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第5回RD20(2):水力中心で45%が再エネ、直流送電採用のブラジル

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ブラジルが全電力の実に45%を再生可能エネルギーで賄っていることを日本人は知っているだろうか。ほとんどが水力発電だが、ソーラーシステムや風力にも力を入れ始めている。しかも重要なことは既存の電力網との統合システムだ。広い国土に渡って直流送電も行っている。どうやってソーラーや風力などほかの再生可能エネルギーを導入し、それらを既存の電力網とつなげるか、ブラジル特有の問題だ。ここにINRI(インテリジェントネットワーク研究所)の強みがある。RD20 2023でブラジルの実態を話す、INRI研究所でソーラーシステムの技術陣をけん引するLeandro Michels准教授(図1)に話を聞いた。

Prof. LeandroMichels

図1 INRIソーラー技術テスト研究所技術マネージャー Leandro Michels准教授


NRI(インテリジェントネットワークス研究所)は、Federal University of Santa Maria(連邦サンタマリア大学)のテクノロジーセンター内の一組織である。研究所では教授、研究員、大学院生、学生らが、電気工学制御や・オートメーション、通信、宇宙航空、生産技術、土木技術などエンジニアリングに関する研究を請け負っている。

そのINRIがRD20 2023で講演する。INRIはブラジル政府組織とも密接に関係があり、規制の標準開発を支援し、再生可能エネルギーとなる太陽電池システムやブラジル全土の送電網への接続を可能にする技術要件などを政府と一緒に開発している。今年に入り、外国の国々とも共同開発している。Michels氏は、IEC(国際電気標準会議)につながる太陽電池システムに関するブラジルの標準化委員会のメンバーでもある。「数カ月前に産業技術総合研究所GZRの近藤道雄氏とお話しする機会があり、ブラジルにおけるソーラーシステムの開発状況や実用化状況などについてお話をして、近藤氏が自分をRD20に招待してくれることになった」とMichels氏は嬉しそうに語る。

これまで、ブラジルは、RD20に積極的に関わってこなかったが、ブラジルはエネルギー転換技術を熱心に開発してきた。しかし「外国の研究者たちはブラジルが再生可能エネルギーについて熟知していることを知らない。それを自分たちの知識を海外と共有したい」とMichels氏は言う。

ブラジルは他の国とは違うアプローチを進めてきた。特に、エネルギーでは再生可能エネルギーを推進、その割合が極めて高く、全エネルギーの45%を再生可能エネルギーで賄っている(図2)。他国とは大きく異なっている。特にソーラーシステムと電力網へのインテグレーションを積極的に取り入れており、これをみんなに知らせたい、とMichels氏は言う。


Renewable Energy Shares and Targets, G20 Countries, 2019 and 2020

図2 2019年と2020年におけるG20諸国の再生可能エネルギー 出典:Renewables 2021 Global Status Report


ブラジルにおける再生可能エネルギーはほとんどを水力に頼っている。これを、風力やソーラーに変えようとしている。水力発電は古くなりすぎたが、新しい発電所を建設する場所はなく、環境への影響も大きい。そのため政府は電力の18%を占める風力やソーラーの再生可能エネルギーの利用を増やそうとしている。石炭も少し使われているが、これからは使わないようにしようとしている。ソーラーエネルギーを大きく増やし、2022年だけで11GW以上のソーラーを設置、これによって2022年は30GWのグリッドパワーを持つようになった。

交通関係のエネルギーとして23%が再生可能エネルギーを使っている。乗用車では、40%が再生可能エネルギーということがブラジルでは実現可能だ。なぜなら、ほぼすべての内燃機関のエンジンはエタノールを使うことも可能だからだ。「20年後のブラジルでは、エタノールの全てとは言わないまでもほとんどのクルマがエタノール燃料をガソリンとの混合も含めて使っているだろう」とMichels氏は言う。ブラジルではエタノールの生産と流通に長い間取り組んできた歴史があるので、これは実現可能である。現在ブラジルでは、販売されるガソリンはすべて25%以上のエタノール(E25)を混合すること、すべてのガソリンスタンドで純度100%のエタノールを販売することが義務付けられている。一方、大型車については、ブラジルでは植物由来のバイオディーゼルの利用が増加している。現在ブラジルでは、バイオディーゼルを10%混ぜたディーゼル燃料(E10)を使っているが、今年からは、12%(E12)となる。

