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Siemens Software、総合ソフトとクラウドで生成AI+DX化を推進

ドイツのSiemensは、鉄道や産業機器などのハードウエアと共に、ソフトウエアにも力を入れているが、ソフトウエア部門であるSiemens Digital Industries Softwareがこのほど、総合ソフトウエアプラットフォームであるXceleratorをクラウドベースでパナソニックに導入したと発表した。パナの業務のデジタル化を推進する。Siemens Xceleratorとは何か。

半導体やエレクトロニクス部門の業務を改善するために、総合的なソフトウエアで管理することは業務の効率化にかなり有効であることが知られている。このXceleratorは、従来の3D-CADやCAMなどの総合ソフトウエア「NX X」にPLM(製品のライフサイクル管理)ソフトウエアである「Teamcenter X」などをまとめて採り入れた総合ソフトウエアプラットフォームである。

電子機器、半導体の開発や設計から製造までの業務の一貫した管理を行うだけではなく、設計段階では3D-CADとシミュレーション(CAE)を重ねて、例えば3D-ICの熱流の解析やノイズの分布などを可視化できる。設計段階での不具合をひと目で理解できる。しかも可視化した様子は写真のような美しいグラフィックス(Photo-realistic graphics)で見ることができるため、メタバースのデジタルツインそのもので表現する。

SiemensはそのためにNvidiaと提携し、GPUを多数並べたコンピュータを利用している。ただし、Xceleratorも他のソフトウエアも、クラウドベースで提供できるため、導入したパナソニックは、製品開発・設計データ管理のクラウド化と、SaaS(Software as a Service)移行を進めている。


Siemens Digital Industries Software Tony Hemmelgarn CEO

図1 Siemens Digital Industries Softwareの社長兼CEOのTony Hemmelgarn氏


Siemensが持つこれらのソフトウエアに加えて、これからはデジタルトランスメーション(DX)を再定義する必要があるだろう、と同社社長兼CEOのTony Hemmelgarn氏は述べているが、これは生成AIが登場してきたからだ。これまでのDXでは対象とする業務や製品開発などを解析し最適化することだったが、さらに生成できるようになってきた。いろいろな製造業では電子と機械と部品などがありそれぞれ独自の専門性が強い。生成AIが誕生してもそれぞれの専門で何が重要なのかを、それぞれの生成AIに問い合わせることができる。例えば「AIをCAEに組み込めば、マシンを70%軽量化し、しかも環境にやさしい製造技術を教えてほしいと訪ねることができる。工場の最適なレイアウトを聞いてもよい」と同氏は述べる。

企業向けの大きな総合ソフトウエアは、クラウド利用の方が使い勝手が良い。Xceleratorのようにいくつかのソフトをまとめて提供するソフトでは、一つのセキュアなプラットフォームと見なせるという。常に最新のソフトウエア版を使える。この結果、ITコストを60%下げられる、また開発期間が33%も速くなったという。Siemensソフトウエアの顧客の72%がSaaSを利用している。ものづくりの頂点にいる自動車産業では24社のトップ企業の内、22社がSiemensのソフトウエアを使っているという。SiemensのGlobal Sales and Customer Success部門担当上級VPのBob Jones氏(図2)は、2024年には売り上げの40%がクラウドベースになろうと見ている。


Siemens Digital Industries SoftwareのGlobal Sales and Customer Success Bob Jones SVP

図2 Siemens Digital Industries SoftwareのGlobal Sales and Customer Success部門担当上級VPのBob Jones氏


PLM(製品のライフサイクル管理ソフトウエア)ソフトウエアを使うことで無駄を省け、業務コストを60%削減し、使えるユーザー数は10倍になったとしている。

また、バッテリメーカートップ10社の内8社がXceleratorを使い、医療機器メーカーの大手40社の内33社が何らかのSiemensソフトウエアを使っているという。世界の半導体メーカーのトップ50社は100%Siemensのソフトを使っているとしている。


Mendix Raymond Kok CEO

図3 MendixのCEO Raymond Kok氏


Siemensはユーザーにとって使いやすさを最重要視しており、24年2月にはローコードのソフトウエア開発のMendixを買収した。それぞれの分野のAIを簡単にカスタマイズするために、できるだけ簡単なコードで作りたいからだ。従来なら5日かかっていたソフト開発が1日で済み、数時間かかっていた作業が数分で済むようにしたいという。MendixのCEOであるRaymond Kok氏は「ソフトウエアをモダナイズすることが当社の業務」と言い切り、「今後TeamcenterやXceleratorにローコードを導入し、ソフトウエアの開発期間を短縮する」と意気込んでいる。

(2024/08/14)
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