Accentureが調査した2023年の半導体に重要な4つの技術
コンサルティング会社のAccentureが2023年の半導体産業に影響を及ぼす4つの技術に関する調査レポートをまとめた。メタバースとデジタルヘルス、モビリティ、サステナビリティの4分野のこれからの技術だ。この調査は、世界的な半導体企業の経営陣300名にアンケート調査して得られたもの。
図1 経験や実験を補うメタバース 出典:Accenture
メタバースは働き方、生活の仕方を変える
これによると、メタバースは、働き方や生活の仕方、意思を伝えるコミュニケーションの仕方などを変革するこれからの技術であるが、メタバースのインフラが最も重要と多くの人が答えている。さらに、半導体の経営陣の45%が、組織改革に重要と答えており、90%が今後4年間に変革していく必要があると答えている(参考資料1)。
さらにメタバースは今後2年間で需要を生み出す応用機器が商用化されると28%の経営陣が答えている。また、メタバースの開発で最も重要な技術は何かという問いには、67%が半導体と答えており、ハードウエアという答えは10%、ソフトウエアが重要という答えは23%しかいなかった。このことは、半導体企業の大部分がメタバースに必要な半導体をすでに開発中ないし開発する予定であることを意味している。
サブテナビリティに関しては、半導体企業はチップのイノベーションを通してサステナブルな技術を開発しながら、サステナブルな製造の難しさをよく知っている。例えば、チップの生産に使う半導体製造エネルギーは2010年以来、3年ごとに倍増している。大規模な工場では1日当たりに使用する水の量は1000万ガロンと大きく、米国の30万世帯の水道使用量に相当する。
この調査では、回答者の41%が設備投資や運用コストの1/3をサステナブルなプログラムに向けると答えている。
モビリティ(輸送や交通)分野は、半導体不足の影響を最も強く受けた。新車1台につき1000個〜3500個の半導体チップが使われており、品種によってはすでに不足が解消し供給過多になっている製品もある一方で、いまだに不足している製品もある。自動運転車は2024年には大量輸送の主流になるとみる経営陣は32%いる。もちろん従来型のクルマにもデジタル技術が搭載されるため、半導体企業はイノベーションをレベルアップする必要があると、この調査レポートは述べている。
ヘルスケアでは、当面ウェアラブルデバイス向け半導体が注目されているが、ウェアラブルフィットネス向けの技術では、ヘルスケア教育やリテラシーが半導体イノベーションを加速するだろうと21%の経営陣が見ている。デジタルヘルスの観点からは、記録のデジタル化や治療が重要と見る経営者は多く、モニタリングデバイスとの接続が重要と見る経営者は29%にとどまる。結局、ヘルス情報の透明化(民主的な教育とデジタル化された記録/治療)が半導体のイノベーションによってもたらされるだろうという。
この調査は、もともと新型コロナからの回復や経済の落ち込み、半導体不足の解消などからの回復を念頭にしたレジリエンスを調べるものだった。そのレポートの題名は「半導体産業というパルス:回復力とイノベーションとのバランス」である。すなわち、サプライチェーンの展望と、イノベーションのロードマップについて聞いている。半導体経営陣の76%がサプライチェーンの影響が2024年までには解消されるだろうとみている。ただし、次の立ち上がりに向けた投資に集中する市場からの圧力にも耐えなければならない、という結論になっている。
参考資料
1. "The Pulse of the semiconductor industry", Accenture (2023/01/03)