燃料となるエタノールのCO2排出量は低く、ブラジルではサトウキビを使ってエタノールを作っている。サトウキビはCO2を吸収する。サトウキビを砂糖に変換し、そしてエタノールを製造する。

ブラジルは今、エタノールとバッテリに力を入れようとしている。蓄電池のインフラを創出、拡大しようとして、ハイブリッド燃料のクルマに投資している。市内を毎日70km走行するのならEVでも行けるが、もっと距離が長ければ、エタノールの内燃機関が必要となる。

ブラジルは石油輸出国でもある。2021年の石油輸出額は305億ドル(約4兆円)を記録したが石油の輸出への依存は減少するだろう、とMichels氏は考えている。

また、肥料を輸入しているブラジルは、食料やエタノールを生産する。そして今、再生可能エネルギーを生産し風力やソーラーから水素を生産しようとしている。発電所で水素を生産し、水素からアンモニアを生産、さらに肥料を作り出すという仕組みを考え始めている。水素生産は国内で消費するためである。ブラジルは太陽光がさんさんと降り注ぐので、食料生産と共にエネルギー生産も両立させていくことができる。


ブラジル特有の問題をRD20 2023で議論

再生可能エネルギーと電力網とのインテグレーションは大きなテーマで、同氏が研究している分野であり、ブラジルが直面しているテーマでもある、という。ブラジルの電力事情はほかの国とはかなり異なっている。ブラジルでは水力発電が中心であるため、多くの電力を長距離送電する必要がある。このために損失の少ない直流送電を使う。多くのエネルギーは、水力発電であり、電力は生産と消費のバランスをとらなくてはならない。サンパウロのような大都市だと近くの発電所で済むが、ブラジルの再生可能エネルギーの発電事情のため数千kmに及ぶ送電もあり、その場合は中継所をカスケード接続しなければならない。電力の安定性を確保することは送電距離が長ければ長いほど難しい。このため、発電システムをもっと安定なものに変え、もっと強く、もっと安定に供給できるよう適切に制御し、停電を防がなければならない。

だからこそ「我々はもっと多くの国々の研究者と安定配電に関してディスカッションしたい。どうやって解決するのか、ソーラーパネルから配電網への電力変換技術に関してもソリューションを求めたい。もともと再生可能エネルギーは本質的に変動するエネルギーだからこそ、みんなでディスカッションして信頼性高く安定に供給するための技術を話し合いたい。ブラジルはこういったことの問題に直面していることを伝えたい」とRD20 2023への意欲を見せる。

また、ブラジルに限った話ではないが蓄電池の問題もある。安定な電力網をサポートするため、蓄電池をどのようにサポートし、電力網で共存させて使うためにどのような知識が必要で、それを得るためどのような戦略を持つべきか、を議論する。そしてフローティングソーラーに関しても他国の意見を聞きたい、という。ブラジルにはたくさんの湖があり、ここにソーラーパネルを浮かべるフローティングソーラーにも関心がある。つまり、クリーンバッテリとクリーンエネルギー、そして制御技術が強く求められる。

ブラジルは巨大な国だが、大きく分けて3つの地域からなる。一つは最大の北地域で、アマゾンの森林があり、人はあまり住んでいない。ほとんど私有地はなく、食料もほぼ生産していない。二つ目は、最北の地域、広大な半砂漠地域である。日射量が多く、太陽エネルギーの利用に適しており、風力も世界最大級に利用できる地域である。そのためこの地域はでは、ブラジルの太陽光発電、風力発電の大半を担っている。中部から南部にかけて最も肥沃な土地があり、ここでは農業が盛んで多くの食料を生産し畜産を賄っている。この地域ではブラジルのバイオ燃料の大部分も生産されている。

しかし南部地域は、雨の多い年と、乾燥している年が変わりやすい。食料やバイオ燃料では毎年収穫が異なる。そこで、灌漑に力を入れており、乾季でも安定して収穫できるようにした。そのためにはエネルギーが必要で、安定電力の供給が重要になる。これまでは多くの農家がディーゼル発電機を使ったりしていたが、COやCO2などが発生するため環境に良くない。そこで、農業の点でも再生可能エネルギーへの転換が重要になる。

今秋のRD20で期待することは、「G20の国々の研究者からいろいろ学びたい。対面でのディスカッションにより知識を共有し、人脈を形成する。国際的な協力体制も構築していきたい」と意欲的に答えている。

(2023/09/14)

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