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Infineon、300mmのGaNウェーハを開発、Siプロセス活用に期待

パワー半導体大手のInfineon Technologiesが300mmのGaNウェーハを開発したと発表した。同社はSiCだけではなく、GaNデバイスも開発しているが、昨年カナダのGaN Systemsを買収したことで、GaN開発が加速した。GaNパワー半導体は高速ゆえに高効率で、Si並みに低コスト、高耐圧という特長を併せ持つ。

図1 InfineonのCEO、Jochen Hanebeck氏が手にする300mmのGaNウェーハ

図1 InfineonのCEO、Jochen Hanebeck氏が手にする300mmのGaNウェーハ


Infineonは300mmウェーハを開発したとニュースリリースで述べているが、純粋にGaNだけのウェーハなのか、GaN on Siliconのウェーハなのかを明確に述べていない。ただ、GaNの結晶ブール(シリコンでいうところのインゴット)の製造はそう簡単ではないため、おそらくGaN on Siウェーハであろう。というのは、300mmのGaNウェーハは長期的にはシリコンと同程度のコストになるだろう、と述べているからだ。純粋にGaNだけの結晶ならSi並みのコストで収まることはありえないからだ。

Infineonはかつて、IR(International Rectifier)社を買収したが、残念ながら多くのエンジニアが退社してNavitas Semiconductorを設立した。このため、IR出身のエンジニアが少なくなり、昨年GaN Systtemsを買収した。

GaN Systems社は、かつてIR社のエンジニアが開発したシリコンのパワーMOSトランジスタによく似た六角形のトランジスタセルを集積したようなレイアウトを持つGaNパワートランジスタを設計していた。性能や面積、コストの面で優れていたが、市場ではさほど知られていなかった。ファブレス企業であった。

Infineonが買収したことで、GaNパワー半導体のメリットが生かせると思われていた。今回300mmウェーハでGaNを実現したことは、300mmのSi製造プロセスを使えるということでGaNデバイスの生産効率が高まるとInfineonは期待している。

ただし、GaNとシリコン結晶とは基本的に結晶格子定数が異なるため、両者の格子定数を徐々に変化させるバッファ層をシリコンウェーハとGaN層との間に入れなければならない。それも300mmとなると少しずつ格子定数を変えていくとしても大面積ほど転位や結晶欠陥などが入りやすくなり、欠陥が増えていくという難しさがある。Infineonはこれについてはもちろん触れていない。300mmウェーハ自体の欠陥密度についても公表していない。

(2024/09/12)
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