中のユーザー(電子システム設計者)に配送する。世界各地に営業拠点を置き、ユーザーからの相談に乗る。このための営業やマーケティング担当者を各地に置いている。グローバルをカバーしながら、ローカルにディストリビュータを持っている。これが他のディストリビュータの大きな違いだという(図2)。


現地の顧客サポートとマーケティング / Mouser Electronics

図2 ローカルの顧客をサポートする体制が特長 出典:Mouser Electronics


Hess氏は「グローバルに考え、ローカルに行動する」と述べ、ローカルの文化やトレンドなどを熟知しているローカルの社員が重要なカギを握るという。

Mouserの売上額は、2022年をピークにして2年連続下がっているが、これは他のコンペティタも同様の傾向を示しており、ディストリビューション市場がそのようになっていると言える。世界各地で同様な傾向を示しており、新製品開発がやや落ちているといえそうだ。確かに最近の半導体市場はデータセンターがけん引しており、データセンターでは数量も設計件数もそれほど多くはないため、開発エンジニア向けの市場がまだ上がっていないと言えそうだ。

しかし、「24年第2四半期に底を打った。次の4〜6ヵ月で上向きに上がっていくだろう」とHess氏は見ている。実際注文数は上がっているという。このため少なくとも25年には23年レベルに回復するだろうという。それに備えて、倉庫の拡張を図っている。建物はすでに完成し(図3)、倉庫内の自動化システムをいくつか導入している。


新倉庫施設 / Mouser Electronics

図3 倉庫の容量を倍増させ、今後の市場の立ち上がりに備える 出典:Mouser Electronics


まずは、部品のコンテナを縦方向に持ち上げるVLM(Vertical Lift Module)を新倉庫に139台配置し、今後300台に拡張する。ここで3000種類のパーツを補完できるとしている。また部品をピックアップするOPEX完全ピックシステムを導入している。このシステムには自動補完・検索システムも備えており、1時間当たり400コンテナをピックアップできる。

さらに長いベルトコンベアのようなEuroSortマシンでは、製品荷物を受け取り、倉庫に自動的に搬入する。さらにラインごとに製品をピックアップし、自動的に梱包する作業も行うという。新倉庫では1分間に120件の注文を8基のレーンで始動している。デバイスの梱包ボックスは1冊の本とほぼ同じ大きさになるとしている。

Mouserは2015年に日本法人を設立して以来、2022年まではずっと上り調子でやってきた。23年と24年はグローバル売上、日本法人売上とも前年比で10%以上減少したが、日本のユーザーはほとんど減少していないという。開発エンジニアは老舗の大手電機メーカーから新しい企業へ移ったが、その数はさほど変わっていないようだ。

(2024/09/26)
ご意見・ご感想