Onsemi、インテリジェントなパワーとイメージセンサで勝負
ON Semiconductorがonsemiと会社の名称を変更してから3年たった。元CypressのCEOであったHassane El-Khoury氏がトップに就任、onsemiの方向をインテリジェントパワーとインテリジェントセンサに定めた。応用としてはクルマと持続可能社会に注力し、2022年から2027年までの半導体のCAGR(年平均成長率)4%よりも高い10〜12%の成長率を目指す。El-Khoury氏はこのような中期計画を描いている。
図1 onsemi CEOのHassane El-Khoury氏
クルマの将来は、EV(電気自動車)モビリティとADAS(先進ドライバー支援システム)になり、これが工場など産業用にも使われていくと、El-Khoury氏は見る。EVにはモーターを駆動するトラクションインバータや、蓄電池を充電するオンボードチャージャー基板などが共通技術としてある。ADASで前方の障害物や人などを検出するためのイメージセンサは、工場内ではコンピュータビジョンとして、使うことができる。しかもクルマは最もインテリジェントである。
だから、onsemiの特長として、インテリジェントセンサとインテリジェントパワーを推進するのである(図2)。イメージセンサでは、スマートフォンのカメラのような汎用的なイメージセンサではなく、事故を未然に防ぐという意味でのインテリジェント化が必要となる。例えば、交差点などでのLED信号機のフリッカー(ちらつき)防止機能(注1)や、トンネルに出入りする時の明るさの急激な変化にも追従できるような広いダイナミックレンジ(注2)はクルマのイメージセンサには欠かせない。こういったセンサのインテリジェント化に力を入れる。
図2 onsemiのコア技術はインテリジェントなセンサとパワー 出典:onsemi
インテリジェントパワーでは、クルマのサブシステム、例えばインバータなどのシステム内の電圧と電流、温度などをリアルタイムで測定し、アルゴリズムでサブシステムの寿命を予測し、その寿命時間全体に渡って製品がさらされる環境的・機能的負荷を集めたミッションプロファイルを知ることができるようになる、と同社パワーソリューショングループのEVP兼ゼネラルマネージャーのSimon Keeton氏は語っている。
ミッションプロファイルから、航続距離や性能、変化などをリアルタイムで最適化することができるという。このためパワーモジュール内には全てパワー+インテリジェンスを持たせている。
パワー半導体ではSiのIGBTからSiC MOSFETまで揃えており、onsemiの強みはSiCの結晶からプロセス、デバイス、パッケージまで垂直統合で技術を持っていること。例えば、ハイエンドなクルマではSiCのインバータを使い、車輪ごとにモーターを駆動するインホイールモーターをサポートし、エントリレベルではIGBTを用意する。各OEMのアーキテクチャに対応していくという。
実際、市場調査会社のYole Developpementによると、onsemiは7社程度のOEM(自動車メーカー)からSiCパワー半導体をデザインインしており(図3)、onsemiの戦略を裏付けている。
図3 横軸のOEM(自動車メーカー)にデザインインしている縦軸の半導体メーカー 横軸のOEM: Tesla、Hyundai、Stellantis、VolksWagen、Mercedes Benz、Jaguar Randrover、Volvo、General Motors、Nio、Xpeng、Lucid Motors、BMW。縦軸の半導体メーカー;STMicroelectronics、Infineon、onsemi、Wolfspeed、ローム
Onsemiがサステナブルなエコシステムとしてソリューションを提供するのは、電動化に加え、ソーラーや風力などの発電、蓄電システム、そして充電設備などである。EVだけではなく再生可能エネルギーや蓄電設備、充電設備も持続可能な社会には欠かせない。
2022年から27年にかけて、サステナブルなエコシステムの成長率は16%に対しonsemiは21%を目標に、インテリジェントパワーとセンサ市場は6%に成長に対しonsemiは14%へ、半導体の成長率は4%に対してonsemiは10〜12%という目標を掲げ、今後も成長路線を継続する。
注釈
1. フリッカーは、LEDランプで起きる。LEDランプは駆動するドライバICが数個直列接続されたLEDストリングスを並列に数個〜十数個接続しており、それらを順番に点滅させていく。このため人間の目には全てのLEDが点灯しているように見えても、イメージセンサは一瞬の時間、点灯していないストリングとしているストリングがイメージセンサには見える。これをフリッカーと呼ぶ。
2. ダイナミックレンジは、明るい場所と暗い場所を同時に最適な照度で見ることができるように広い方がよい。人間の眼はイメージセンサよりもダイナミックレンジが狭いため、暗いトンネルから出ると明るすぎてまぶしく見える。インテリジェントセンサでは、明るい画像と暗い画像に合成処理を施すことで、ダイナミックレンジを広げている。