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MediaTek、自動車やIIoT分野へも製品ポートフォリオを拡大へ

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携帯電話やスマートフォンのアプリケーションプロセッサやモデム技術に強く、世界で第10位の台湾のファブレス半導体メーカー、MediaTekが従来のスマホ市場から自動車や産業用のIoT(IIoT)にも力を入れ、製品ポートフォリオを拡大する。また、モバイルプロセッサDimensity 9200を搭載したスマホが登場し始めた。

メディアテック会社成長の歴史と売上推移 / MediaTek

図1 MediaTekの急成長 出典: MediaTek


今やMediaTekはキオクシアやソニーセミコンダクタソリューションズ、ルネサスエレクトロニクスなど日本のどの半導体企業よりも大きなファブレス企業となった(図1)。携帯電話のモデムで大成功を遂げ、アプリケーションプロセッサへつなげ、さらにスマホへと発展し大成長を遂げた。特に中国市場に強く、中国市場ではQualcommよりも大量に売れた。2021年は前年比61.5%増の176億ドルと大成長を遂げた。また今年も1月〜10月までは4740億台湾元(約169億ドル)の売り上げを計上しており、すでに昨年1年分の売り上げに迫っている。

そのMediaTekにとっては世界の半導体市場がこれまでの民生機器中心から産業機器へとシフトしており(図2)、同社もこのトレンドに沿って産業機器や自動車向けに合わせていく構えを見せている。


Growth Opportunities in

図2 一般的な半導体市場は民生から産業、自動車へとバランス良く拡大していく 出典:MediaTek


MediaTekはかつて、CD-ROM装置向けのチップで一世を風靡した。CD-ROMの様々な規格をすべて1チップに集積したため、MediaTekのチップと三洋電機の光ピックアップさえあれば誰でもCD-ROMドライブを製造できるといわれた。これに対して日本の半導体メーカーは、総合電機の1部門にすぎなかったため、自社向けのドライブチップしか設計しなかった。このため、多くのユーザーは、生産数量が多く安価なMediaTekのチップを好んでCD-ROMドライブに使い、低価格のCD-ROMを製造できた。日本の総合電機がデジタル化でアジアに負けた大きな要因であった。

技術的にもまた、最先端の設計技術力を見せている。もともと台湾のファウンドリUMCからスピンオフして出発したファブレス企業であり、LSI設計技術は得意中の得意。例えば、今回の最新の5Gスマートフォン向けアプリケーションプロセッサDimensity 9200では、クロック周波数3GHzを超えるArm Cortex-X3と、写真とそん色のない絵を描くグラフィックス技術レイトレーシング技術をハードワイヤード回路で実現したGPUコアであるArmのImmortalis-G715を搭載している(図3)。さらにAIを使ってネットワーク検索を高速化したり、デッドゾーンから素早く回復できたりするように接続性を改良した。5Gモデム(デジタル変復調回路)も集積している。


Media Tek Flagship 5G SoC / MediaTek

図3 5Gモデムを内蔵したアプリケーションプロセッサDimensity 9200 グラフィックス画像の美しさを表現するレイトレーシング技術を搭載している


もちろん、消費電力を下げるために、高性能コア4個(Cortex-X3を1個とCortex-A715を3個)と電力効率の良いコア4個(Cortex-A510)という8コア構成のCPUを用いた。Armの64ビットV9アーキテクチャをベースにしており、レイトレーシング技術を搭載したスマホ向けのGPU、Immortakis-G715は初めてのスマホ搭載である。TSMCの4nmプロセスで製造されている。11月22日に発売された中国のスマホメーカーvivoの最新機種「X90 Pro」に搭載されている。

(2022/12/06)

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