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QualcommのCEO、スマホからAI、メタバースへSnapdragonで推進

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「スマホは、電話であり、コンピュータであり、VR(仮想現実)であり、IoTであり、そしてまたクルマでさえある」(Qualcomm CEOのChristiano Amon氏)。これまでスマホを中心に成長してきた同社のアプリケーションプロセッサSnapdragonはこれからAIのプラットフォームへと拡大する、とAmon氏はIFAの基調講演でこう述べた。

図1 Qualcomm CEOのChristiano Amon氏

図1 Qualcomm CEOのChristiano Amon氏


9月2〜6日ドイツのベルリンで開催されたIFA(国際民生エレクトロニクスショー)の基調講演において、QualcommのCEOであるC. Amon氏(図1)は、スマートフォン市場だけではなく、コンピュータや自動車などAIを使うこれからの成長分野にもSnapdragonを広げていくと述べた。特にAI専用処理回路を集積したプロセッサはエッジをスマート(賢く)にしエッジAIを強化する。

セルラーネットワークに強いQualcommだが、5Gだけではなく、Wi-FiやBluetoothも一緒にまとめたチップX70 5G modem-RFを今年の2月に発表していたが、今回は超高速の新規格Wi-Fi 7を使って、5Gbpsという高速のデータレートを実現した(図2)。これは、セルラーネットワークで使っているキャリアアグリゲーション技術と似ていて、5GHzと6GHzの二つの周波数の搬送波(キャリア波)の周波数帯域160MHzを2倍の320MHzにし、ここに2つの高速データレートを合わせて5Gbpsを実現した。


High Band Simultaneous (HBS) Multi-Link / Qualcomm

図2 2波を使ってQualcommは5Gbpsを実現


Wi-Fi 7はこれからのWi-Fi技術であり、家庭やオフィスで使う非常に重要な技術だとしている。折しもIntelがBroadcomと共同で、Wi-Fi 7を使って5Gbpsをデモしたと発表した。このデモでは320MHzの広帯域(Wi-Fi-6の2倍)でIntelのチップを使ったパソコンにBroadcomのモデムを組み込み5Gbpsのデモを見せた(参考資料1)。

Amon CEOは昨年あたりから、Snapdragonはメタバースへのチケットだと主張してきたが、今回はメタバースを確立させるためにMeta Platforms社(元Facebook社)と提携を結ぶことを発表した。今回の基調講演ではMetaのCEOであるMark Zuckerberg氏(図3)も登場し、両社の協力関係を示した。


図3  MetaのCEOであるMark Zuckerberg氏


Qualcommはこれまで50機種以上のXRデバイスにSnapdragonを供給してきた。MetaのオキュラスなどAR/VRグラスも含まれている。すでにQualcommとMetaは7年間も共同でこれらのデバイスを開発してきた関係が構築されている。今回の提携によって、両社の関係をより深めようというものだ。まずはMetaのQuestプラットフォーム向けにカスタム仕様のSnapdragon XRプラットフォームを共同開発する。

メタバースといっても実は、ゲームやテレビ会議などへの応用は5Gの性能がまだ不十分な現在では実現できない。このままだとメタバースがバズワードで終わってしまう恐れがあるため、両社が提携し、まずはデジタルコマースや小売り店舗、社会実験などビジネス用途から始め、2020年代終わりころの目標とする5Gの性能が得られる頃にゲームなど民生用への応用を狙うというシナリオだ。

参考資料
1. "Intel and Broadcom Achieve Major Wi-Fi 7 Industry Milestone", Intel (2022/09/08)

(2022/09/13)

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