ルネサス、タイのOSAT企業と共にインドにOSAT工場を設立へ
ルネサスエレクトロニクスは、インドとタイの企業と3社でインドに半導体後工程の製造工場を作る、と発表した。残りの2社はインドのCG Power and Industrial Solutions社とタイのStars Microelectronics社で、合弁契約を結び、2024年2月29日にインド政府が承認した。半導体後工程において組立とテストを請け負うOSAT(Outsourced Semiconductor and Testing)会社となる。
これまでインドでは政府が何度となく半導体工場の設立を呼び掛けてきたが、実現しなかった。台湾の鴻海精密工業もインド企業と半導体工場設立したが、すぐに関係を解消した。その後もインドの工場に16億ドルを投資する用意をしている。
今回は、独立したOSATとなるため、ルネサス1社のための後工場ではない。インドのCG社は、ファンドのTube Investments of IndiaとMurugappa Groupの傘下企業。タイのStars社はOSAT企業である。これまでCG社は86年間に渡り製造業の経験を有してきたが半導体の経験がないため、OSATで実績のあるタイのStars社、半導体メーカーのルネサスと組んだ。この合弁会社は92.3%の資本をCG社が持ち、ルネサスとStars社がそれぞれ6.8%、0.9%を出資する。
インド政府は「Make in India for the World」政策を掲げており、今回152億米ドル(1.26兆ルピー)を半導体工場に投資することを発表している。その内、Tataグループと台湾のPSMCの合弁会社は9100億ルピーのウェーハプロセス工場、ルネサスとCG、タイのStarsの3社グループは760億ルピーの工場を設立する。
ルネサスの合弁会社はインドのグジャラート州サナンド地区に最先端のOSAT工場を設立し、1日当たり1,500万個の生産能力を持つ工場へと増強していく予定である。この工場では、QFNやQFPなどの従来型パッケージから、FC-BGA、FC-CSPなどの先端パッケージまで、自動車、IoT、5Gなど様々な用途に適した幅広い製品を製造するという。
CG社ChairmanのSubbiah Vellayan は、「CG社は、半導体製造業に参入することで、事業の戦略的な多角化を図ります。ルネサスおよびStars Microelectronics社と協業することで、より早く技術を習熟でき、イノベーションと技術的卓越性の追及に専念することができます。本件は、インドとして国を挙げての重要な局面をもたらしています。私たちは、半導体の製造能力やエコシステムを構築することを目指します」と述べている。
図1 2023年5月、インドのモディ首相と握手するルネサスの柴田英利CEO 出典:ルネサスのLinked-In
ルネサスの柴田英利社長は昨年5月にインドのモディ首相と会っており(参考資料1)、秘密裏に合弁会社のプロジェクトを進め、インド政府の承認が前日に降りたことで今回の発表に至ったようだ。合弁会社ではOSATに実績があるStars社が人材教育を行い、ルネサスは先端半導体技術やその知見を提供する。柴田氏は「今後もインドへの投資を加速し、MurugappaグループとStars社と協業することでインドの半導体エコシステムを強化し拡大し続ける世界中の顧客の半導体需要に対応する」、とコメントしている。
参考資料
1. 柴田英利氏のLinked-In投稿