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日本電産が半導体に関わる理由とは?

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日本電産は半導体ソリューションセンターを設立、半導体の調達、開発の両面から自社の半導体戦略を明らかにした。最近同社に入社した、ルネサスの車載事業のトップを経て、ソニーの前執行役員も経験した執行役員の大村隆司氏がプレゼンを行い、半導体メーカーを買収する・内製化するといったうわさを一蹴、日本電産の戦略を明確にした。

図1 日本電産執行役員で副CTO 半導体ソリューションセンター所長兼ソリューション企画・戦略部長の大村 隆司氏

図1 日本電産執行役員で副CTO 半導体ソリューションセンター所長兼ソリューション企画・戦略部長の大村 隆司氏


日本電産が半導体分野に進出するという噂は絶えない。記者側からも大村氏の説明に対して、半導体を内製化するのかという質問が発表会で出ていた。そもそも同社が半導体ソリューションセンターを設立する最大の目的は、半導体製品を安定的に調達し、さらに将来のインテリジェントモーターソリューションを提供する、ということである。同氏は、サプライヤーとの戦略的パートナーシップを築き、あらゆるリスクに対応できるサステナブルな半導体サプライチェーンを確立することで、当社製品の安定した生産と供給を実現していく、と述べている。

ここでは、日本電産内部の車載事業部やエネルギー部門などさまざまな事業部がそれぞれ同じ製品を購入していた、という事実を大村氏は入社後に知り、半導体は数量が優先されるビジネスであることから、そのような場合は一括購入するような仕組みを作ると考えた。これが半導体ソリューションセンターの一つの仕事である。

さらに、「主要半導体を内製(開発・製造委託を含む)することにより、地球環境の保全に貢献する高付加価値インテリジェントモーターソリューションを提供する」とも述べており、調達と差別化の両面で、モーターソリューションをあらゆる分野に提供していく。では、どうやって差別化するのか。

大村氏は、半導体ユーザー目線で、日本電産が必要とする半導体製品の仕様をきっちり作るための作業であるRFQ(Request for Quotation:見積り要求)スキームの確立と実行をまず掲げる。これは半導体メーカーに対して発注する見積仕様書の作成であるが、モータ制御に必要な回路技術など専門知識を必要とする。このRFQに対する半導体メーカーからの回答を得て、サプライヤーの選定と開発の採否を決める。

この時、パワー半導体やメモリのように比較的単純な設計の製品は別として、SoCのような複雑なロジック製品は、論理設計からRTL出力、論理合成やネットリストによる回路表現、さらにレイアウト配置配線などのLSI設計作業が必要となる。この作業は、自社で持つよりも「餅は餅屋で」と大村氏は述べており、エコシステムを構成するパートナーに任せるようだ。そのためにグローバルなエコシステムを構築する。

LSI設計では、差別化要因は日本電産独自のIP回路であり、また搭載するソフトウエアでもあるが、これは日本電産自身が開発する。

昔と違って、半導体ICはゼロから設計し製造するビジネスではない。自分が欲しい機能や差別化回路だけを開発し、CPUのようにソフトウエアで差別化する機能では汎用のハードウエアを利用すればよい。このため、ハードの独自IPは自社開発し、それ以外の汎用回路はエコシステムを利用して設計する。現在は、わざわざお金をかけてLSI設計全体を自社で行うことはない。ましてや製造工場を作る必要もない。

大村氏は、RFQをきっちり書いて、日本電産側の半導体への要求を明確に表現するだけではなく、その仕様を修正できる人、さらに例えば5年後のインターフェイスを想定できるような人が欲しい、と述べている。RFQは、言った・言わないのミスコミュニケーションを減らし、ユーザー・サプライヤーの投資リスクを軽減、さらに日頃の価格交渉の作業負荷も低減できると見ている。加えて、ユーザーとサプライヤーとの緊密な協力関係ができれば半導体不足にも対応しやすくなる。


STEP3:Nidecインサイトにおけるインテリジェントモータの世界 / 日本電産

図2 日本電産が描くインテリジェントモーターの未来 出典:日本電産


こういったグローバルな半導体メーカーでは当たり前のRFQ作業を通して、日本電産はこれからのインテリジェントモーター作りを半導体技術で実現していく。

(2022/06/08)

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