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いよいよAIパソコンの時代到来、QualcommがMS Copilot+仕様に一番乗り

AI機能を搭載したパソコンが今年後半にドッと出てきそうだ。Intelが開発中のパソコン向けプロセッサ(コード名:Lunar Lake)を搭載したパソコンが80機種以上、20社以上のOEM(PCメーカー)から今年の第3四半期に出てくると発表した。また、QualcommもSnapdragon X EliteとX Plusを搭載するAIパソコン向けが6月18日を皮切りに登場してくると発表した。

図1 IntelのAIパソコン向けプロセッサLunar Lake  出典:Intel

図1 IntelのAIパソコン向けプロセッサLunar Lake  出典:Intel


いずれのパソコンもMicrosoftのAI機能であるCopilot+ PC(参考資料1)に対応する。
これは、Microsoftが次のような仕様を規定している。すなわち、40 TOPS(Tera Operations per second)以上のAI性能を持ち、終日バッテリ動作が使え、しかも最先端のAIモデルにアクセスできる、という条件を満たすパソコンである。もちろんプロセッサはこの仕様に対応していなければならない。

AIパソコンは、パソコン上のタスクを自動化し効率化し最適化するニーズが高まってくるにつれ重要になってくる、とIntelは見ている。Lunar LakeにはX86アーキテクチャのCPUに加え、GPU(グラフィックスプロセッサ)、NPU(ニューラルプロセッサ)も集積しており、それぞれが得意なAI演算を実行する。例えばNPUはクラウドと接続しなくても機械学習機能を効率よく実行する。NPUは40 TOPSで、GPUは60 TOPSの性能をもつという。

Intelは、半導体チップというハードウエアのイノベーションだけではなく、パソコンを動かすソフトウエアベンダー100社以上と共に共同開発している。パーソナルアシスタントやオーディオ効果、コンテンツ生成、ゲーム、セキュリティ、ストリーミング、ビデオ作業などAIパソコン体験を高めていくという。

Intelは最初に出したAIパソコン向けプロセッサCore Ultraの成功で自信を付け、今回のLunar Lakeと共に、今年4000万台以上のAIパソコンに向けAI機能を集積したプロセッサが出荷されると見込んでいる。

これまでスマートフォン向けのプロセッサを開発してきたQualcommはAIパソコンからパソコン事業に参入する。QualcommのArmベースのプロセッサSnapdragonを開発してきた実績をもとにSnapdragon X EliteとX Plusを搭載するパソコンは、バッテリが数日間持つという。内蔵する最新のNPUの性能は45TOPSだとしている。


図2 Snapdragon Xシリーズを搭載するパソコンは20機種以上 出典:Qualcomm

図2 Snapdragon Xシリーズを搭載するパソコンは20機種以上 出典:Qualcomm


Snapdragon X EliteとX Plusを搭載したCopilot+ PCとして、Qualcommは20機種以上に提供する。OEMには、AcerやASUS、Dell、HP、Lenovo、Microsoft、Samsungなどがいるという。各社はパソコンの受注をすでに受け付けており、6月18日から順次発売されるとしている。Qualcommはスマホ向けに低消費電力重視のプロセッサ開発を進めてきた実績から、プロセッサSnapdragonは単位消費電力W(ワット)あたりの性能が高いのが最大の特長。同社によると、ラップトップPC向けのNPU性能は単位Wあたり、AppleのM3の2.6倍、IntelのCore Ultra 7の5.4倍高いとしている。

今回のCopilot+ PCの発表では、どうやらQualcommが先行していたようだ。先にMicrosoftのCopilot+仕様を満たすパソコンが6月18日から発売されることに対して、Intelチップは今年の第3四半期(7〜9月)からのパソコンに搭載される。AIパソコン用プロセッサとしてはIntelのCore Ultraが先行したものの、Microsoft Copilot仕様のAI PCはQualcommが先行した。AMDもこれからやってくる。

参考資料
1. "Introducing Copilot+ PCs", Official Microsoft Blog, (2024/05/20)

(2024/05/21)
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