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鴻海主導のオープンコンソーシアム、自動車産業の地図を塗り替える可能性

世界最大のEMS(電子製品請負製造サービス)である鴻海精密工業が電気自動車製造のためのコンソーシアム(図1)を2015年に設立していたが、このほどJapan Mobility Show(旧モーターショー)で3人乗りのコンセプトカーを展示した。電気自動車(EV)を製造するためのアライアンスを組み、オープンなプラットフォームで自動車製造に挑んできていた。

Japan Mobility ShowのMIHブース.コンセプトカー「Project X」が展示されている

図1 鴻海精密のブース


鴻海主導のEV製造のためのオープンなアライアンスMIH(Mobility in Harmony)コンソーシアムには、2700社を超える企業が世界中から参加し、日本だけでも100社以上が参加しているという。様々なサプライヤーを世界中から集め、都市交通を狙ったコンセプトカー「Project X」(図2)を今回初めて展示した。


MIHのコンセプトカー「Project X」

図2 Japa Mobility Showで見せた3人乗りの鴻海のEV試作車「Project X」


これまでに、MIHコンソーシアムの一員であるGogoroというスタートアップが電動バイクを開発、2015年のCESで公開し、その後生産してきた。CES 2020でGlobal Company of the Year Awardを受賞した同社の電動バイクはバッテリ交換方式を採用している。空になったバッテリパックをバッテリスタンド(図3)に戻し、充電済みのバッテリパックと交換すると、バイクをすぐに走らせられるようになる。Gogoroのサービスは無印良品と共同で開発されたビジネスであり、自らをBaaS(バース:Battery as a Service)と呼んでいる。このビジネスはサブスクライブ方式で、バッテリスタンドをサブスクライバ(加入者)が利用できるようになっている。


Gogoro社のバッテリスタンドGostation

図3 バッテリスタンドでは可動式・可搬式のバッテリパックを自分で交換できる


今回発表されたEVも、固定されたバッテリに、電動バイクで利用されていたGogoroのバッテリパックを搭載しており、このパックも交換可能となっている。このため、容量の大きな固定バッテリが減っても、バッテリスタンドまではバッテリパックで動かすことができる。バッテリの航続距離は固定バッテリが150km、交換可能なバッテリは20kmとなっており、都市交通の用途を狙っている。フードデリバリーやカーシェアリング、簡単な物資輸送など向けのクルマとなっている。

MIHコンソーシアムのメンバーにはInfineon Technologiesも含まれており、自動車向けの半導体を供給する企業としての位置を築いているようだ。

今回、MIHコンソーシアムは早速、スタートアップのM Mobility社にライセンス供与することが決まった。M Mobility社はインドのIT大手Tech Mahindraの支援を受け、MIHコンソーシアムのプラットフォームをベースとしたサービスを目指し、EVの設計やシステム開発などを提供するという。

なお、Project Xは2024年には6人乗り、25年には9人乗りのEVをデモするというロードマップを描いている。EVは、オープンなコンソーシアム方式で生産可能なことを鴻海が証明したことで、これまでの自動車の産業構造を、ガラリと変える可能性を持つようになる。自動車大国の日本もうかうかしていられない。

(2023/10/27)
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