電源用ICの効率アップに賭けるTI、GaNパワーFETやトランス内蔵製品も
電源アダプタの大きさを見れば、電源用ICの実力がわかる。パソコンや電気製品の電源アダプタは最新なものほど小さくなっている。自動車内やデータセンターなどでも電源は、より小さくなってきている。アナログ半導体トップのTexas Instruments社は電源の小型化を目指し、より効率を上げる回路や材料などに力を入れている。このほど2種類の小型電源ICを発表した。

図1 GaN半導体を使って電源用ICを小型に 出典:Texas Instruments
一つは、GaNを使った100V耐圧の電源IC(PMIC:Power Management IC)(図1)で、もう一つはインダクタLを1パッケージ内に集積した1.5Wの絶縁型DC-DCコンバータである。自動車やデータセンターのシステム設計者が直面する問題の一つにスペースを確保することがある。より小さな実装面積に配置するためには放熱特性の改善や電力効率のアップが欠かせない。電力密度とEMI(Electro-Magnetic Interference)ノイズ、絶縁技術などの課題の内、電力密度の向上が差別化要因だ、と同社GaN担当ビジネスリーダーのFei Yang氏は述べる。
GaNは、Si(シリコン)で作ったMOSFETと比べて効率が高いため、ICを小さく設計でき、ボード上のスペースを空けることができる。このためスマートフォンなどの電源アダプタにGaNを使い、小型化を競っている。Navitas SemiconductorやPower IntegrationsなどがGaNデバイスで1位、2位争いを繰り広げているのはまさにこの分野だ。それだけではない。ソーラーシステムでは、太陽光からの電力を少しでも減らさずに架線に戻すために効率アップを追求する。
最近TIが発売した。GaNを使ったLMG2100ファミリは、5.5mm×4.5mmと従来の同規模の電源ICと比べ40%以上小さなサイズの16ピンQFNパッケージに封止されている。スイッチング損失はSiのパワーMOSFETと比べ、入力容量と出力容量が小さいため、損失は50%と低減している。Siと比べてスイッチング周波数を上げられるため、周辺部品のコイルをぐっと小さくできる。例えば、LMG2100R044はパルス耐圧100Vで、35Aを流せるGaNハーフブリッジパワー段ICとして量産中。
図2 トランス内蔵の絶縁型DC-DCコンバータ 出典:Texas Instruments
もう一つの絶縁型DC-DCコンバータ(図2)は、トランスをパッケージ内に集積して面積を4mm×5mmと小さくしたもの。VSON(Very thin Small Outline Non-lead)パッケージに封止した電源用ICUCC33420ファミリである。出力電力1.5Wで、絶縁耐圧は3kVrms。この製品もトランスを内蔵したことで外部部品を削減でき、ボード面積を小さくできる。
TIはこれらの2品種だけではなく、さまざまな電源用ICを開発しており、3月下旬にTIパワーセミナーを開催、電源回路のリファレンスデザインボードを展示した(図3)。
図3 TIは各種電源ICを搭載した多数のリファレンスボードを展示
TIは電源電力の効率を追求しており、上の図ではいずれも98%以上の効率がある。例えば左の1/8ブリックのDC-DCコンバータ(基板上の黒いパッケージ)は48Vから12Vに変換して1kWまで出力でき、効率は98%だという。